第110話 なりきり師、一条勇気の時。

 〜一条勇気 20歳〜



(お疲れさまでした〜。)


(((お疲れさまです。)))


(お疲れさま勇気君。)


(あっ、鈴木さんお疲れさまです。)


(いや〜今週もよかったよ!次も頼むね!)


(はい。ありがとうございます。よろしくお願いします。鈴木さんおれ今日久しぶりにこの後オフなんです。だからスタッフの人達を飯にでも誘おうかなって思ってるんですけどいいですか?)


(そうなの?いつも忙しいのに珍しいね。勇気君が誘うなら集まる人も多いと思うよ。

じゃあおれがスタッフには声をかけておくよ30分後に1階のロビーに集合でいいかな?)


(わかりました。お願いしますね。お店はマネージャーと相談して適当に決めときますね!)


(わかったよろしくね。じゃあまた後で)








「あれが君だね。あれは誰?」


「前にレギュラー番組をやってた時のプロデューサーだよ。懐かしいな…元気にしてるかな?

なぁプライ?ホントにおれも見るのか?気分が悪くなるだけだから見たくないんだけど…」


「もう始まっちゃってるんだから今更見ないなんて無理だよ。追加で使う神力は無いよ!」


「じゃあ最初からこんなくだらない事に力を使うなよ…」


「それは君が面白そうな話をしたからじゃないか!」


「してねぇよ!嫌な事を思い出したって言ったんだよ!」


「もぅうるさいなぁ…ほら続きが始まるよ!」


「はぁ…またあれを体験するのか…。やだなぁ…」








(お疲れさまです。ごめんなさい待たせちゃいましたか?)


(全然そんな事無いですよ。まだ約束の時間より早いですし、一条さんが皆を誘ってくれたんなら1時間だって待っちゃいますよ!)


(アハハ…板谷さんは大袈裟ですね。同じ建物にいるのに1時間も待たせないですよ!)


(それはそうですよね。私大袈裟でしたか?もうヤダァ〜。)


(鈴木さんに電話してお店を伝えて現地集合にすればよかったですね…それに気付いたのがさっきだったんですよね…ごめんなさい。

もうこれで全員ですか?今からお店に電話して予約しちゃっていいですか?酒も肉も魚も食べれる所にしたんです。焼き肉も寿司もありますよ!)


(((やったー!ゴチになります!)))


(その代わり次の収録も頑張ってくださいよ!)


(勇気君これで全員だよ。今回は勇気君達も入れて15人だ。

他の仕事で来れなかった人達が凄く残念がってたよ。また今度時間があったら誘ってやってくれ。)


(わかりました。また時間ができたら是非。じゃあ電話しちゃいますね。)


(……ない。)


(えっ?ごめんなさい何か言いました?ちょっと聞こえなかったです。)


(ありえない!)


(へ?)


(ちょ、ちょっと田中さん?何言ってるの?)


(あなた3日前の台風被害の事知らないんですか!?)


(? 知ってますけど…?それがどうしたんですか?ってか誰ですか?)


(ごめんなさい一条さん今日だけヘルプで来てもらったバイトの子なんです……)


(知ってて焼き肉や寿司を食べるつもりですか?今この時に家も無くなってしまって食べれない人がいるのに不謹慎です!)


(は?)


(は?じゃないでしょ!あなたそれでも人間ですか?恥を知りなさい!)


(おい!何言ってんだ!失礼だろ!)


(田中さんいい加減にして!一条さん本当に申し訳御座いません。あなたも謝りなさい!)


(なんで私が謝るんですか?私間違った事言ってませんよね?それパワハラですよ!)


(何言ってるのよ!いいから謝りなさい!)


(板谷さん別に大丈夫ですよ…田中さんでしたっけ?焼き肉と寿司を食べるのが何で不謹慎なんですか?)


(そんな事もわからないんですか?頭大丈夫ですか?被災者の気持ちも考えられないなんて人間として終わってますね!)


(おい!いい加減に…)


(鈴木さん、いいです…。田中さん、あなたの理屈でいくと被災者の人達が苦しんでるから自分達も同じように苦しめって事ですか?)


(苦しめなんて言ってません!贅沢するのは不謹慎だって言ってるんです!)


(いや別に贅沢って言う程高い店にいきませんよ?普通の店です。)


(そんなの関係ない!)


(じゃあ何の店だったらいいんですか?)


(私は今日はパスタの気分です。)


(いやいやあなたの気分を聞いてるんじゃないです。何の店なら不謹慎じゃないのか聞いてるんですよ…。)


(だからパスタの店にしたらいいでしょ!そんな事もわからないの?)


(ふぅ…因みに田中さんは焼き肉と寿司は食べた事ありますか?)


(あるに決まってるでしょう!)


(それなら自分が言ってる事がおかしいと思いませんか?あなたが生まれる前からホームレスの人達は苦しんでますよ?なんで食べた事があるんですか?不謹慎ですよね?)


(は?意味分かんない!ホームレスなんて関係ないじゃない!)


(意味分かんないじゃなくてあなたの浅はかな理屈でいくとそうなんですよ。

苦しんでる人がいたら贅沢しちゃ駄目なんでしょ?関係無くないでしょ?)


(被災者とホームレスを一緒にしないでくださいぃ!)


(随分自分勝手な事をいいますね。それにそんな事を言ってたら焼き肉屋も寿司屋も潰れちゃいますよね?いつから不謹慎じゃなくなるんですか?)


(そんなの被災者が落ち着くまでに決まってるじゃない!それにそんなので潰れる店なら最初から長く持たないわよ!そんなの店側の責任でしょ!)


(自分のヤバさ理解してます?言ってる事めちゃくちゃですよ?被災者が落ち着くまで焼き肉も寿司も他の贅沢もしちゃ駄目ってどれだけの人が露頭に迷うと思ってるんですか?

それに被災者の人達が他の人に贅沢するななんてそんなさもしい考えをしてると思ってるんですか?それとも誰かが言ってる事を聞いたんですか?)


(そんなの聞かなくてもわかるでしょ!私が感じてるんだもの私が根拠よ!)


(いやいや、わかんないし意味もわかんないですよ。あなたが勝手に感じた事が根拠になるわけないでしょ。

それに無理に誘ってませんよ。来れなかった人達もいるってさっき聞いたでしょ。だからそんなに気に食わないなら別に無理してついてこなくていいんでおれたちは行きますね。お疲れさまでした。)


(ふざけないで!不謹慎だって言ってるでしょ!それに女性を待たせておいてその上私だけをのけ者にするなんて女性差別よ!)


(お前いい加減にしろよ…)


(鈴木さん落ち着いてください。はぁ…田中さんあなたは何がしたいんですか?)


(あなた達が焼き肉を食べるって言う不謹慎を私が正してあげてるんでしょ!

他の人が言えないから私が代表して言ってるんです!

それにここまで待ったんですから私の夜ご飯の代金も払ってもらいます!3万円を要求します!)


(ブフッ…代表って何の代表だよ…それになんでおれが食い物制限されたあげくに3万あげなきゃいけないんだよ…意味わかんねぇ)


(真剣な話をしてる時に何笑ってんのよ!男が女性に食事代を出すなんて当たり前でしょ!それにまさか夜遅くに女性を電車で帰らせるつもり?普通タクシーでしょ!そんな事もわからないから日本の男は駄目なのよ!少しはアメリカの男性を見習いなさい!)


(当たり前じゃねぇし!こっちにも選ぶ権利あるからな。それに飯代とタクシーでなんで3万もかかるんだよ何処まで行く気だよ!ぼったくる気満々じゃねぇか!

それとあんたが外人好きの女だって事はよくわかったけどそれをここで発表されてもねぇ…)


(あんた?女?今女性の事を女って言ったの?信じらんない!それに外人なんて言い方もありえない!外国人って言いなさい!この差別人間!フェミニストとして許さないわよ!)


(話になんねぇ…言っとくけどさっきからあんたは男の事をずっと男って言ってるぞ?

それにホームレスが苦しんでるってのはガン無視だし…それが差別になるんならあんたが一番の差別人間だよ。フェミニストだと?笑わせんな!)


(女性が差別人間になるわけないでしょ!)


(なるに決まってんだろ!なんだよその謎理論…どんだけ自分に都合のいい解釈してんだよ。

もういい時間の無駄だ。こんなのほっといて行きましょう!)


(ちょっと待ちなさいよ!行かせないって言ってるでしょ!)


(もう絡んで来んなようっとおしい!我慢してやってたら調子に乗りやがって。

人間には個人の考えががあるんだよ!全員が全員同じ思考な訳ねぇだろうが!周りに自分の勝手な理想を押し付けてんじゃねぇよ迷惑だ!

言っとくけどそんな自分勝手な都合のいい考えは他の誰も許さねぇ!一人でわーわー騒いでろ!周りを巻き込むな!)


(それモラハラよ最ッ低!あんたなんか芸能界、いいえ地球上から消し去ってやる!安心して眠れる日がくると思わない事ね!)


(はぁ…ここまでバカだとは思わなかった…鈴木さん警察に通報してください。おれ今殺害予告されちゃいました。)


(わかった。)


(は?殺害予告?そんな事するわけないでしょ!なに勝手に勘違いしてんのバカじゃない?なにより証拠がないでしょ!)


(証拠がない?無いわけ無いだろ!途中からスマホで録音してるに決まってるだろ!他にも動画撮られてんのに気付かなかったのか?どんだけおめでたい頭してんだよ…。)


(は?録音?動画?)


(そりゃそうだろ…逆にあれだけ騒いで撮られないと思ってんのか?いつの時代生きてんだよ。)


(ふざけないでなんで私が悪い風になってるのよ!私は正しい事をしてるのよ!それを渡せー!)


(うわっ!)


(ヤバイ!皆取り押さえろ!)


(((は、はい!!!)))


(痛い!私に触るな性犯罪者!セクハラで訴えてやる!)


(警備員さんもお願いします!)


((はい!))


(一条さん本当に申し訳御座いません。)


(やめてくださいよ。板谷さんが謝る事じゃ無いですよ。)


(いえ、後日しっかりと会社として謝罪させて頂きます。本当に申し訳御座いませんでした。)


(勇気君怪我はなかった?警察はすぐに来てくれるそうだ。)


(あっ、はい。大丈夫です。)


(離せ!離せ!私に触れるな!)


(なんかすいませんおれが誘ってしまったばっかりに…)


(君が悪い事なんて一つもないよ。…こちらこそスタッフが申し訳ありませんでした。)


(やめてください!大丈夫ですから。おれ多分警察行かなきゃいけないんでこれで皆さんで食事行ってください。このまま行かなかったらあの女の思い通りみたいで気に食わないんで…)


(おれも警察で一緒に事情を話すよ。)


(そうですか?じゃあ板谷さんお願いします。皆さん仕事終わりでお腹も空いてるでしょうしお願いしますね。)


(わ、わかりました。責任を持って連れていきます。本当に申し訳御座いませんでした。)


(もう大丈夫ですって!気にしないでください。でもおれも一言言わないと気が済まないな…)


(一条さん?)


(勇気君?)


(離せ!離せ!)


(離せじゃねぇんだよ!お前のせいでせっかくの飲み会が台無しだ!お前が一番のハラスメントで差別人間なんだよ!


その臭い口臭と体臭のスメハラ、散々好き勝手な事言って高圧的に罵ってくれたパワハラにモラハラ。

男を勝手に性犯罪者にするセクハラ、なんでもかんでもハラスメントに結び付けるハラハラ!人のハラスメント指摘する前に自分のハラスメントをどうにかしろ!ハラスメント人間が!


それに男は女に飯を奢って当たり前?アメリカの男を見習え?被災者とホームレスを一緒にするな?不謹慎厨のせいで店が潰れるのは店の責任?ふざけんじゃねぇぞ!そんなんで自称フェミニスト語ってんじゃねぇ!お前が一番人間を差別してんじゃねぇか!お前のその都合のいい考えがどれだけの人間に迷惑をかけてるのか塀の中でよく考えろ!)


(許さない許さない許さない!私にこんな事してただで済むと思うな!)


(許さなくて結構!お前はもう捕まるんだよ。手加減はしない。徹底的に罪が重くなるようにしてやるからな覚悟しろよ犯罪者!)


(一条勇気ぃぃぃぃ!!!)


(はぁ〜あスッキリした。)











 〜プライの世界〜



「はぁ、やっと終わった…。自分の事ながらホラー体験だよ…。あそこまで狂った思想を持ってるともう化け物だ。男とか女とか関係無く二度と関わりたくないよ…。」


「あ〜面白かった!君の巻き込まれ体質はどうやら前世の時からみたいだね。」


「あれを面白かったって…当事者からしたらたまったもんじゃないんだぞ!あの後も大変だったんだからな!

マスコミには四六時中追いかけ回されるし、あの女の同類から女下げ男上げすんなとかわけわかんない批判が殺到するし…

おれは別に女全員を悪く言ってないだろ?あのいかれた女個人に仕返ししただけじゃん?それが何で女全員をバカにした事になってんだよ!」


「そんなの僕に言われてもどうしようもないよ。それに先にネタバレしないでよ僕の楽しみが減っちゃうじゃないか!」


「あっ、もう続きを見る事は決定してるんだな…なぁプライ?神の力でこの巻き込まれ体質を治せないか?」


「そんなのやるわけないでしょ!どれだけの神力を使うと思うのさ!」


「はぁ、そんな事言うならこんなくだらない記憶を除くのに力を使わないでくれよ……」


「僕の力を僕の為に使って何が悪いのさ?」


「別に悪く無いけどさぁ…はぁ、もういいよ。なんか疲れてきた…」


「あっ、ごめんどうやら君の身体が限界みたいだね。今回は長居しすぎたようだ。」


「えっ!?もう?まだ聞きたいことが一杯あるのに…」


「仕方ないなぁじゃあ特別に良い事を教えてあげるよ。君奴隷をマスターしたよね?」


「ん?あぁ…したよ…」


 頭がボーッとしてきた…



「それは正解だったね。君の奴隷の場合なりきり師のレベルが上がる度に制限が増える仕様だったんだよ。

あの時の君はマスターした職業が5つだったから制限が5個で済んでいたけど、もし20種類の職業をマスターしてたら制限は20個に増えてたんだよ。」


「なっ…そんな…あぶ…」


「それとダンジョンを鎮静した君達5人に僕からご褒美を用意したよ。君のインベントリに入れておいたからギルドの3人にはすぐに渡してあげて。

ホーク君の分はそうだな…君がテイマーの職業をマスターした時にでもあげるといい。きっと喜ぶだろう…。」


「…あ…うん……」


「そして君はレベルが10になった時に喜んで貰えるようにしたよ。頑張ってレベルを上げるといい。」


「ん………」


「またねユウキ君。君は僕の事を初めて友達と呼んでくれたんだよ。僕にも初めて友達ができたんだ。凄く嬉しかったよ。また遊びに来てね。」


 頑張って保っていた意識が完全に途切れおれは元の世界に戻された…。

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