第107話 なりきり師、リッシュにビビる。

 〜武器屋 シュラフの武器〜



「こんばんは~!シュラフさ〜ん!いますか〜?」


 武器屋に入ったのだが店には誰もいない。不用心過ぎないか?万引きされちゃうぞ?

 あれ?万引き行為って盗賊落ちになるのかな?



『バタン…』



「ん?」


 カウンターから奥に向かって声をかけていたのだが扉が閉まる音が武器が陳列されてた方から聞こえてきた。



「あっ、シュラフさんこんばんは。」


「今朝のお兄さんじゃないですか!もう一人のホークさんはいないんですか?」


「ちょっと他の用事を頼んでるんですよ。」


「そうなんですね?…それよりどうでした?素材は見付かりましたか?」


「はい。銀鉱石を掘って来ました。それと鉄系モンスターの素材なんですけど、アイアンスコーピオンの外殻でもいいですか?」


「へ?本当に銀鉱石を見付けたんですか?それにアイアンスコーピオンの外殻?」


「何処に出せばいいですか?アイアンスコーピオンの外殻はそれなりに大きいし重いのでここで出しちゃうと大変ですよね?」


 ドワーフは力持ちってイメージがあるけどおれのイメージだけでシュラフさんは力が弱いかもしれないからな。だって見た目はカワイイ子供だもの…



「ドワーフは力持ちなのでここでも大丈夫ですよ?ただドアを通れなかったりすると不便なので作業場に持ってきて貰えると助かります。

ところで肝心の素材が見当たりませんけどお兄さんはアイテムバッグを持ってるんですか?」


 あっ、そこのイメージは合ってたんだ…そうだよね力強くなきゃ鍛冶なんてできないもんね。



「あぁ〜と…内緒ですよ…。」


 持ってるのはアイテムバッグじゃなくてインベントリのスキルなんだけどね…。

 まぁそんな事言えないし言うつもりも無いから曖昧な返事にしておいた…。


 作業場に移り必要とされてた素材と代金として16万プライを渡し双剣士用の刀を作って貰う依頼をした。

シュラフさんは約束通り1日で作ってくれるそうだ。明日の夕方取りに来るように言われた。


 ちなみにさっきシュラフさんが出てきた扉は隣の防具屋に繋がってるらしく、その防具屋をやってるのがシュラフさんの双子の妹のチェスさんと言うドワーフらしい。


 双剣の受け取りも明日だし防具も必要だから明日寄ってみようかな?ホークとリッシュとも相談しないとな…。


 これでホークの剣はもう大丈夫だ。おれは再びギルドへと帰った。








 〜ギルド入り口〜



「ユウキ君!」


 シュラフの武器から帰って来てギルドに入ろうと思ったらたくさんの人混みの中からおれを呼ぶ声が聞こえてきた。



「あっ、シルバさん、今日は道具を貸してもらって助かりましたありがとうございました。

それよりどうしたんですかこんな所で…買取所の仕事はいいんですか?」


「どういたしまして。仕事の方は一段落ついたからね。交代してもらって君を待ってたんだよ。君達もうギルド中で噂になってるよ…。」


「ァハハ……」


「早速だけど行こうか。もう皆集まって君を待ってるよ…。」


「…はい。」


 






 〜ギルマスの部屋〜



〈キュー♪〉



「うわっ!ハハッ…リッシュただいま。」



〈キュー!〉



 リッシュがいるからなのか何時もと違いギルマスの部屋には鍵がかかっていてシルバさんがノックをして声をかけるとサナさんが開けに来てくれた。


 中に入るとおれの姿を見付けたリッシュが飛び付いてきてペロペロ顔を舐め始めた。



「ハワァ〜カワイイ…」


「えっ!?」


「えっ?あっ、いえ…失礼致しました。」


 これは意外だ…いつもしっかりしてるサナさんがデレる所を初めて見た。動物好きなのかな?



「よかったら抱っこしてみます?」


「いいんですか!」


 圧が凄いよ!圧が!多分今まで同じ部屋に一緒にいたよね?ずっと我慢してたの?



「リッシュ、サナさんが抱っこしてくれるってさ。行っておいで。」



〈キュ?キュー!〉



「はわわわわわ…」


 あのしっかり者のサナさんの語彙力を無くさせるとは…リッシュの可愛さ恐るべしだな…



「ユウキ!シュラフさんにお願いしてくれた?」


「しっかり頼んで来たよ。1日で作ってくれるらしいから明日の夕方取りに行こうな。」


「うん!やったー!」


「ユウキ、約束通り全員揃った。今日お前達に何があったのか話してもらうぞ。」


「そうですね。どこから話しましょうか…」





 盗賊に襲われた事、坑道内での事、ジフに襲われた事、勇者パーティーの事、リッシュの事をおれはできるだけ詳しく皆さんに話した。



「エンシェントドラゴンのブレスを受けて死にかけて…」


「勇者パーティーが使った隷属アイテムを無効にして解放して…」


「お詫びとしてエンシェントドラゴンの子供を預けられて…」


「エンシェントドラゴンに乗って帰って来ただと…?何をどうしたらそんなむちゃくちゃな事になるんだよ!」


「おれに聞かないでくださいよ。おれだって最初から死にかけるってわかってたら鉱山なんて行きませんよ!

それにおれだって嘆いてるんです!ここまで自分が巻き込まれ体質だとは思ってませんでしたから…

それもこれも全部あのクソ勇者パーティーのせいなんですからね!」



〈キュー?〉



「ん?リッシュは悪くないんだぞ。気にしなくていいからな。」


 おれの膝の上でリッシュが心配そうに鳴いた。死にかけたけどおれはジフに怒りの感情や仕返ししたい気持ちはない。

 その分勇者パーティーには地獄を見てもらう。おれは味方には甘々だけど敵には容赦しない。勇者パーティーは最早おれの敵だ…。

 具体的に何をするかはまだ決めてないけど、なりきり師はレベルが上がる程できることが増える。

 今はステータス的に負けてるだろうからまずはレベルを上げて強くなる所から始めないとな。



「なりきりチェンジ テイマー」


 おれはリッシュを安心させる為にテイマーに転職して補正を効かせ、なりきりテイマーのブラシでリッシュをマッサージしてあげた。

 このなりきりテイマーのブラシなのだが他の武器や防具とは違い攻撃力や防御力補正ではなかった。


 なりきりテイマーのブラシ 好感力+8


 と、リッシュのおれに対する好感度が上がる効果があるらしい。



〈キュ〜♪〉



 今度は気持ちよさそうな声で鳴いてる。おっと!このまま続けてたら寝ちゃいそうだな…先にステータスを見せてもらわないと。



「リッシュ?嫌じゃ無かったらステータス見せてくれるか?」



〈キュー?〉



「ん?わかんないか?オープンステータス!こう言うのだよ。」



ユウキ


15歳


テイマー


レベル7 熟練度1


HP3983/3983

MP3511/3511

攻撃496

防御493

魔攻448

魔防444

俊敏437

幸運482


スキル


なりきり師▶

戦士▶

格闘家▶

魔法使い▶

ヒーラー▶

アーチャー▶

テイマー▶       テイム

マッパー▶

重戦士▶

鍛冶士▶

鑑定士▶

契約士▶

結界師▶

空間支配者▶

奴隷▶

伝授▶


EXスキル


創造神の加護 無詠唱 完全鑑定阻害 熟練度10倍 ドロップアップ 生産率上昇 


称号


転生人 なりきり初心者 異常に抗いし者 嗜むなりきり なりきり好き なりきる心得 なりきり上級者 器用ななりきり 古代龍の恩人


マスター称号


戦士 魔法使い マッパー 鑑定士 ヒーラー 奴隷


◆ステータス整理



「あっ!新しい称号が増えてる…古代龍の恩人?」



 古代龍の恩人…古代龍エンシェントドラゴンジファラドーズを救った証。


 効果:龍種からのダメージ30%軽減。



 おぉ!ダメージ軽減!しかも30%!めちゃくちゃいい称号じゃん!

 ドラゴンなんて総じて強いなんてのは定番だからな。これから先ダンジョンボスでドラゴンが出てきたりしたらめちゃくちゃ助かるぞ。



「凄えいい奴だ!ホークもこの称号あるか?」


「見てみる!オープンステータス!」



ホーク


15歳


双剣士


レベル10


HP1543/1543

MP184/184

攻撃298

防御201

魔攻105

魔防100

俊敏333

幸運162


スキル


ダブルスラッシュ 双刀斬 プチファイア ウォータークリエイト ドライ クリーン ライトボール 斬撃連波 メタリカ ヴィブラブレード 


奥義


スパイラルストライク


称号


なりきり師の仲間 異常に抗いし者 創造神の待ち人 古代龍の恩人



「あっ!おれもあるよ!」


「そっかよかった!ダメージ軽減の称号なんて初めてだな!ジフに感謝しないとな!」


「そうだね!」


 ホークのステータスにも古代龍の恩人はちゃんと出てた。

 なりきり師の仲間の称号もあってかステータスも全部3桁に乗ってる。

 普通の双剣士に比べれば相当な上昇率だろう。



「お前らなぁ…そんな爆弾発言を何平然と話してんだよ…」


「別に平然としてないですよ?喜んでますよ。」


「はぁ…」


 何そのため息…っとそうだ今はリッシュのステータスだった。



「リッシュこのステータス出せる?」



〈キュー!キュキュ!〉



 身振り手振りで何かを伝えようとしてくれてるけどよくわかんない…。



〈キュー!〉



 おれの足をペチペチしたりして何かを伝えようとしてる。



「ん?おれが出せるのか?」



〈キュー♪〉



 どうやらそうらしい。テイムしたからおれが出せるのかな?



「えっとじゃあオープンステータス リッシュ」


リッシュ


古代龍エンシェントドラゴン


レベル1


HP4911/4911

MP3232/3232

攻撃1095

防御1013

魔攻2141

魔防2021

俊敏930

幸運990


スキル


ファイアブレス


称号


なりきり師の仲間



「へ?嘘だろ…」


 えっ?ちょっと待って!余裕でおれより強いんだけど…えっ!ええっ?

 ジフが役に立つって言ってたけどこう言う事だったの?

 反抗期とか来たらどうすんの?リッシュが本気だしちゃったらおれたちじゃ止められないよ?


 しかもなりきり師の仲間の称号まで持っちゃってるよ…育ったらどうなっちゃうの?



「うわーリッシュ強いね!」



〈キュー!〉



 ホークに褒められてリッシュが誇らしげだ……いやいや、強いどころの騒ぎじゃないだろ!まだレベル1だぞ……



「これは…」


「はい…」


「驚いたわね…」


「お前達全員どうなってんだよ…」


 なんでどさくさに紛れておれたちまで一括にされてんの?言っとくけどバランス崩壊してんのはリッシュのステータスだからね!

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