第98話 なりきり師、危険を回避する。
〜翌日〜
朝からギルドへ行くとサナさんに前に生活魔法を教えてもらった部屋に行くように言われた。
そこにはギルマスが待っていて昨日の豚女について教えてくれた。
何故この部屋なのか疑問に思って聞いてみると別に聞かれても問題無い内容だかららしい。
考えてみれば新人冒険者がギルマスの部屋に何回も行ってたらおかしいもんな…
「で、あの豚女は素直に喋ったんですか?」
「そりゃもう得意げに自慢話かのようにペラペラと聞いてない事まで喋ったよ…
まずあの女の名前はキラリ=ブルーレット。複数の男に貢がせて生活をしていたようだ…。」
「は?嘘でしょ?あんなのに貢ぐ男がいるんですか?それも複数!?」
どうなんってんだ異世界…おれには理解できないマニアの世界なのかここは…
ってかキラリ=ブルーレットって…完全に綺麗な名前だろ!名前負けし過ぎだよ!アイツの見た目は掃除前の公衆便所レベルだぞ!名前と真逆じゃん…
「ほとんどが妄想みたいな話だったんだがな…まぁでもそんな中でも真実もあって今は警備隊の牢屋にぶち込まれてるよ…。」
やっぱりそうだよな!あれに貢ぐなんて金をドブに捨ててるのと同じだもんな。
「哀れ過ぎる…でもまぁ自業自得ですよ。なんたっておれたちに喧嘩を売ったんですから…。
あのネックレスを返さなかった理由も聞けましたか?」
「あぁ…それもペラペラと喋ったよ…」
ギルマスが話してくれた昨日のネックレス盗難事件の理由は余りにも身勝手な理由だった…。
「それってつまりあの豚女はチェリッシュさんの彼氏のディーンさんの事が好きで、プレゼントのネックレスを無くせば必ず別れるからそしたら自分と付き合うって思い込んでたんですか?」
「まぁ簡単に言えばそう言う事だ…。
『ディー様はあの女狐に騙されてるだけ』とか『私と付き合ってたのにあの泥棒猫が汚い方法でディー様を奪った』とか『ディー様を救えるのは私だけ』とか聞いてて頭が痛くなったつーんだよ!」
外見、中身、頭が悪いだけでなく妄想癖も入ってるとか…一体何重苦だよ……
それに別れるって決まってもないし、ましてや自分が付き合えると思ってる事にもドン引きだ…
しかも何故か最初は付き合ってた設定になってるし……
一方のチェリッシュさんはとてもいい人だった。おれたちがネックレスを夜に持っていったのだが、結構な遅い時間だったがとても感謝してくれた。
あのネックレスは彼の母の形見に彼が刻印してプレゼントしてくれた物だそうで本当に困っていたようだったが、おれが手に持っていたネックレスを見付けて大号泣&お礼の嵐だった。
追加報酬も出すと言ってくれたが別にお金に困ってないので遠慮しておいた。
「ギルマスも大変でしたね。ただのネックレス捜索依頼がこんな事になるなんて…」
「お前本当は転生人じゃなくて疫病神なんじゃねぇか?」
「なんでおれのせいなんですか!それより裏の人間に繋がってるとかも言ってましたけどあれも妄想だったんですか?」
「いや、それがそうでもないんだ…。それもペラペラと話してくれたよ…。
そんな中には一般にはあまり名前を知られてないような盗賊もいて信憑性があるんだ。
居場所まで話したから今ギルドで調査しているところだ…」
「えっ?それは本当だったんですか?マジでヤバい奴じゃん…どうなってんだよアイツ…」
「この情報が確かならお前達には特別報酬として盗賊発見報酬を出してやるよ!またお手柄を上げたな…。」
「お手柄を上げた実感も何かをやり遂げた達成感もないんで全然嬉しくないんですけど…」
まぁでもあの豚女に仕返しはできたからスッキリはしてるけどね…
「まぁそう言うな。また街の平和に一歩近付いたかもしれないんだ。盗賊を駆除できるんだ喜ばしいじゃねぇか!
さて、堅っ苦しい話も終わったし今度はお前達の依頼についてのダメ出しをしてやろう。」
「ダメ出し?無いでしょそんなの!完璧にこなしましたよ!」
「おれからしてみれば全然なってない!依頼を受けたなら依頼人にまず会え!依頼書に載ってる事が全てじゃないぞ。依頼人から依頼書に載ってない情報を聞き出せ!」
あぁ…これは確かにその通りかもしれない…夜に行った時最初チェリッシュさん驚いてたもんな…。
依頼を引き受けた事だけでも伝えればよかったかな…?
「それに住宅街であんな事してんじゃねぇぞ!関係無い奴が目撃してたらどうするつもりなんだ!」
「それは大丈夫です。ちゃんとマップで確認してましたから。外に人はいませんでしたよ。」
「家の中にはいるだろ!あそこは住宅街だぞ!窓から外を見てる奴がいたっておかしくはねぇんだよ!大声で叫んでたから外を見た奴もいるかもしれねぇだろ!」
「暗かったから大丈夫でしょ…。」
「あのなぁ…この世界には暗視って言う暗い所でも目が見えるようになるスキルだってあるんだ…。あまり迂闊な行動はすんじゃねぇよ…」
暗視…異世界物でそう言えばそんなスキルもあったな…ヤベッすっかり忘れてたよ…この世界にもやっぱりあるんだ…。
でもここは知らないふりして乗り切ろう。
「へぇ…そんなスキルもあるんですね。わかりました次から気を付けます。知らなかっただけなので怒らないでください。」
「ったく…知らなかったで済まない問題もあるんだからな!それとおれから言いたい事はもう一つあるんだ。」
まだあるのか…おれたち早く観光に行きたいんだけどな…
「なんですか?予定が詰まってるんで手短にお願いしますね…」
「なぁに、ただの確認事項だ。こないだおれの元に一件の苦情がきてな…。
なんでも新人冒険者がギルドが間違えたせいでいきなりDランクに登録されたって門番に泣きついた2人組がいたそうなんだ…。」
ギクッ!
「なんでも無邪気な2人組で人懐っこくてとても素直な子達だったが、命懸けの依頼をさせられるなんて可愛そうで見てられなかった。早く適正ランクに戻してやれって怒られてしまったよ…。」
「へ、へぇ〜…」
「ギルドが間違えてランク登録する事なんてねぇんだけどな…ましてや新人なんて全員がGランクスタートだ。なんでおれは怒られたんだろうな?なぁユウキ?」
「さ、さ、さぁ?…お、おれにそんな事聞かれても…」
「そうか…わからねぇか。あぁそう言えばおれは昨日ゲンコツした事を謝れって言われてたんだったか?
確かにあの女は捕まえるべき人間だったからな。間違えたおれもゲンコツされてやるよ。それと素直に謝罪をしようか…」
「い、いや!大丈夫です!おれたち本当は気にしてませんから!
それじゃあおれたちは先を急ぎますから!失礼します!行こうホーク」
「えっ?あっうん。またねギルマス!」
急いで部屋を飛び出て逃げた。
〜ギルド エントランス〜
「ねぇユウキ?なんでそんなに慌ててるの?謝らせるんだって張り切ってたじゃん!」
「あそこでギルマスに謝罪なんてさせてみろ…門番さん達の事でまたゲンコツされちゃうぞ…」
あのギルマスおれたちに謝るつもりなんて全く無かったな…
「えっ?なんで!?」
「数字にすれば分かりやすいよ。ほらギルマスはおれたちのせいで怒られたって言ってただろ?これで貸し1。
間違えてゲンコツした事で0になって、それをやり返して謝らせたらまた貸し1に戻ってまたゲンコツされちゃうぞ…
帳消しになってる今の状態がベストなんだよ。」
「えっ?でもギルマスが門番さんの事でゲンコツするかなぁ?」
「するよ!おれが今まで何発されたと思ってるんだよ…嬉々とじゃあ今度はおれの番だなとか言いだすぞ…。」
「え〜考え過ぎだよ…いくらギルマスでもそんな事しないって!」
「いや、やる。おれの危険センサーが間違いないって言ってるもん…」
「そうかなぁ…?あっ!ユウキそう言えば昨日の報酬貰わないと!サナさんももう確認終わってるでしょ?」
「そうだな。じゃあカウンターに行って報酬を貰ったら観光に行こうか!」
「うん!」
〜ギルド カウンター〜
「それではこちらが報酬の10万プライです。
依頼者のチェリッシュさんが報酬の増額を申請して行きましたので報酬は倍です。」
昨日断ったのに結局追加報酬として増額してくれていたようだ。気を使わなくてもよかったのに…
まぁここまでしてくれたなら気持ちよくもらっておこう。
「「ありがとうございます!」」
「ユウキさん、ホークさん?大丈夫でしたか?」
「ん?何がですか?」
「いえ、ギルマスが説教してゲンコツしてやるんだって張り切ってましたので…」
「「………」」
あっぶねぇ…やっぱりマジでやるつもりだったよあのオッサン……
〜メルメルの街〜
「さて、無事に依頼達成報告も終わったし観光に行こうか!」
「うん!ねぇユウキおれ武器屋行きたい!」
「もちろんいいよ行こう。他は?」
「う〜ん…防具屋!」
「ハハ…ホークは装備品ばっかりだな。いいよ防具屋も行こう!」
「ユウキは?」
「おれは教会かな。鎮静した事も伝えたいし…。
まだ1週間しか経ってないから来るのが早いって言われるかもしれないけどな…。」
「そうだね!しっかり報告しないとね!」
「後は…屋台を巡ったりしてご飯とかアイテムとかを補充しときたいかな。」
「それも全部行こうよ!楽しみだなぁ!どっから行く?」
「近い所から順番に回ろうか。だから武器屋、防具屋、教会、屋台の順番で回ろうか」
「うん!わかった!最初は武器屋かぁ!楽しみだなぁ」
おれたちはこの街に来て改めて初めての観光をする事になった。
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