第99話 なりきり師、オーダーする。

 〜武器屋 シュラフの武器〜



「いらっしゃいませ〜!シュラフの武器へようこそ!」


 出迎えてくれたのは元気な小さな男の子だった。



「こんにちは。武器を見てもいいですか?」


「どうぞどうぞ!好きなだけ見ていってください。気に入った物があればぜひ買っていってくださいね!」


 武器屋の息子さんかな?しっかり接客もできて偉いな。



「ありがとう。そうさせてもらうよ。じゃあホークいい武器を見つけようか。でも勝手に触っちゃダメだからな。」


「わかった!」


 買わないけどおれも見て回ろう。へぇ…色んな武器があるんだな…最初の街だからてっきり品揃えは悪いもんだと思ってたよ…。


 おれはそんな所はゲーム能だな…ブロンズソードでも置いてたら上出来だなって思ってたけど余裕であるじゃん……



「えっ?こんなのまであるの?」


 そこに置いてあったのは二丁拳銃だった。まぁガンナーの職業がある世界だし武器に銃を使う人はいるんだろうけど余りにも物騒じゃないか?



「お兄さん目ざといですね…それは自信作なんですよ!でも残念ですが戦士職じゃ装備補正は効きませんよ。」


「えっ?これ君が作ったの?」


「もちろんです!ここの武器は僕が全部作ったんですよ!」


「全部?本当に!?」


「はい!ドワーフは鍛冶が得意なんです!」


「ドワーフ!?えっ?君ドワーフだったの?」


「? そうですよ。僕はドワーフでこの店の店主のシュラフです!よろしくねお兄さん。」


 ちょっと待って…一気に色んな情報がなだれ込んできてパニックだよ…


 武器は全部この子が作ってて、この声変わりもしてないような子供がドワーフでしかも店主?

 ドワーフの最大の特徴とも言える髭は?髭はどうしちゃったの?

 最初のドワーフとの出合いなのに変化球過ぎないか?ってか子供じゃないの?あれ、わけわかんなくなってきた…



「あっ、えぇっとおれはユウキって言います。で、あっちがホークです。シュラフ…さんは見た目かなり若いですけど何歳なんですか?」


「僕?僕は今20歳だよ。あっ、お兄さん僕の見た目にガッカリしたんでしょ!髭が生えてないドワーフだって!

後10年もしたら僕にだって立派な髭は生えてくると思うよ!」


 うわー完全に年上じゃん…えっ?見た目一桁歳だよ?髭が無い事にはガッカリしたと言うよりそれ以前にビックリしてしまった…。

 ってかドワーフって30歳頃まで髭生えてこないの?そんなの聞いたことないよ?



「ガッカリはしてないですよ!ただまさか年上だとは思わなかったんでビックリしました。気分を悪くしたならごめんなさい…」


「いいよ別に。最近は知り合いも増えて回数は減ったけど最初にこの街に来た時はよく人間の子供と間違えられたんだ。その時の事を思い出しちゃったよ…。」


 そりゃ間違えられるよ…身長は低いし声は高いし肌とかトゥルントゥルンだもん。


 自己申告がなかったら今でも人間の子供として接してたよ…



「ドワーフって初めて会ったんですけどもっと見た目的に頑固で気難しいってイメージでした。シュラフさんみたいなドワーフもいるんですね。」


「あぁ…僕達寿命は長いんですけど成長はそこまで早くないんですよね…。そのかわりエルフより全盛期は長いんですよ!」


「へぇ〜そうなんですね…。」


 これはあれかな?エルフに対抗意識持ってるってとってもいいのかな?

 種族間の事はまだよくわかんないし面倒臭いから流しておこう…。



「ユウキ〜!カッコいいのあったよ!」


 ナイスタイミングだホーク!よく今話しかけてくれたよ。

 このままだとシュラフさんの愚痴タイムに突入する所だったぞ…。



「おっ、どれだ?シュラフさん一緒に行って武器の説明をしてもらってもいいですか?」


「あ〜…はい!もちろんですよ!どの武器ですか?」


「こっちこっち!」


 ホークに連れられ向かった先にはカッコいい刀が飾ってあった。



「この剣だよ!カッコいいでしょ!」


「う〜ん…カッコいいけどこの剣は片手剣じゃなくて両手剣の刀だぞ?細いから硬い敵には振れないし、それにホークに装備できるのか?」


「え〜でもこの剣がいいのに…」


「いや〜そう言われてもなぁ…シュラフさん?双剣士って刀を装備して補正って効きますか?」


「双剣士ですか?その刀は剣士か侍の武器なので双剣士には装備補正が効きませんね…。」


 わっふ…侍の職業は知らなかったな…剣士の上級職か?

 ここは武器屋だし油断してたら他にもネタバレしちゃうな…そんな事になったら楽しみが減っちゃうじゃん…


 でも侍かぁ…なれるならなりたいな。剣士を育てるのもありだな…。



「だってさ、ホーク残念だけど双剣士の武器を選ぼう?」


「……わかった。」


 う〜ん…落ち込んでしまったな…でも適正装備じゃないと色々と弊害が出ちゃうんだよな…ホークには可愛そうだけどここは我慢してもらおう…。



「よかったらお作りしましょうか?」


「「えっ?」」


「オーダーメイドととして双剣士用の刀を制作しますよ。ただし代金と時間はそれなりに頂きますけどね。」


 オーダーメイドか…この世界にもその制度ってあるんだ…

 オーダーメイドって物凄い高いイメージがあるんだよな…だけどホークがそれで喜ぶなら頼んでみようか。



「お金と時間ってどの位かかりますか?」


「そうですねぇ…まずは素材を取り寄せる所から始まって制作時間も考えて…約2週間って所ですかね。

あと金額は仕入れ値があるので今はハッキリ答えられないですがこちらとしては最低でも30万プライはほしいですね…。」


 30万!?たっか…いや安いのか?ゲームだったらバランス崩壊もいいとこだがこの世界のダンジョン素材は結構高く売れる。

 臨時収入があったりして財布は潤ってるから全然買えない値段ではない。


 だけど2週間か結構かかるな…そろそろ次の街に行こうと思ってたんだけどな……



「お金は大丈夫なんですけど期間はもうちょっと早くなりませんか?」


「そう言われても素材がありませんからすぐには作れませんよ…」


「因みに素材ってなんですか?おれたちが用意しますよ!」


「探すんですか?素人には難しいですよ?そうですねぇ…まず銀鉱石が3個とモンスターの硬い鉄素材が欲しいですね…。他の素材はここにもあるのでそれを使おうと思います。」


「銀鉱石に鉄素材ですね。わかりましたそれを持ってきたらどの位で作れますか?」


「素材が手元にあるなら1日貰えれば作れますよ。」


「本当ですか?じゃあお願いします!シュラフさんあとで素材を持ってまた来ます!行こうホーク!」


「あっ、待ってよユウキ!」


「一応こっちでも取り寄せておきますねぇ〜!あとで来ますって言ってたけどそんなすぐに見付かる素材じゃないんだけどな……若いね。」







 〜メルメルの街 ダンジョン方面フィールド〜



「よし!ホーク銀鉱石を探すぞ!」


「うん…ユウキごめんね…おれのせいで観光できなくなっちゃったね…」


「なぁに言ってんだよ!刀が欲しかったんだろ?それを作ってくれるって言ってるんだからいいんだよ!

観光なんて明日にすればいいし、もしシュラフさんの気が変わったり他の仕事が入ったりで手に入らないほうが後悔するだろ。」


「それはそうだけど…」


「おれたちはアイアンスコーピオンの外殻を持ってるし、あとは銀鉱石を探せばいいだけなんだからすぐに揃えれるって!だから気にすんなよ。」


「うん!ありがとうユウキ!」


「さてとじゃあ早速見付けようか!なりきりチェンジ マッパー マップ内検索 銀鉱石」


 あれ?出ない…やっぱり鉱山に行かないとダメ?フィールドならワンチャン埋まって無いかなって思ったんだけど無駄足だったな…



「う〜ん…ホークこっちには無いみたいだ…。一回ギルドに行って鉱山の場所をサナさんかシルバさんに聞いてみよう。」


「鉱山?山に行くの?」


「そうだよ。鉱石と言えば発掘、発掘と言えば山だ!この辺のフィールドに無いとわかった以上山に行くのが一番見付かるはずだよ。」


「へぇ〜そうなんだ。それも前世の知識なの?」


「まぁそうなんだけど…これは別に前世は関係ないんじゃないかな?この世界の人も多分鉱石に関係してる人なら知ってる事だと思うよ。」


「へぇ〜やっぱりユウキは物知りなんだね。」


「…うん、まぁそう言う事だな!じゃあギルドに行こうか!」


「うん!」


 村には鉱山はなかったから知る機会はなかったもんな。

 こんな事で物知りって思われてちょっと過大評価が過ぎるとは思うけどホークが褒めてくれてるしまぁいっか…。

 大体日本でもおれはこんな感じだったもんな。ちょっとした事でも凄いって褒めてもらってチヤホヤされてたからな…。まぁそんな事はどうでもいいか。


 さてさて鉱山は近くにあるかな?

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