第109話 なりきり師、本音で語る。

 〜プライの世界〜



「やぁ、ユウキ=ノヴァ君。僕は今回君と話したくて会えるのが楽しみで仕方なかったよ。

とりあえずダンジョンを鎮静してくれてありがとう。君達に任せてよかったよ。」


「どういたしまして。って事はやっぱり見てたんだよな?それなら話が早いよ。聞きたいことが山程あるんだ。」


「言っておくけど前に言ったように僕は何にも干渉してないよ。エンシェントドラゴンがあそこに居たのも彼女の意志だよ。」


「あっ、そっか…心を読めるんだったな。じゃあジフは本当に偶然あの場にいて勇者パーティーに襲われたのか?」


「う〜ん…襲われたのは少しだけ僕のせいでもあるのかな?

実はね僕が与えた神罰に対する八つ当たりであのエンシェントドラゴンの子は襲われちゃったんだよね…。」


「八つ当たり?」


「うん。僕が与えた創造神の怒りに気付いた勇者達が僕の事をこき下ろしてくれちゃったんだよね。

『何の役にも立たないヘボ神が!』とか『この世界を救ってやるって言ってんのに余計な事すんな』とか他にも色々とね……」


「前に言ってた神罰だな?…にしてもだいぶ調子に乗ってんなぁ……」


「そう。その時は僕も本当に勇者パーティーを消そうかなぁって思ったんだけどあんなのに力を使うのは勿体ないからやめておいたんだよ。

そしたら馬車の中で勇者があのエンシェントドラゴンの女の子に気付いてね…」


「そこなんだよおかしいのは…ジフは気配を完全に消してたって言ってたんだよ。なのになんで勇者はジフを見付けられたんだ?」


「あぁ…それは勇者のEXスキルに超直感ってのがあるんだよ。

危険を察知したり、強い気配に気付いたり、急にピーンときたりするスキルだよ。」


「うわぁ〜厄介なEXスキル持ってんなぁ…でも弱ってたとは言えエンシェントドラゴンを倒せる程勇者パーティーって強いのか?

おれアイツらに地獄を見せようと思ってるんだけど…」


「う〜ん…あの子達が強いって言うか強いのはあの子達の装備品だね…。

もちろん転生人だからこの世界の子達よりステータスは高いけどそれにプラスして装備品がいいんだよ。」


「あの派手な装備か…でも装備が強いってだけでそんなに強さが変わるのか?」


「装備品を舐めちゃいけないよ。あの子達が装備しているのはどれも過去の転生人が作ったチート装備なんだ。

装備品としての強さは勿論の事、装備者のステータスを何倍にも高めるバフ効果も備わっているんだ。

そうじゃないといくら勇者達とは言えあれだけ一方的にはできないよ。」


「チートステータスにチート装備かよ…おれは実際に戦ってる所は見てないんだけどそんなに一方的だったのか?」


「そうだね。あれがもし元の君の世界での人間同士のものなら君達は弱い者イジメだと騒ぎ立てるんだろうね…。

まぁ弱肉強食の世界だしどちらかが死ぬのは別に普通の事だってのはわかってないといけないよ。」


「それは別に理解してるよ。この世界の戦いは基本命がけだ。おれだってデススパイダーを倒すのに5人がかりだったし、パーティーを組んで戦うのは当然だと思う。

おれはそれをわざわざ弱い者イジメに結びつけるようなひねくれた見方をして怒る頭が弱い人間じゃないよ。」


「でも君、勇者パーティーに怒ってたよね?」


「おれが怒ってんのはその後!ジフを生かした理由とその後の扱いが許せないんだ。

アイテムボックスが一杯だから?後始末するのが面倒だから?ふざけんじゃねぇよ!


元々勇者パーティーは敵だし、ジフとリッシュの今に同情してるってのもあるけどあれだけボロボロにしといてなんで放置なんだよ!

隷属アイテムを使ってまで仲間にしたんだろ?聖女もいるんだから回復しろよ!

ちゃんと面倒を見れないなら隷属化なんかしないで倒して経験値にすればいいだろ!


後始末だってメルメルに引き返して冒険者ギルドに頼めば済む話だろ!それを面倒だって理由だけで半殺し状態で放置なんて自分勝手すぎるだろ!」


「驚いたなぁ。大体こう言う時の人間は知り合いになったドラゴンを痛めつけた事を怒るんだけどな……

君はあのドラゴンの子を殺さなかった事に怒ってるのかい?」


「そりゃそうだろ!命がけの戦いやってんだぞ。殺す、殺されるなんてのは最初からわかってる事だ。

中途半端に生かされて隷属アイテムで嫌々縛り付けられて一生逆らえないでいいように使われて自由が無くなるなんて死んだ方がマシだろ。」


「死んだ方がマシかどうかは僕にはわからないけど…そう言えば君あの勇者パーティーが主人公だって言ってた事を聞いた時も怒ってたよね?あれはなんだったの?」


「主人公じゃない!この世界の主人公を語ったんだよ!

ありきたりな言い方だけど生きてれば全員が全員主人公なんだよ!

気が弱くても、暗くても、マイナス思考でも、地味でも、陰キャでも自分の人生は自分が主人公なんだよ。

主人公を語っていいのは物語だけの話だ。それをあの勇者は自分達がこの世界全体の主人公になろうとしやがった。

作り物じゃない役が振られてる訳でもないこの世界でだ!

数々の主人公をやってきたおれだからこそその考えは許さない。」


「人間は僕からすると理解できない事で怒るんだね…」


「理解できないかぁ…プライ?もし新参者の普通の神が創造神を語ってこの神の世界でオラオラしてたらどうする?『おれが世界を創り直してやる』ってさ…」


「そんなの許す訳無いでしょ。一瞬で消してあげるよ。冗談にしても笑えない冗談だね」


「少し違うけどそれのスケールを物凄く小さくしたものが今おれが怒ってた理由だよ…。

…自分でスケールを小さくって言うと惨めに思えるな…」


「なるほどねぇ…そう言う事なら僕にも理解はできるよ。

君って何気に頭の回転早いよね?よくそんな例え話を咄嗟に思い付くね…」


「これも前世の職業病かな…別に例え話を訓練したわけじゃないけどトーク力は必要スキルだったからな…

事実をそのまま話しても使えない部分があったり、エピソードが弱かったら少し盛ったりとかって頭を結構使うんだよ。」


「その割にはこの世界で結構危ない発言してるよね?『豚女』なんて元の世界で言ってたら大炎上してるだろ?」


「そりゃそうだよ。自分勝手な正義マンも不謹慎モンスターも自称フェミニストもモラルを無くした時のマスコミもそう言うの大好物だから、すぐに飛び付いてここぞとばかりに集中リンチが始まってあっと言う間に大炎上して徹底的に干されちゃうよ。

表舞台に立ってたおれが日本であんな発言する訳ないだろ…」


「じゃあなんでこの世界で言ったの?」


「この世界だからだよ。盗賊を殺すことが当たり前の命が軽いこの世界で暴言程度で炎上する訳ないからな。

それに怒ってる相手ほど視野が狭まるし怒らせる事はおれの戦いにとっては重要なプロセスだ。

だからおれは自分が怒ってても冷静である事を心がけてるし、これからも相手を挑発する。

例え他の人に知られたとしても、それが何か?で終わりだよ。


日本だったら自称フェミニストが差別だ蔑視だ偏見だって騒ぎ立てるけどこの世界は日本じゃない。ましてや地球ですらない。

異世界なんてのは日本人からしたら存在しない世界でファンタジーの作り物の物語でしかないんだよ。」


「君のこの会話も知られたら大炎上しそうだね…」


「知られる事は無いから平気だよ。それにおれは男女平等に仕返しをしてるだけだ。

男も女も関係なく盗賊は殺してるし、男も女も関係なく喧嘩を売ってきた相手には暴言を吐いてる。

これでもしフェミニストを語って差別だ蔑視だってクレーム入れてきたら自分が都合のいいだけの偽物のフェミニストだって自己紹介してるようなもんだろ?

まぁそんな偽物がふんぞり返って大量にいるから本物が迷惑してるし周りが煙たがってるんだけどな…。


はぁ…こんな会話してたら嫌な事思い出しちゃった…。」


「嫌な事?」


「不謹慎モンスターも正義マンも自称フェミニストも全部兼ね備えてためちゃくちゃな狂った女が前世でいたんだよ…。

そいつのせいでおれが男でも女でも子供でも老人でも敵になったら容赦しなくなったんだよね…。」


「えっ?僕まだそれ知らないや…いつ頃の記憶?まだ見てないんだけど…」


「当たり前かのようにおれの記憶を見てたんだな…まぁいいけど…。確か20歳位だったかな?テレビ局の……」


「言わなくていい言わなくていい!内容は聞くより直接見た方が確実だからね。君の覚えてる記憶じゃ無くて真実の記憶を見る事にするよ。じゃあいくよ!」


「えっ?今から!?」



『パチン!』



 プライによっておれは昔の自分の記憶に引きずり込まれた。

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