第95話 なりきり師、思い出を探す。

 〜依頼ボード前〜


 再び戻って来た依頼ボード前だがさっきと違うことが2つある。


 一つは依頼書が結構減ってしまっている事。これは仕方無い。

 あれから結構時間も経ったし早い者勝ちだから減るのも当然だろう…。


 だがもう一つの変化…勧誘が全く来なくなった。


 おれとしては勧誘を受けるつもりが無いのでありがたいのだが聞こえてしまったんだ…。



『アイツらゴロズに攫われて無事だって事はそう言う事なんだろ…』


『あの子達よく生きてるわね…あたし女でよかった…』



 と、何か盛大に勘違いされてしまっていた……


 ってかマーガレット所長他の人にどんな事してんだよ!



「はぁ…おれたちが目立つのってギルマス達に原因があると思うんだけど……」


「アハハ…大丈夫だよ!ユウキも負けてないよ!」


「ホークそれ褒めてないからな?…むしろ悪口だからな…」


「えっ?そうかなぁ?皆凄いよ?」


「そんなとこ凄くなくていいの!それよりホーク?なんの依頼やりたい?」


「う〜ん…じゃあこれは?」


 そう言ってホークが一枚の依頼書を指差した。その内容が…




思い出のペンダント 捜索依頼




ランク 指定無し




場所 メルメルの街




必要職業 指定無し




パーティー編成 指定無し




必要数 1




報酬 5万プライ




依頼主 チェリッシュ




「物探しクエストかぁ…うん、いいんじゃないか?報酬も高いし簡単そうだ。

でもサナさんに詳しく聞いてみてから決めようか?」


「そうだね。」








 〜受付けカウンター〜



「「サナさんこんにちは。」」


「はい、こんにちは。本日はどのようなご用件ですか?」


「依頼を受けたいんですけど詳しい説明をお願いします。」


「お任せください!どの依頼ですか?」


「これです。」


「ふんふん…捜索依頼ですね……。あの…ユウキさん?どうしてこの依頼を?」


 どうして?何でそんな事聞くんだろ?



「ホークが選んだからですけど?報酬もいいしそれに簡単そうだし…なっ?ホーク。」


「うん!」


「簡単だなんてとんでもないですよ!この手の依頼はモンスター討伐よりも難しいんですよ!報酬が高いのもそのせいです。」


「そうなんですか?」


「はい。更に今回の依頼はネックレスと言うとても小さな物を探す依頼です。

依頼失敗のリスクが高く誰も受けたがらないんです。依頼を失敗すると冒険者としての評価も下がりますし違約金も発生しますから…。」


 ほぅ…なるほどね……。まぁ言われてみればそうだけどおれならスキルを使えば大丈夫かな。



「因みに違約金ってどのくらいですか?」


「ギルドでの依頼失敗の違約金は報酬の半額です。なので今回なら2万5000プライですね。」


 2万5000プライか…今なら払えない金額じゃないな。よし誰も受けたがらないならこれを受けよう!



「わかりました。じゃあこの依頼を受けます!サナさん手続きお願いします!」


「ユウキさん?私の話聞いてましたか?」


「聞いてましたよ?でも依頼主さん困ってるんでしょ?それに誰も受けたがらないならおれたちが受けてもいいじゃないですか!失敗した時の違約金も払える値段だったので大丈夫です!」


「もし依頼を失敗してしまうと失敗記録は残るんですよ?それでもいいんですか?」


「? 全然いいですよ?最初から失敗しない人なんていないですし、全部を成功させようと失敗を恐れて簡単な依頼しかできなくなる方が嫌ですから。」


「……申し訳御座いません。出過ぎた真似をしてしまいました…失礼しました。

それではこの依頼を受理致します。詳しい資料を取って参りますので少々そのままお待ち下さい。」


「「はーい!お願いしまーす!」」


 サナさんは奥に資料を取りに行ってくれた。







 〜サナside〜



「はぁ…私ってなんてバカな女なの!受付嬢として最低よ!」


 落ち込む…これは久々に落ち込んじゃう……。新人冒険者のユウキさんがまさかあんな事を言うなんて…



「うぅ…」


「何してんだ?」


「うっ!あっ、ギ、ギルマス…アハハ……実は…」


 不甲斐なさから自分の頭をポカポカ叩いてたらギルマスに見られてたみたい……

 私はさっきユウキさんが失敗を気にしないって言ってた事をギルマスに話しました。



「なるほどな。それで自分の頭をねぇ…」


「お、お恥ずかしい所をお見せしました…」


 できれば見られたくなかったな…なんで誰もいないと思い込んだんだろ……でもなんでギルマスがここに?

 ここは依頼の資料を置いておく部屋で普段はギルマスがいるような場所じゃないのに……



「なぁに気にすんな!アイツらに頭を悩まされるのはお前だけじゃないさ!

それにあぁ見えて慎重な性格のユウキが選んだんだ。自信があるんだろ。その力もあるからな…


詳しくはここでは話せないがまた今度教えてやるよ。早く資料を持っていってやれ。」


「は、はい!わかりました。失礼します…。」


 ユウキさんに物探しの力があるの?そう言えば前にマッパーに転職してたっけ…それと関係があるのかしら?


 昨日は盗賊退治もやってくれたみたいだしダンジョンでそんなに強くなったのかしら? 






「…アイツらが捜索依頼をねぇ…そうだ!面白い事思い付いたぞ!」







 〜受付けカウンター〜



「お待たせしました。こちらが今回の依頼の資料になります。どうぞご覧ください。」


 今回遅かったな…何時もすぐに帰って来るのに…誰も受けないから探すのに手間取ったのかな?



「ありがとうございます。」


 資料によると詳細はこうだった。


・探して欲しいのはハートの形をした銀色のネックレスで裏面にCとDの刻印がしている。


・ネックレスを着けて買い物に出たが家に帰って来ると首元にない事に気付いた


・何処で落としたかわからず一通り見て回ったが見付からなかった


・彼からのプレゼントなので見付からないと凄く困る


・その日行った場所が服屋、雑貨屋、市場、屋台街


・彼に次に会うのが2週間後なので早く見付けて欲しい



「依頼を出してから2週間後って事は残りの日数は…」


「期日は明日までですね。この2週間誰も依頼を受けませんでした…。ユウキさん、ホークさん本当に大丈夫ですか?」


「はい!大丈夫ですよ!明日までに見付ければいいんですよね?この街にあるなら見付けられると思います。」


「そうですか…わかりました。ではお願いします。正式に依頼開始でごさいます。

もし依頼を達成された場合こちらの紙にチェリッシュさんのサインをして頂きギルドまで持ち帰ってください。」


「わかりました。ありがとうございました!行こうホーク!」


「うん!サナさんありがとうございました!」


 ギルドを出て早速ネックレス探しを始めようと思う。



「じゃあホーク一回宿に帰ろうか!」


「えっ?探さないの?」


「探すよ!だから宿に帰るんだよ。」


「どう言う事?」


「まぁいいからいいから!早く行こうぜ!」


「う、うん…わかった。」






 〜宿の部屋〜



「ねぇユウキなんで帰ってきたの?」


「周りに一杯いたからな。エルフとか耳が良さそうだし小声でスキルを使っても聞こえちゃいそうだから部屋に帰ってきたんだよ。」


「なんだそう言う事か。急に帰るって言ったからビックリしたよ!」


「ごめんな。説明もしにくくてさ……さてと始めるか!なりきりチェンジ マッパー マップ内検索 思い出のネックレス」


 わぉ!結構一杯出てきたぞ…皆思い出のネックレス持ってるもんなんだ……



「一杯あるね…」


 パーティーマップを表示してるので検索結果はホークにも見えている。



「うん…検索の仕方が悪かったかな?もう一回条件を変えてやってみよう。マップ内検索 チェリッシュの思い出のネックレス」


 今度は☆が一つも表示されなかった…。



「今度出ないね…」


「う〜ん…この範囲には無いかこれでは出ないかだな……よし!ホークとりあえずこの街のマッピングに行こう!それでまた帰って来て検索してみよう!」


「わかった!」


 と言う事でおれたちはまず街のマッピングから開始する事にした。

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