第91話 なりきり師、あざとくなる。

 門で冒険者プレートを門番さんに見せておれたちはクルーシェの街の方へと向かって歩いている。


 おれたちが次に目指す街の中で一番行きやすいのがクルーシェの街だ。

 このメルメルの街からクルーシェ以外の街に行けない事もないが、それには山を越えたりして行かないといけなくて最も目指しやすいのがクルーシェの街だった。


 まぁまだメルメルで何もしてないしまだクルーシェには行かないけどね…。



「さぁ、どうやって探そうかな…?」


 このフィールドのマップは全くの初めてだ。マッピングは一切していない。

 それにマップ内検索を使う為にはマッパーに転職もしないといけないし、誰かにそれを見られてもダメだ。



「やっぱり高い所に登って最初にある程度マッピングするしかないかな…」


「ユウキ、シルバさんみたいに飛んじゃえば?あの星のやつならできそうじゃない?」


「っ!ほんとだ!できるかもしれない!」


 空間支配者のファンネルならシルバさんのシャドーソードみたいな使い方ができるかもしれない!

 なんでそんな事に気付かなかったんだ!めちゃくちゃロマンがあるじゃないか!



「……う〜ん、でも誰かに見られても困るから止めとくよ…。

それより今ってあのファンネル出せるのか?…ちょっと試してみようか?」


「うん!」


 止めとくとは言ったもののホークの指摘が物凄く気になり出して道をそれて木の陰に隠れる…。

 戦士の剣をインベントリに直しファンネルが出るイメージをする。

 ファンネルはインベントリに入れてなかったけど大丈夫かな?



「あっ、出た!」


 出る事には出たが飛んでいない…おれが手で持っていた。



「あれ?おかしいなぁ…なんで持ってるんだろ?この武器前は最初から飛んでたのに…」


 でもこうやって持ってみるとなんか巨体な手裏剣みたいでカッコよくてこれはこれでありだな……



「う〜ん…ダメだ飛ばない。」


「そっかぁ…残念だね。」


「ん〜にゃ、そんな事ないぞ!ホークが気付かせてくれたおかげでまたおれの戦いの幅が広がったよ!この発見は最高だよ!

だって戦士で空間支配者の武器が出せるって事は他の職業でも出せるはずだよ!」


「…どう言う事?」


「じゃあ試してみよっか!」


 辺りとマップを見て周りに誰もいない事を確認する。



「なりきりチェンジ アーチャー」


「アーチャー?」


「で、装備を戦士に変更っと!」


 アーチャーの職業なのに戦士の格好になった。



「ほら!これなら見た目は戦士だろ?でも本当はアーチャーなんだ。これなら誰にもバレずに他の職業の熟練度が上げれるぞ!」


「スッゲー!ユウキ天才じゃん!」


「だろ?でも気付けたのはホークのおかげだからホークも天才だよ!」


「ホントに!?おれも天才かぁ…」


「「プッ!アハハハハ…」」


 バカな事で天才だと褒め合っていたが最後は二人して笑ってしまった。



「じゃあ武器の弓だけ出してこの装備でしばらくはいこうか。」


 剣はインベントリに直さず腰にしまっておく。

 どうやら違う職業だと装備補正が効かないらしく今着けてる戦士装備の攻撃、防御補正は0みたいだ。

 だからファンネルも飛ばなかったし、扱えなかったのだろう。


 ただ、今の格好なら見た目は戦士だ。弓は自力で使えるようにしたって事にすれば多少強引でも押し通せると思う。


 この事に気付かせてくれたホークには本当に感謝だ。



「ねぇユウキ、それで行くのはいいけどそれよりマッピングの事はどうなったの?」


「……そうだった、忘れてた…」


 つい新しい戦闘スタイルにテンションが上がってしまい本来の目的を忘れてしまっていた…。



「やっぱり木に登るのが一番手っ取り早いかぁ…」


 基本的におれは木登りが嫌いだ。

 何年か前はホークが駄々をこねるので仕方なく一緒に登ったりしてたけどできれば避けたいんだよな……。



「ユウキが自分から木に登るなんて珍しいね?じゃあおれも久しぶりに登ろうかな!」


「あっ、でもちょっと待って。その前にやる事があるんだ。」


 また辺りを確認して…よし誰もいない。



「なりきりチェンジ マッパー マップ内検索 虫」


 おれが木に登るのが嫌いな一番の理由…そう、大抵の木には虫がいるんだ…


 マップ内検索で虫を検索したら無数の☆がマップ内で重なり合って出てきた。



「ギャアァァァ……木登り中止!絶対登らない!ってかここは大丈夫か?ホーク避難するぞ!」


「もう、ユウキ虫位で大袈裟だよ。あっ、ほら案外カワイイよ?」


「ギャアァァァ!ばばばば、バカ!何持ってんだよ!汚いからポイしろホーク!」


 気持ち悪ぃ…何だあの虫?見た事ないぞ…危うくホークもろともメテオを使っちゃうところだった…



「仕方ないなぁ!じゃあ木に登れないとなったらどうするの?

あれ?そう言えばユウキ、今マッパーになったんだよね?」


「ん?そうだけど?」


「でも装備変わってないよ?さっきのアーチャー戦士のままだよ?」


「あっ、ほんとだ!気付かなかった…うわぁ可能性がまた広がったな!でも急に何でだ?」


「さっき初めてやったからじゃない?それでできるようになったんじゃないの?」


「もしかして…オープンステータス」



ユウキ


15歳


マッパー


レベル7 熟練度10


HP3869/3869

MP3406/3406

攻撃456

防御465

魔攻428

魔防426

俊敏401

幸運433


スキル


なりきり師▶

戦士▶

格闘家▶

魔法使い▶

ヒーラー▶

アーチャー▶

マッパー▶

重戦士▶

鍛冶士▶

鑑定士▶

契約士▶

結界師▶

空間支配者▶

奴隷▶

伝授▶


EXスキル


創造神の加護 無詠唱 完全鑑定阻害 熟練度10倍 ドロップアップ 生産率上昇 


称号


転生人 なりきり初心者 異常に抗いし者 嗜むなりきり なりきり好き なりきる心得 なりきり上級者 器用ななりきり


マスター称号


戦士 魔法使い マッパー 鑑定士 ヒーラー 奴隷


◆ステータス整理



「やっぱり…新しい称号が2つ増えてるな…。」



 なりきり上級者…初めて上級職に転職した。


 効果:回復速度上昇。



 器用ななりきり…初めて違う職業の装備品を装備した。


 効果:装備セーブ機能追加。



「どっちも地味に嬉しい効果だな。なりきり上級者は空間支配者になった時、器用ななりきりは今増えたんだな…

こんなにいい効果が出るなら初めてシリーズ探してみようかな…」


「ユウキはホントに凄い能力がポンポン増えるね!」


「自分でもそう思うよ。ホントなりきり師様々だよ。」


「で、どうすんの?盗賊探し!」


「あっ、ごめんごめん…そうだなぁ…一旦街に戻って一芝居打つか…。」


「一芝居?」


「うん、任せといて!得意分野だ。」








 〜メルメルの街 門前〜



「おっ、もう帰って来たのか?どうした坊主達?」


「門番さん、おれたち今日初めてこっちの道を通ろうと思ったんだけど知らない道だし盗賊も出るって聞いたから怖くなっちゃって…

だから一回だけでいいからこの門の上から向こうの様子を見ちゃダメかなぁ?」


「あ〜悪いがここは関係者以外立入禁止なんだ。」


「そこをなんとかお願いします!おれたちDクラスだから盗賊退治もしなきゃいけないんだ!でもまだ怖いし…できれば会いたくないんだよぅ…」


「でもなぁ…上から見たって盗賊なんて見付けられないぞ?」


「それはそうかもしれないけど…でもきっと頑張れる気がするんだ!

おれたちもよくわかんないけど急にDランクにされちゃって戸惑ってるんだよぉ…お願いおじさん達助けてよ…」


「おい、どうする?」


「可愛そうだが決まりだからな……」


「絶対に変な事しないから!ホークはここに残すしおれはロープで縛ってもいいから!ちょっとだけ見せてよ!おじさんお願いします。」


「お願いします。」


「…よし、わかった!」


「お、おい…」


「大丈夫だ。でもそっちの坊主はここでおれの代わりに門番をしてもらうぞ?

でこっちの坊主は自分で言った通りロープで縛るからな?飛び降りたりされたらたまったもんじゃないからな!」


「「うん!」」


「ありがとうおじさん!」


「ありがとう!」


 チョロいな…あざとさMAXの子供を演じるなんて今のおれの姿を持ってすれば容易い事。


 ギルマス達がみたら性格が悪いと呆れられるかもしれないけど性格が悪いんじゃない。演技がうまいんだ。


 階段を登り門番さんと一緒に門の上の見渡せる場所に行く。



「誰だその子?」


「あぁ見学者だ。怪しい事はできないようにロープで縛ってるんだ。

新人冒険者でDランクにされてしまったらしいんだまぁギルドの手違いだろう…。一応報告を入れておこうと思う。」


「そうか…災難だったな。でも本来はここは立入禁止だ。絶対他の奴らに言うんじゃないぞ?」


「うん!わかったぁ!おじさんもありがとう!」


「ハハ…見付からない内に早く戻れよ!」


「はーい!」


 さてと、やりますか…



「(遠目)」


 声を限りなく潜めて遠目を使いマッピング開始だ。声を出さなくてもスキルが使えればいいのにな…



「どうだ?盗賊なんて見付けられないだろ?気が済んだか?」


「うーん…そうだねぇ…でも盗賊は見付けられないけど綺麗な景色だね!」


「そうだな。おれもこの景色は大好きだ。こればっかりは門番の特権って奴だなハハハ…」


 よし、マッピング完了!



「ごめんね門番さんワガママ言っちゃって…これ以上迷惑かけちゃ悪いからもう戻るよ。でもありがとう!頑張れる気がする!」


「そうか?でもまだこんなに幼いのに盗賊退治なんて大変だな…ギルドにちゃんとランクが間違ってるって言うんだぞ?」


「うん!わかったぁ!」


 階段を降りてホークと合流する。



「「ありがとうございました!!!」」


「おう、頑張れよ!」


「この事は内緒だからな!」


「「はーい!行ってきまーす!」」


 門番さんにお礼を言い元気よくさっきの場所まで戻って来た。もう門番さんからは見えてないな…。



「はぁ、大丈夫かあの門番…おれがもうちょい強くて敵だったら簡単にあの門落とせるぞ…」


「ユウキにロープなんて意味無いもんね…」


「インベントリに直せちゃうからな。まぁそんな事しないけどな。」


「ユウキところでマッピングはできたの?」


「あぁ!バッチリだ!ちょっと待ってろよパーティーマップを展開してと…マップ内検索 盗賊」


 さっきマッピングしたマップに☆が結構沢山出た。



「結構いるもんだな…全部で50はあるぞ…」


「そうだね、グループで別れてるのかな?それとも別の盗賊団なのかな?」


 ホークの言う通り☆の固まってる所が6ヶ所ある。

 これが同じ盗賊の仲間なのか別の盗賊なのかはわからないし、アジトっぽい場所でもない…でも検索で出た以上盗賊なのは違いない。



「どうするホーク?倒すか?」


「う〜ん…一番近い盗賊を見てから考えようよ!襲ってきたら戦うし襲って来なかったらギルドに報告だけしよう。」


「それもそうだな。せっかく見付けたんだし盗賊に少しでも良心があるのか確かめようか。」


「うん!」


「よ〜し!じゃあ、しゅっぱ〜つ!」


「おー!」


 おれたちは一番近い盗賊に見つかる為に盗賊に向かって行った。

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