第101話 なりきり師、坑道でも戦う。

 〜ダーゴ鉱山 坑道〜



「反応もチラチラあるけどもうちょっと奥に行こう。シルバさんが鉱石を欲しがってそうだったから多めに掘っていこうか。」


 坑道に入ったらマップが切り替わり100メートル範囲しか表示されていないがマテリアルマップの反応はもう出ている。



「そうだね。道具も貸してくれたしちょっとはギルドにも売らないとね…。」


「ある程度マッピングしたら銀鉱石だけ先に採っちゃおう。それであとは適当にとって帰ろうか。」


「わかった!」


 おれたちは坑道を進みマップを埋めながらマテリアルマップでより反応がある場所を探した。



「いたぞホーク正体はコウモリだ…。ダーゴバットって奴だ。」


 進んでいる内にマップ内には通り道にモンスターの反応である赤い点が密集している場所があった。


 そこで曲道が無くなってモンスターまで道が一直線になった時に鑑定をしてみたらダーゴバットが鑑定された。

 おれの鑑定は鑑定項目が統合されたおかげで遠距離鑑定の効果も含んでる。

 遠距離だけじゃなく弱点やスキル鑑定も含まれてるので一気に鑑定できて便利だ。

 鑑定で出てきたダーゴバットのステータスはこうだった。



ダーゴバット


レベル10


HP143/143

MP88/88

攻撃49

防御38

魔攻68

魔防43

俊敏91

幸運16


弱点 光 聖

耐性 闇


スキル

吸血

ソニックカッター

ストーンスパイラル



「コウモリかぁ…空を飛ぶんだよね?一気に倒さないと面倒な事になりそうだね…強いの?」


「う〜ん強い…かな?アイズダンジョン終わりだからわかんなくなってきたよ…。

あのダンジョンが強くならなかったらダーゴバットは間違いなく強い敵認定できたんだけど……」


「アイズダンジョンって行きは強くて帰りは弱かったもんね…」


「そうなんだよ…そのせいでなんかしっくりこないと言うか…」


「どうする?戦わずに他の所を探す?」


「ここまで来てそれもなぁ……よし倒そう!倒して進もう!」


「わかった!ユウキ、作戦はある?」


「ちょっと待ってて考える…。」


 坑道内で大技は使っちゃダメだからな…弱点の光と聖属性の魔法も一応持ってるけど、ライトアローは単体攻撃だしホーリーフレアは対象を指定できるとは言え爆発だもんな…


 じゃあ捕縛系はどうだ?バインドプラントかウッドゴーレムで捕えてから倒す……

 うん!これが一番いいんじゃないか?だとしたら問題は…



「なりきりチェンジ 鑑定士 完全鑑定 ソニックカッター」



【音による斬撃の魔法】

【消費MP5】

【平均詠唱時間6秒】



 あっ、完全鑑定ってそんな事まで教えてくれるんだ…

 カッターって名前がついてたから羽を封じれば打てないのかな?って思って調べてみたんだけど魔法なら関係なさそうだな…



「なりきりチェンジ アーチャー」


 因みに今は戦士の格好をしたアーチャーじゃ無くて坑道内で近くに誰もいないので普通のアーチャーの格好をしている。

 戦士の剣や盾や革鎧って補正の効いてないアーチャーの職業だと地味に重いんだよね…



「ユウキ、何か思い付いた?」


「うん思い付いたよ。ただ結構時間にシビアな作戦なのかもしれないんだ。ホーク頑張れる?」


「うん!頑張る!何をすればいいの?」


「そっか。じゃあ頑張ろっか!っとその前にレジスティー!」


 ヒーラーの熟練度9で覚えたレジスティー。


 これは魔防を上げるバフ効果のある魔法だ。それをおれとホークに使った。ダーゴバットが魔法タイプのモンスターなので念には念を入れておいた。



「ユウキ?これは?」


「魔防のステータスを上げたんだよ。あのダーゴバット達はストーンスパイラルとソニックカッターって魔法を使ってくるんだ。

で、そのソニックカッターって魔法を詠唱する時間が平均で6秒らしいんだよ。」


「6秒?」


「そう6秒。平均だから5秒の時もあるかもしれないけど…とにかくその6秒の間に第一波の先制攻撃として倒せるだけ倒しておきたいんだ。

おれがバインドプラントを天井に這わせてダーゴバットを絡め取るからホークは倒してくれる?」


「うん!わかったぁ!任せておいてよ!」


「じゃあ任せた!相手が魔法を発動し始めたら戻って来るんだぞ?

スキルも奥義以外なら好きに使っていいからな。それじゃあ行くぞ!」



〈〈〈〈〈キー〉〉〉〉〉



「バインドプラント!ライトボール!」


 ある程度ダーゴバットに近付き気付かれたであろう所でおれはバインドプラントを天井に這わせダーゴバットを絡め取った。

 ライトボールを使ったのは行動内の明かりが壊されていて真っ暗だったからだ。

 多分ダーゴバットが壊したのかな?コウモリは暗い所が好きなんだろう…。

 これでホークにもダーゴバットの姿は確認できたはずだ。



「行ってくる!」


「気を付けてな!」


 ここからはスピード勝負だ。いかにこの初撃で倒せるかで後の戦闘が楽になるのか厳しくなるのかが決まる。



「ライトアロー!」


 左手はバインドプラント発動で塞がっているので弓は引けない。

 なので残りの右手で威力は弱いがホークの邪魔にならずに攻撃できるライトアローでダーゴバットの詠唱の邪魔をする。

 と言ってもおれの魔攻はダーゴバットの魔防の10倍近くあるので当たった奴はほぼ瀕死状態だけどね…。 



 ホークも斬撃連波を使ったり三角跳びを駆使したりして天井で絡まってるダーゴバットを倒してくれている。



〈〈〈〈〈キキーッ!〉〉〉〉〉



「マジックバリア!」



 そうこうしている内にダーゴバットの詠唱時間が終わったのか予想通りバインドプラントを切り始めた。

 中にはホークを直接狙う奴もいて個体によって行動が違うようだった。


 ホークをマジックバリアで囲い魔法攻撃を無効化にした。この程度のモンスターの魔法なら完璧に防げるようになったな…。



「ホーク戻ってきて!」


「わかった!」


 天井からはがれたダーゴバットをもう一度バインドプラントで絡めたいんだけど、向こうにホークがいるから巻き込んでしまうかもしれないからな…。

 それは一度こっちにホークが合流してからだな。



「乱れ打ち!」


 アーチャー熟練度5で覚えた乱れ打ち。


 これは通常1本ずつ射つ矢を同時に4本一気に射つ事のできるスキルだ。


 乱れ打ちって名前だけどおれの狙いは正確だ。4本の矢がそれぞれダーゴバットを正確に射ち抜いた。



「スッゲーユウキ!なんでそんな事できんの?」


「スキルの力だよ。派手さはないから普通の攻撃に見えたか?攻撃はさせないから安心して戻っておいで。」


「最初っから心配なんかしてないよ!」


「それじゃあおれも頑張らないとな!乱れ打ち!」


 にしても数が多いな…。コウモリが一箇所にブワッーっているのはどの世界でも一緒か…


 乱れ打ちで迎撃しながら待っているとホークも無事に戻ってきた。



「バインドプラント!」


 まだ飛んでこっちに向かってるダーゴバットに2度目のバインドプラントを使った。



「ホーク疲れてるならおれがやるけど?」


「全然よゆー!おれも戦うよ!もう一回行ってくる!」


 元気が有り余ってるのかホークはもう一度ダーゴバットに向かっていった…。

 あぁ言う元気な所を見てるとホークの体力はおれより多いんだろうなってオジサンみたいな事を思ってしまう……同い年のはずなんだけとな…


 おっとダメダメ!おれは今は15歳だ!日本人の時とこの世界で目覚めた5年を合わせたって30歳にもなってない。

 ギリギリまだオジサンって呼ばれるには早いはずだ…。

病は気からって言うもんな…それとは違うのかもしれないけど見た目だけじゃなく気持ちも若くいよう…。







 そしてさっきの戦い方を繰り返し難なくダーゴバットを殲滅する事ができた。


 おれのアーチャーの熟練度も9に上がり【霊弓れいきゅう】と言うスキルも覚えアーチャーも多分成長限界にリーチがかかったと思う。


 ある程度マッピングもできたのでマップ内検索を使い銀鉱石を表示した。

 数自体は少ないのだがマッピングをした中だけでも10個程見付かったのでおれたちはそろそろ発掘する事にした。



「ホークまずはここにしようか。」


「そうだね!楽しみだなぁ!」


 おれはインベントリからピッケルとスコップを取り出し発掘の準備をする。



「じゃあホークからやるか?岩が硬いから気を付けるんだぞ。」


「うん!よ〜し!掘るぞー!」


 こうして初めての発掘作業を始める事になった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る