第100話 なりきり師、鉱山に行く。
〜冒険者ギルド〜
「銀鉱石が取れる鉱山ですか?」
「はい。ホークの武器を作るのに必要になったんです。取り寄せると時間がかかっちゃうみたいなんで自分達で取りに行こうと思ってるんですよ。」
「サナさん近くにある?」
「えぇ…一応鉱山はあるのですがピンポイントに銀鉱石を狙うのは難しいですよ?」
「あっ、それなら大丈夫です。取れる場所さえ教えてくれればあとはなんとかしますから。」
おれたちは再びメルメルの街に戻りサナさんに鉱山の場所を教えてもらうためにギルドへとやってきた。
どうやら鉱山自体は近くにあるらしいので今日中には銀鉱石を用意できるだろう。
「あなた達がそう言うなら大丈夫なんでしょうね…わかりました。地図を用意しますので少々お待ちください。」
「「お願いしまーす!」」
いつものように奥へ行き地図を探してきてくれるそうだ。
「あれ?ユウキ君、ホーク君今日は観光するんじゃ無かったのかい?」
待っていると後ろから声をかけられた。
「あっ!シルバさんだこんにちは。」
「こんにちはホーク君どうしてギルドにいるんだい?」
「サナさんに鉱山の場所を聞きに来たんだ!銀鉱石って石がいるんだ。」
「銀鉱石?」
「ホークの刀を作るのに必要なんです。一応ダンジョン側のフィールドで探したんですけど一つも無かったんで情報収集でギルドに来たんです。」
「へぇ。一つも無かったんだ…まぁそれはそうか。鉱石が取れるような場所じゃないもんね…。」
シルバさんはおれのマップ内検索の能力を知ってるので見付からないんじゃなくてその場に無い事は理解してるだろう。
「でもユウキ君?銀鉱石を探すのはいいけど君達鉱石を掘る道具は持ってるのかい?」
「「あっ!」」
探す事に夢中でそう言えば道具の事は考えてなかった……
地面を掘るような道具も職業もスキルも無いしこのまま出発してたらまた帰ってこないといけない所だったな…
「アハハ…どうやらその様子だと忘れてたみたいだね。ギルドの道具を貸し出そうか?」
「えっ?いいんですか?」
「いいよ。ギルドでも定期的に鉱石採掘の依頼は出るからピッケルや大きなスコップは常備してるんだよ。まぁ鉱夫の職業じゃない限り補正は効かないんだけどね…」
あわわ…本日2度目の職業バレだよ…なんだ?今日はそう言う日か?
それにしても鉱夫か…力仕事ではあるけど戦闘職じゃなさそうだな…。
「そんな職業もあるんですね。お言葉に甘えてお借りします。それじゃあホークおれが地図の説明を受けておくからシルバさんと一緒に道具を取ってきてくれる?」
「わかった!いいよ。」
「ユウキ君、ギルドでも鉱石類は買取歓迎だからね一杯取ってきてくれていいんだよ。」
「ハハ…ちゃっかりしてますね…わかりました善処します。」
「これでも買取所の職員だからね。よろしく頼むよ。じゃあ行こうかホーク君。」
「うん!」
道具はホークに任せたのでおれはサナさんからしっかりと場所を聞かないとな。
「お待たせしました。あら?ホークさんはどうしました?」
「さっきシルバさんが来て採掘に必要な道具を貸してくれるみたいで取りに行って貰ってます。
場所の説明はおれが聞くんでよろしくお願いします。」
「そうでしたか。わかりました注意事項なんかもご一緒に説明いたしますのでしっかり聞いてくださいね。」
「はい。」
おれはサナさんから鉱山の場所や注意事項なんかを聞き終わりちょうど道具を持って帰って来たホークと合流した。
サナさんが説明してくれたのはおれでも薄っすらとだけど知識があった事だった。
・鉱山の坑道では崩壊の恐れがあるので一気に強いスキルを使って掘ってはいけない
・ガスが溜まっている場所があるのでそう言った場所を検知するアイテムを持っていく
・ダンジョンと違って復活しないので迷惑になる採掘はしてはいけない
・坑道にはモンスターもでるので武器もちゃんと持っていく
などなどそれ程難しい注意でもなかったので多分守れるだろう。
「はいこれユウキの分!」
「ありがとう。ん?これなんだ?」
「あーっとねそれがあれば毒ガスがわかるってシルバさんが言ってたよ!赤く光って音がなるんだって!」
「へぇ〜これがガス検知器なのか…」
紐も付いてるし首からかける小型の扇風機みたいだ…。
「首からかけておくといいよって言ってたよ!ほらおれもあるよ!」
あっ、やっぱり首からかけるんだ…
「2つも貸してくれたのか?シルバさんも心配性だな…」
おれたちは状態異常耐性もあるし状態異常回復スキルもおれは持ってるのにな…
ピッケルとスコップも2個ずつあるし全部1個でよかったんだけどな…
まぁインベントリにしまえば邪魔にはならないし別にいっか。
「よ〜しホーク!銀鉱石の採掘するぞ〜!」
「おー!」
おれたちはそのまま街を出てクルーシェ方面へと向かった。
〜クルーシェ側 フィールド〜
「よし!ここまでくればいいか。ホークその道具こっちに渡して。インベントリに直しておくよ。」
「うん!いつもありがとう。」
「どういたしまして。」
人気がいなくなったフィールドでギルドで借りたピッケルとスコップをインベントリにしまう。
ギルドでできたら一番楽なんだけど誰かに見られて面倒事に巻き込まれるのは嫌だからしょうがない。
「ねぇユウキ?鉱山まで遠いの?」
「歩いて2時間位だってさ。ほら見えるだろ?あの山だよ。」
「へぇ〜あそこで銀鉱石が取れるんだ!楽しみだねユウキ!」
「そうだな。でも……いや、なんでもない行こうホーク!」
「うん!」
楽しみだって言ってるのに茶々を入れるのは野暮だな。でもきっといるんだよな……
〜1時間後〜
「ホーク任せた!」
おれは弓で狙い射ち相手を弱らせる。
「オッケー!これで終わりだ!」
〈クマー…〉
【アーチャーの熟練度が6に上がりました】
【スキル ドリルショットを覚えました】
おれたちは定期的に出てくるクックマと言う小型の熊のモンスターを倒しながら鉱山に向かい、サナさんに聞いていたよりも早く辿り着きそうだった。
「ホーク…」
「わかってるよ。」
おれはポケットからギルドの換金の際に貰った小袋を出しクックマをそれに入れるフリをしてインベントリにしまう。
何故そんな事をするかと言うとマップに表示された白い点がおれたちを囲んでいた。
前に8人後ろに3人左右に1人ずつの布陣だ。
「はぁ…やっぱりいたか…十中八九盗賊だよな……。」
マップ内検索をしなくてもわかる。予想はしてたからな…せっかく楽しく発掘しようと思ってたのに出てくんなよ…
「(なりきりチェンジ マッパー マップ内検索 盗賊)」
☆が13個。さっきの白い点は全部残らず盗賊でしたとさ…。
「全員だね…。」
「ホント嫌になるよ…殺す覚悟は決めたけどできればやりたくないのに…」
「おれがやろうか?」
「ううん。ホーク一人にやらせる訳ないだろ!(なりきりチェンジ アーチャー)」
「そっか…ユウキ無理はしないでね…。」
「大丈夫だよ。ありがとう…」
「ヘヘッ見てたぜ兄ちゃん達!いいもん持ってんじゃねぇか!死にたくなかったらそのアイテムバッグをよこしな!」
「えっ!なんですかあなた達…これはパパが買ってくれた大切なアイテムバッグなんです。あげるなんてできません!」
「パパ?パパってか!?ハハハハハ…お前どっかの坊っちゃんか?
喜べお前を攫って身代金をぶんどってやろう。その前にそのアイテムバッグはガキが持つには分不相応なんだよ!さっさと…」
「(ライトニングボルト)」
『ドーーーーン!!!』
「「うわっ!」」
「なんだ?何が起こった!?」
おれはまず右に陣取ってる盗賊にライトニングボルトを落とした。
自分で落とした雷に驚くなんてネタがわかってたら滑稽だな…
マップの白い点は消えたので死んだのだろう…。
「(ライトニングボルト)」
今度は左側。コイツも問題無く死んだ…。
「ホークここヤバイよ!逃げよう!」
「うん!」
そう言って後ろの3人の方へと走り出す。
「あっ、待て!逃がすな追え!」
「(遠目)」
いた。木の陰からこっちを伺ってる。
「ホークあの木だ!多分遠距離攻撃だから気を付けて…。3秒後にダッシュしてくれ!」
「わかった!」
逃げたフリをしながら大まかな作戦会議をして盗賊との距離を詰める。
「(アースラインボム)」
アースラインボムの間合いに入ったので盗賊が隠れている木ごと辺りを吹き飛ばす。
『ボーン!!』
隠れていた盗賊達も地面の爆発によりそれぞれ吹き飛ばされた…。
「さすがユウキ!タイミングバッチリだよ!」
「ホークそっちは任せた!おれは向こうを片付けてくる!」
「わかった!気を付けてね!」
「あぁ任せろ!」
おれは走るのをやめ、くるっとさっきまでいた方を振り返る。
後ろは遠距離攻撃タイプの盗賊かもしれないけど背中はホークに任せた。心配する必要なんて1ミリも無い。
「ドリルショット!」
さっき覚えたドリルショット。
これは使うと矢の先端がドリル状になりおれの手から離れた瞬間に回転が始まり飛んでいく貫通力の高い弓のスキルだ。
おれは一番近くに追ってきていた剣を持った女盗賊にドリルショットを撃った。
女盗賊は剣の腹で矢を防ごうとしたが矢はその剣を折りそのまま身体を貫通した。
「疾弓!」
アーチャー熟練度3で覚えた疾弓。
普通に矢を射るより2倍の速度で飛んでいく攻撃力よりも避けられない為の弓だ。
まぁ狙ったのが人間の頭なので当たる=死なんだが…
【アーチャーの熟練度が7に上がりました】
【スキル
おいおいこの状況に打って付けじゃん…じゃあ早速使っちゃいますか。
「天弓!」
空に向かって矢を一本射ると矢の雨が降ってきた。
威力はそこまで高くは無いがアーチャーとしては貴重な範囲攻撃だ。
盗賊達も死んではいないが矢を身体中に受けてしまっている。防御できた奴はいないようだ…。
「おっと!逃す訳ないだろ。チャージショット!」
最初に絡んで来た奴が最後尾にいて天弓の範囲から出ていたようだ…。
仲間を見捨てて自分だけ逃げている…。
アーチャーの熟練度4で覚えたチャージショット。
これは手元でパワーをチャージし距離、威力共に高めるスキルだ。
溜めに多少の時間はかかるがあの盗賊はもう逃げられない…。
「これで終わりだ!」
逃げていた盗賊に命中し大きな穴を開けて貫通した。そしてマップから反応は消えた…。
「ユウキ?もう倒しちゃったの?」
「まだ残ってるよ。あと5人倒れてるだけで生きてるんだ。」
「そっか。じゃあユウキは休んでておれが終わらせてくるよ。」
「ありがとう…悪いなホーク頼んだよ……。」
「いいよ!じゃあ行ってくる!」
覚悟は決めたけどやっぱりキツイな…
仕返しする事と命を奪う事は全然違うな…やられたらやり返すをポリシーにしててもこの重さは慣れそうにないな…
【アーチャーの熟練度が8に上がりました】
【スキル 鷹目を覚えました】
「人を殺して上がる熟練度もやるせないな…」
〜ダーゴ鉱山〜
討伐した盗賊をインベントリに一人残らず回収し先を進みおれたちはメルメルの街から2時間もかからずに目的地のダーゴ鉱山へと辿り着いた。
「さぁホーク着いたぞ!どの入り口から入りたい?」
この鉱山は今でもたくさん掘られているのだろう。ここからでも入り口が3つは見える。
マテリアルマップとマップ内検索を使えば簡単に見付かるだろうから入り口はどこから入ってもいいと思う。
「う〜ん…じゃあこっち!」
「わかった右だな。じゃああそこから入ろう!ホーク採掘に夢中になってモンスターに襲われないように気を付けるんだぞ?」
「わかってるよ!それにユウキが教えてくれるでしょ。」
「教えるけどさ…ホークも自分で気を付けようねって言ってるんだよ。」
「うん!わかったぁ!ねぇユウキ早く行こうよ!」
これはワクワクしてて話半分だな…まぁおれが気を付ければいいか……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます