第94話 なりきり師、報酬を貰う。

 〜翌日〜



「ホーク!ギルドに行くぞー!」


 ガルーダの止り木のいつもの部屋に入りホークを誘った。

 因みにおれはアーチャーの職業で剣が振れるのかを外で試していた。


 結果は物凄く扱いにくいがまぁ及第点と言った所だろうか?ステータス自体は上がってるので戦えない事はないと思う。



「えっ?もう行くの!?」


「今日からは正式に依頼を受けるんだろ?朝一で行かないと条件の良い依頼から無くなっちゃうぞ?」


「そうなの?」


「あぁ、依頼は早い者勝ちらしいからな。それに昨日の換金分も受け取らないといけないしな。」


 昨日ギルマスと言い合った後シルバさんが部屋に入ってきた。

 入った瞬間にいがみ合ってるおれとギルマス…それを止めてるホークを見て絵に書いたような苦笑いをしていた…


 その後中々止まらなかったおれたちに痺れを切らしたのかアサシンシルバが顔を出してしまい強制的に喧嘩は終わらされた…。


 その時に盗賊関連の報酬の話になったのだがおれたちのダンジョンでの素材も換金してなかった事を思い出し、一階層あたり5万プライを上限に買い取って貰う事になった。


 その他にはダンジョンの現状だったりこれからの依頼の事も聞いたりして昨日は帰って今日改めて換金分を渡して貰うことになったんだ。



「ギルドの倉庫一杯にしちゃったもんね…シルバさん達大丈夫だったかな?」


「まぁその辺はなんとかするだろ?大丈夫だ。……多分……きっと…」


 いや〜素材の多いのなんのって…特に八階層と十階層。

 もちろん5万プライに届かない階層も一杯あったがこの2フロアはバカみたいにいたからな…インベントリから放出したけどまだまだ在庫に余りはある。


 シルバさん達の分は別に分けて出しておれたちの分も倉庫に出したら一杯になってしまった…。



「鑑定士の人に恨まれないといいけどね……」


「徹夜確定パターンだもんな…でもおれたちが出したってわからないと思うからそれもきっと大丈夫だよ!」


 そもそも昨日ギルドに行ったのがもうほとんど夜だったのであの時間から鑑定を始めたら朝帰りは確実だと思う。



「と、とにかく!さっさと行って貰えるもん貰って依頼をパパっと受けちゃおう!」


「それもそうだね。なんの依頼受ける?」


「まだ決めてないよ。それは行ってからのお楽しみだな。」










 〜冒険者ギルド 依頼ボード前〜



「この時間でも遅かったか…まだ9時だぞ……」


「えっ?一杯あるじゃん!貼られてる奴じゃダメなの?」


「どれもこれも制限があるんだよ…魔法職が必要だったり荷物持ちの職業優先だったり…」


「それならユウブブ…」


「シィー!それ以上は言っちゃダメ!わかった?」


 ホークが口を滑らせそうになったので慌てて口を塞いだ。誰が聞いてるかわからないこんな場所でおれのスキルを話されると困る。

 コクコクと頷くホークを開放して改めて小声で説明する。


「(ホーク、昨日ギルマスも言ってただろ?バレると大変なんだ。気を付けてくれよ?)」


「ごめん……」


「次から気を付けてくれればそれでいいよ。さて何を受けるかな…」


 改めて依頼を選び直していると…



「君達依頼でお困りか〜い?Eランクの優しい僕達が手伝ってあげよう!

君達Gランクだろ?なぁに気にしないで!先輩としてほっとけないのさ!分け前えは僕達が8君達が2でいいよね?」


「いえ、結構です!」


「ねぇあなた達?お姉さん達とパーティー組まない?ちょうど前衛の子を探してたの。良かったわね!」


「興味ないです。」


「お前達決闘してた奴らだろ?おれたちと熱い冒険しようぜ!熱さがあれば弱くたって平気だ!」


「遠慮しときます…」


 これかぁ勧誘って…うぜぇ……


 いつもはすぐにサナさんの所に向かい奥に案内されるので大丈夫だったが、今日は依頼ボードの前に直接来たので次から次に声をかけられた……


 しかもおれたちをGランクで弱い新人だと思っているのか基本的に上から目線でめちゃくちゃイラっとする。



「ユウキちゃん…」


「あぁもう鬱陶しい!パーティーは組まないって言ってんだろ!見てたんならわかるだろ!おれたちは今依頼を選んでんだよ!」


 その瞬間周りの空気が止まった。



「あっ、マーガレット姐さん!」


「えっ?」


「ウフフ…あたしそんな激しい言葉で攻められたの初めてよぉ〜♪ユウキちゃん奥にいらっしゃ〜い。ホークちゃんもついてくるのよ〜!」


「うん!」


「あっ、いやこれは…」


「やぁ〜ん甘えん坊さんねぇ〜。わかったわぁ〜…」


「えっ、あっ、ヤメて……」


 そう言って昨日と同じように肩に担がれ連れ去られる…



『おい!やっぱりアイツヤバい奴だぞ!もう誘わない方がいいって!』


『あの子昨日ギルマスにもあぁやって奥に連れて行かれてたわよ!問題児なのかしら?』


『何したら何回もあんな風に連れて行かれるの?よかった私普通の冒険者で…』


『関わると巻き込まれそうだな…見ろよもう一人も巻き沿いだぞ…』


『熱さのベクトルが違うようだな…』


『無事に男として帰って来れるか賭けないか?』



 おい!お前達さっきまで声掛けて来てた奴らだよな!助けろよ!確かに断ったけど助けろよ!!!


 パーティー組みたかったんだろ?ここで助けてくれたら好感度爆上がりだぞ!



「フッフフ〜ン♪フッフフ〜ン♪」


 マーガレット所長も鼻歌歌ってないで降ろしてよ…自分で歩くから!これじゃ目立ってしょうがないよ……


 そんな願いも虚しくそのままギルマスの部屋まで連れてこられた。



「お前は騒ぎを起こさないと生きていけないのか?なんでそんな事になってる?」


 マーガレット所長に担がれてるおれを見たギルマスの最初の言葉がこれだ。

 勝手に騒ぎを起こした事にされてその上で酷い言われようだ…まぁ騒ぎは起きてたけど……



「おれは何時も巻き込まれてるんです!自分から騒ぎを起こした事なんてありませんよ!」


「…まぁいい。くれぐれも目立ち過ぎるなよ…シルバ頼む。」


「はい。ユウキ君、ホーク君、昨日の素材の換金ができたよ。今から支払うから確認してね。」


「「はい!」」


 待ってました!今日の一大イベント!これでおれたちも大金持ちだ!



「まず最初に盗賊の発見報酬が6組で60万プライ。

討伐が有名な盗賊じゃなかったから20万プライの合わせて80万プライだ。」


「「おぉ…」」


 盗賊に関してはもう受け入れた。自分から狙おうとは思わないが襲われたらキッチリ対処する事にした。



「次にダンジョン素材の換金結果だ。一から十階層の通常モンスターの素材が合計で23万3600プライ。

ボスの分が合わせて60万2000プライの合計83万5600プライだ。」


「「おぉ!!!」」


 ボスの素材はダブリ分だけギルドに売った。ギルドも知らないモンスターばかりで換金は大変だったと思う。まさかそんな高値になるとは思ってなかった。



「それとは別にデススパイダーとリトルデススパイダーの糸が合計で25万プライそれと残った糸がまだ倉庫にあるから後で取りに来てくれるかな?」


「はい!」


 デススパイダーの糸を20万までリトルデススパイダーの糸を5万まで買い取って貰う事になっていた。

 あの糸はインベントリに入れた事でサラサラ糸とベタベタ糸が別れて収納された。

 なのでこれも売れないか聞いたらサラサラの方なら買い取るよって言ってくれたので今回はサラサラ糸を売った。

 


「全部の合計で188万5600プライだ。確認してくれるかい。」


「スッゲー!ユウキ!大金だよ!」


「あぁ!頑張ってよかったな!これでホークの新しい装備買おうぜ!」


「えっ?いいの?」


「あったり前じゃん!おれが作れたらいいんだけど鍛冶士はまだ育ててないからな…」


「じゃあその内鍛冶士も育てないとね!」


「そうだな。でもついつい後回しにしちゃうんだよな…でもやっぱり強い武具は必要だからな…」


「ユウキ君、考えるのは後にして確認してくれるかな?」


「あっ、はい!ごめんなさい。」


 急いでお金の確認を始める。と言っても10枚で分けてくれてるのですぐに終わったけど。

 インベントリに入れればもっと簡単だけどお金の事なのでちゃんと見えるように確認した。



「確かにありました!ありがとうございます!」


「ありがとうございます!」


「これで換金は終わりだね。さて、それじゃあスキルの書の話をしようか。」


「はい。お願いします」


 インベントリからスキルの書を出す。



「実はもうある程度売る相手の目星はつけてるんだ。」


「もうですか?」


 早ッ!シルバさん仕事早すぎだろ…完璧超人か?



「うん後は話を持っていく段階だね。その前に取り分の話をしてもいいかな?」


 ギルドも仕事だもんな。もちろん最初からただでやってもらおうなんて思っていない。

 おれたちには必要ない物だけど目立ちたくないから売るに売れないしこの3人がいなかったらこうして無事でいられなかったからな。



「はいもちろんです!」


「手数料としてギルドは売上の2割貰いたいんだ。どうかな?」


「えっ?それだけでいいんですか?別に半分ずつでもいいですよ?」


「アハハ…ユウキ君、これは君達が倒してドロップしたスキルの書だよ。僕達は関係ないんだ。

信用してくれるのはありがたいけどそんな事じゃこれから先足元見られちゃうよ?

お金の事はシビアにしといた方がいいよ。」


「あっ、はい…わかりました。じゃあ2割でお願いします。」


 おれの考えてる事をシルバさんはわかってるんだ…ギルドにとって得なはずなのに注意してくれるなんてやっぱり優しいなこの人。



「わかった。じゃあそれで引き受けよう。このスキルの書は預からせて貰うね。

そんなに時間はかからないと思うけどまた売れたら報告するからその時に報酬として渡すよ。」


「わかりましたお願いします!」


「お願いします!」


「かしこまりました。」


「ユウキ、ホーク今日はどうするんだ?」


「依頼を受けようと思います。さっきも依頼ボードで選んでたんですけど勧誘が多くて…」


「そうか。おれの方でもお前達に頼みたいような依頼はねぇな…」


「大丈夫です。もう一回依頼ボードに行って選びます。行こうホーク!」


「うん!行ってきまーす!」


 と言うことで換金が終わったおれたちはまた依頼ボードに向かった。

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