第104話 なりきり師、テイマーになる。
「下剋上!!!」
エンシェントドラゴンに向かい奴隷解放スキルの下剋上を使った。
隷属アイテムにまで効果かあるのかはわからない…。だけど隷属化なんてのは奴隷の言い方を変えただけだ。理屈としてはいけるはず…。
だがエフェクトが何も起こらない…まさか失敗した?
「終わりか?」
「えっ、あっうん…」
「ほぅ…」
「ちょ、ちょっと待て!今別の方法を…」
エンシェントドラゴンは地面を踏みしめ首を伸ばしそして振り始めた。
犬や動物がやるブルブルみたいだが大きさと勢いが全然違うのでそれだけで周りには突風が吹いた。
「「うわっ!!」」
おれたち2人はそれだけで吹き飛ばされた。どうやら奴隷の鉄球は重りにすらならなかったようだ…
「ってて…ホーク大丈夫か!?」
「う、うん…大丈夫!」
「フハハハハ…」
どうやらさっきのブルブルは攻撃では無かったようだ…。
ブレスを吐いた時と違い殺気が全くなかったので反応が遅れ防御スキルを使う事もできなかった…。
それにしても笑ってる?それってつまり…
「お、おい!エンシェントドラゴンいきなり何すんだよ!そう言う事するなら先に言えよ!攻撃してきたのかと思うだろ!」
「ぬ?何故妾がそなたらを攻撃する必要がある?」
どの口が言ってんだよ!出会って速攻開幕ブッパでブレス吐いて来た奴が言うセリフじゃねぇだろ!
「はぁ…隷属化は解けたか?」
「うむ。先程のそなたのスキルで解けたようだ。隷属アイテムは何処かに飛ばしてくれたわ。」
よかった…下剋上はちゃんと発動してて効果があったんだ…
って事は約束通りもうこのエンシェントドラゴンはおれたちに攻撃してこないよな…。
ふぅーーー。なんとか乗り切ったぁぁぁ……
「そうか。それはよかったよ。でも隷属アイテムは探さないとな…この辺盗賊出るし奴らの手に渡ったら被害者が出るからな…。
それじゃあおれたちは探しに行くよ。もう見付かるんじゃないぞ。さよならエンシェントドラゴン…。行こうホーク。」
「えっ、うん…。」
「待て。」
おい!引き止めんなよ!今完全に逃げれるチャンスの流れだったのに…
「そなたら妾が恩を受けて何も返さずに平気な非常識なエンシェントドラゴンと思おておるのか?」
だからどの口が言ってんだよ!おれからすれば十分非常識だよ!
「恩だなんて思わなくていい。」
早く逃げたいんだよ。内心恐怖で震えてんだよ!
「ならん!我が名はエンシェントドラゴンのジファラドーズ。特別にそなたらにはジフと呼ぶ事を許そうぞ。」
「そ、そうか。ありがとうジフ。」
「うむ。そなたらの名は何と言う?」
「おれはユウキ=ノヴァ。」
「お、おれはホーク=バロルです。」
「ユウキ=ノヴァ に ホーク=バロル だな…。確かに覚えたぞ。妾を救ってくれた事に礼を言う。」
「だから気にすんなって!おれたちも殺されないし、ジフも自由になれた。全員がハッピーエンドで終われたんだからそれでいいじゃんか。」
「それでは足らぬ。妾が受けた恩が余りにも大き過ぎて妾の気が済まぬ。そうだな…新しく生まれてくる我が子をそなたらへ預けようぞ。きっと役に立つだろう。」
「は?」
いやいやいや、いらねぇよ!何言ってんのこのドラゴン…
我が子をそなたらに預けようぞって何?今日あったばかりのおれたちにドラゴンの子育てやらせる気か?子供放置のネグレクトドラゴンか?
……ネグレクトドラゴンって何だよ!
「ジフ悪いんだけどおれたち目立ちたく無いんだ。ほらおれは転生人だろ?正体を隠して生きてるんだよ。ドラゴンなんて連れてたら目立ってしょうがないんだよ。
それに実は創造神のプライから魔王を倒してほしいって頼まれてるんだ。だから凄く危険なんだ。ドラゴンの子供を守ってるやる余裕なんてないんだよ…。
それにジフも自分の子は自分で育てた方が子供も喜ぶぞ?おれたちが育ててジフに懐かなかったらジフも悲しいだろ?」
これだけ理詰めすればいくらドラゴンと言えど引くだろう。
「ほぅ…そなた創造神の眷属であったか。通りで妾のブレスにも耐える訳だな…。」
「いや、眷属になった覚えはない。う〜ん…友達?そう、プライは友達だ!だからお願い事も聞いてやりたいんだ。だから子育ては自分で頼む。」
子育ては自分で頼むって変な言葉だな…でもきっとこの言葉を使ってる人は何処かにいるんだろうな…
「ふむ。わかった。それなら尚更連れて行くが良い。」
だぁーー!全然わかってなかったぁぁ…
「ジフ?落ち着け?おれの話聞いてたか?ジフ?」
「そなたは何も心配しなくて良い。」
そう言うとおれたちより大きい卵が急に現れた。
えっ?ジフってインベントリ持ってんの?さすがエンシェントドラゴンだな…
そしてその卵に手?前足?を乗せると卵が光りだした。
「何やってんだよ!卵がなんか変だぞ!」
「良い。」
いや、良いじゃねぇよ!子供の心配してんだよ!
…あれ?見間違いか?なんか小さくなってないか?目の錯覚なんかじゃない。確実に小さくなってる…
「妾は少し傷の回復に専念しようと思う。そうだな…人が立ち入れないような山のマグマの中で眠るとしよう。その間この子を預かってくれればそれで良い。」
「いや、だから……えぇ…」
「なに、強さは変えず姿を小さくした。それに妾とも繋がりを持たせた。そなたの心配事はこれで全て解消されたはずだ。
もしこの子が力及ばず死んでしまうならそれまでの子よ…
ユウキ、ホークこの子の事を頼めるな?」
ダメだこれ…ジフの奴何が何でもおれたちにこの子を預けるつもりだ…
「よその家の子をちゃんと育てるなんてできねぇよ!第一おれは子育てなんてした事ないんだよ。」
「構わぬ。妾もそなた達だから頼んでおる。」
卵がどんどん小さくなりおれの手でも抱えられる大きさで止まった…。
「妾の子だ。戦闘でも遅れをとったりはせぬ。きっとそなた達の役にも立とうぞ。」
「…どうするホーク?」
「う〜ん…ジフも傷だらけなのは本当だしここまで言ってくれてるからおれはいいよ。確かユウキってテイマーの職業持ってたよね?育ててあげれば?」
ホークもいいって言ってるし仕方無いか…目立つから避けたかったけど根負けしたのはおれの方だな…。
「なに?そなたテイマーなのか?」
「あぁ…違うよ。おれはなりきり師だ。自由自在に色んな職業になれるんだよ。」
「ほぅ…通りで多様なスキルを使っていたはずだ。しかしなりきり師…長く生きてきたが聞いた事の無い職業だ…。」
「なんか前にプライがおれだけの職業だって言ってたぞ。なりきり師になれる素質のある奴が今までいなかったんだって…。」
「そうであったか…妾とした事がとんでもない才能を消し炭にする所であった…。すまなかったな。」
おっ、謝った!誇りの高さなら随一と言われてそうなドラゴンが人間に謝ったぞ。
これは完全に懐に入ったな…。ジフはもう完全におれたちの味方だ。
「済んだ事はもういいよ。それより本当に大切な子供をおれたちに預けるのか?お詫びとかで無理してるならそんなのいいんだからな?」
「うむ。無理などしておらぬ。」
「そっか、わかったよ…。なりきりチェンジ」
【なりきる職業を選んでください】
★戦士 剣士 格闘家 ★魔法使い ★ヒーラー アーチャー テイマー 鍛冶士 ★鑑定士 ★マッパー 空間支配者 重戦士 ランサー シーフ ギャンブラー 契約士 料理人 ★奴隷 魔導師 道化師 サポーター 商人 結界師 ウォリアー 図鑑士 鞭使い サイキッカー プリースト 調合士 荷物持ち 村人 盗賊
「テイマーを選択!」
奴隷の格好からテイマーの格好に変化する。
麻のペラペラの服は白の厚手のTシャツに黄緑のベストへと変わった。下は薄茶色のチノパンみたいなパンツに変わり手にはブラシと競馬の馬を叩くような鞭を持っている。
「鞭使いの他に鞭使う職業ってあるんだ…なんか飴と鞭な装備品だな…まぁ最悪この鞭があればおれ自身も戦えるか…。」
テイマーの初期スキルはテイムだ。テイマーって他に何のスキルを覚えるんだ?全く予想がつかないぞ…
ってかそもそもジフの子供をテイムしていいのか?
「なぁジフ?一つ聞きたいんだけどおれがジフの子供をテイムしてもいいのか?」
「うむ、構わぬ。そなたらに預けると言ったであろう。好きにするが良い。」
放任主義過ぎないか?最早何を言っても構わぬって言いそうだな…
『ピキッ!ピキピキッ!!』
「おっ!?」
ジフが小さくしたからなのかそれとも元々のタイミングなのかわからないが卵が動き始め、ドラゴンの子供が生まれようとしている。
『ピキピキ!ピキピキ!』
卵全体にヒビが入りもう割れる直前だ…そして…。
〈キュー!!!〉
可愛らしい産声をあげ誕生した。長い事温め続けたわけでもないし何の思入れもないけど、それでも誕生の瞬間ってのは中々感動するなぁ。
「「生まれたー!」」
〈キュッキュキュー!!!〉
全長30センチ程の子供のドラゴンはとても元気だった。
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