第96話 なりきり師、名探偵になる。
「へぇ〜こんな所にこんなお店あったんだ…」
「みてみてユウキ!あそこに木で作ってる鳥が置いてるよ!……」
「噴水…この世界でもあるんだ……」
「うわぁ!馬車だ乗ってみてぇ!……」
マッピングと称しながら今までできなかった街の観光も同時にしていた。
村で育ったホークにはどれも刺激的な物ばかりだったようで凄くテンションが上がっていた。
かく言うおれもこう言った観光は久々だったのでテンションが上がったけどね……。
「ホーク?我慢しないで遊んでもいいんだぞ?見るだけじゃつまんないだろ?」
「そんな事ないよ!すっごく楽しい!それに今おれたちは依頼を受けてるんだよ!仕事はちゃんとやらないと!」
ホークに仕事はちゃんとやらないとと諭されてしまった…
マッピングに関してはおれ一人で何の問題もないんだけどホークは付き合ってくれてる。
多分オレ一人にマッピングをさせて自分だけ楽しもうって気が全く無いんだと思う。
本当に優しい子だな…。
「わかった!じゃあさっさと依頼を終わらせて本当の観光をしようぜ!」
「うん!」
お金に関してはさっき沢山報酬があったので無理に依頼をする必要は無かったが、今は依頼を受けてしまっている。
依頼主さんも誰にも引き受けて貰えず困ってるみたいだし早く見付けてあげよう。
「ここは住宅街かぁ。」
「村の家とは違って立派な家ばっかりだね。う〜んお店とかはないね…。」
何もない住宅街をマッピングしていく中おれはギルドを出てからずっと気になってた事を歩きながら触れてみた…。
「なぁホーク?これ誰だと思う?」
「あっ!ユウキも気になってた?言ってこないから無視してるのかと思ってたよ…。」
「いや、無視はしてたんだけどここまでしつこいとなると流石にな……」
と言うのもギルドを出てからずっとおれたちはつけられてる。一定の距離を保ち姿は見えない。
何故それがわかるかって言うとマップ上に表示されたマーキングの印がずっとついてくるからだ。
おれがマーキングしている人は今の所ギルマス、マーガレット所長、シルバさんの3人しかいないのでこの中の誰かが犯人だ。
2人はギルドにいる。ただ1人が後をずっとついてくる。見張られてるようでなんか嫌だった。
「残り2人がギルドにいるって事はシルバさんかな?」
「え〜でもシルバさんなら前みたいに空飛ぶんじゃない?」
「じゃあギルマス?」
「忙しいと思うよ?」
「じゃあマーガレット所長?」
「うーん…どうだろ?」
そもそもなんで尾行されてんの?おれの能力知ってるんだから尾行に気付く事位わかると思うんだけどな…
「どうする?あんまり気分のいいものじゃないから控えてたけど見ちゃおうか?」
ここで言ってる見ちゃおうかは姿の事ではなくステータスの事だ。知ってる人だからこそ今まで鑑定は控えていた。
もしかしたら周りの中に鑑定に気付く人もいるかもしれない…
それに他人にステータスを知られるって基本的におれは嫌だからな…。
自分にされて嫌な事は他人にしない(時と場合と相手による)とやられたらやり返す(ほぼ絶対)がおれのポリシーだからな。
でもこの3人はおれのステータスをガンガン見てる。
おれが鑑定した所で罪は相殺されるだろう。
「でもやったら気付いてる事に気付かれちゃうよ?ギルマス達前にシルバさんのに気付いてたし…。」
他に人がいるので鑑定の事を曖昧な言い方をしたけどホークは理解してくれていた。
それにホークもバレないように努力してくれている。ホークの成長がおれは嬉しいよ…。
「多分気付いてる事をわかった上で尾行してるんだと思うんだ…。だって一緒にダンジョンに潜っておれのスキルも知ってるんだからわざとだよこれ…」
「それもそうだよね…まぁ何もしてこないんだし見守ってくれてるだけかもしれないよ?ほっといてもいいんじゃない?」
まぁ確かにホークの言う通り何もしてこない。おれは気配とかもわからないからマップでしか確認できてない。
それも多分わかってるんだろうな……
「な〜んかやり口がネチネチしててギルマスっぽいんだよな…見なくてもなんとなくわかった気がする…。」
「一体何がしたいんだろうね?」
「変人の考える事はわかんねぇ!いちいち気にしてもしょうがないか…。
ホークこれで住宅街も完了だ!一旦宿に帰って調べてみよう!」
「えっ?でもまだ全部回ってないよ?」
「後は貴族街だけだけどあそこは許可が無いと入れないからな…もし調べて無かったらギルマスに相談してみよう。」
「あっ、そっか…おれたち貴族じゃないもんね。」
「このまま見付かれば貴族街に行く必要もないからな。」
「わかった!」
貴族街以外のマッピングを終えたおれたちはまたガルーダの止り木へと帰った。
〜宿の部屋〜
「マップ内検索 チェリッシュの思い出のネックレス」
色々見て回りそれなりに歩き回ったのでもう夕方だ。部屋に帰ってすぐにマップ内検索を使った。
「あっ!ユウキ出たよ!」
「あぁ出たな!えぇっと…ここは……うげっ!マジかよ…住宅街じゃん…。」
マップ内検索で☆が出た場所はさっきまでおれたちがいた住宅街だった……
やっと今あそこから帰ってきたばっかりなのに……
「帰ってきたばっかりだけどまた行かないとダメだね…」
どうやらホークも同じ感想だったらしい…テンションが少し下がってしまっている……
ダメだ!ここでおれまでネガティブな発言をしてしまうと完璧に行きたくなくなる…
ここはポジティブな事を言って気持ちを高めよう。
「でもまぁ貴族街に無かっただけマシって思おうぜ。どうせ最初から何処かには行かなきゃ行けなかったんだしな!
さっさと依頼を終わらせて明日は本当の観光しようぜ!」
「…そうだね!今日頑張れば終わりそうだもんね!行こうユウキ!」
よかった…ホークのテンションも元に戻ったようだ。
おれたちは帰ってきたばかりの宿から帰ったばかりの住宅街へとんぼ返りした。
〜メルメルの街 住宅街〜
「ここだな…」
「うん。」
「行くぞ!」
「うん!」
住宅街に戻ってきたが夜になってしまった。マップ内検索で出た場所は一軒の住宅だ。
多分今は多分夕食時だろう…結構迷惑な時間帯だ。
知らない人にネックレスを返せって言うだけでもハードルが高いのに時間帯でもハードルが上がってしまった…
でもここで尻込みはしてられない。勇気を出しておれは扉をノックした。
『コンコンコン』
「すいませ~ん!」
「誰よこんな時間に!何よアンタ達!」
出てきたのは気の強そうなブタの獣人……恰幅の良い人間の女が出てきた。
なかなかのインパクトのある顔をしていらっしゃいます…。
「いきなりすいません。冒険者ギルドでチェリッシュさんと言う人のハートのアクセサリーを探して欲しいって依頼を受けたんです。
それで色んな人に聞いて回ってここの家の人が持ってたのを見たって人がいて…。
チェリッシュさんが困ってるんです持ってたら返してあげてくれませんか?」
「誰がそんな出鱈目を言ったのよ!!!チェリッシュなんて女知らないしそんなハートのネックレスなんて見た事無いわよ!!!
いちゃもん付けてんじゃないわよ!!!さっさと帰れクソガキ共が!!!」
おっふ…醜いのは見た目だけでなく性格もらしい……
暴言と共に凄い勢いでドアを閉められ門前払いをくらってしまった…。
まぁいい…そっちがその気ならこっちだって容赦はしない。
「はぁ…話もできなかったな。」
「ねぇどうする?なんかめちゃくちゃ怒ってたよ?」
「そうだな。でもあの人が持ってるのに間違い無いと思う。おれアクセサリーってしか言ってないのにネックレスって自分で言ったし…」
「あっ!ホントだ!」
おれたちはわざとドアの前で中にも聞こえるように話している。
一回やってみたかったんだよね名探偵って奴を。
会話の中に仕掛けてみたのだが見事なまでに引っかかってくれた。
「だからギルドと警備隊の人に通報して探して貰おう!このままだと依頼失敗しちゃうからな…」
「そうだね…。すぐ動いてくれるかな?」
「一杯お願いしようぜ!そうしたらきっと大丈夫だよ!」
「わかった!おれもお願いするよ!」
「じゃあ最初はギルドに行こう!」
「うん!」
大人しく素直に返せばいいものを…あろう事かおれたちに暴言を浴びせるとは…。
覚悟しろよ豚女!絶対後悔させてやる。
その場を離れたおれたちはギルドへ…向かわず少し離れた路地に隠れる。
「ねぇユウキ?ギルドには行かないの?」
「行かないよ。おれの推理が正しければ犯人はすぐに動くはずだ!名探偵のおれに間違いはない!少し泳がせてから取り返そう。」
「名探偵?また新しい職業が増えたの?」
「あ、いや…増えてはないんだけど…ほらこう言うのって気分でもできるじゃん?だから…」
「あっ!ユウキ本当に出てきたよ!」
「えっ?…やっぱりな!おれの推理は正しかった!あの豚女が犯人だ!気付かれないように追いかけよう!」
「うん。」
マップ内検索で☆が出てた時点であの家にネックレスがある事はわかっていた。
最初から犯人はわかっていたがこんなスキルがあるならやってみたいじゃん…名探偵ごっこ。
ま、おふざけはこの辺にしてあの豚女からちゃんとネックレスを取り返すか…。
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