新たなる、仲間編。

第87話 なりきり師、昇格する。

 〜メルメルの街〜



「あ〜!ユウキお兄ちゃんとホークお兄ちゃんだぁ!」


 おれたちはメルメルの街に無事に辿り着きこの街で泊まっているガルーダの止り木へと帰ってきた。

 そこの一人娘のミミちゃんが宿屋の前を掃除していた。



「ミミちゃん久しぶり。お掃除のお手伝いして偉いね。」


「うん偉い偉い。」


「へへぇ。ミミちゃんとできるもん!みてて!」


 う〜ん…前に遊ぶのを断ってしまった手前断りづらい…正直おれたちクタクタで休みたいんだけどな…



「何を騒いでるんだい?おや?ユウキにホークじゃないか!戻って来たのかい?中々帰って来ないから心配してたんだよ。」


 この宿の女将のネネさんだ。



「あっ、はいたった今帰って来た所です。ミミちゃんが掃除してたから褒めてたんですよ。」


「そうかい。良かったねミミ。」


「うん!!!」


「あっ、ネネさん部屋って空いてますか?」


「もちろんさ!約束通り誰も泊めてないよ。」


「ごめんなさい随分時間がかかっちゃって…ちゃんと代金は払いますから。」


「気にする事無いさ。お金も今日からの分だけでいいよ。泊まってくれるんだろ?ウチの宿に。」


「「はい!お願いします。」」


 いつも泊まっていた部屋に行きベットに倒れ込む…。



「はぁー!久しぶりのベットだぁ〜!あぁ…もうこれ今日は動けないな…。」


「硬い地面でばっかり寝てたもんね。ベット最っ高!」


 別にこのベットが良いベットを使っていると言うわけではない。どちらかと言えば日本では考えられない程低品質のベットだがこの世界ではこれは標準だ…。

 何より土の地面で寝ないでいいって事に意味がある。


 あっ、そうだ!今度からベットをインベントリに入れてからダンジョンに行こう。

 そうしたらダンジョンでも硬い地面で寝ないでも済む。警戒も交代制にして結界アイテムさえ使えば大丈夫だろ…



「ホークこのままだと寝ちゃうから先に風呂に入っちゃおう。」


「スゥースゥー…」


「あ〜もう手遅れか…仕方無いクリーン。」


 ホークにクリーンの生活魔法をかけてあげて自分にもクリーンを使って俺も寝る。もう起きてられない……。




『ドンドンドン!ドンドンドン!』



「ん?なんだ?人が気持ちよく寝てるのに…」


「ユウキ!ホーク!あんた達大丈夫なのかい!?」


 ネネさんの声がする。



『ドンドンドン!ドンドンドン!』



「はーい!今開けます!ふぁ〜…」


 寝ぼけながらもドアを開けるとやっぱりネネさんがいた。



「どうしました?そんなに大声で…」


「どうしましたってあんた達が出てこないから心配で…大丈夫なのかい?」


「? 大丈夫ですよ?ちょっと寝てただけなので。あっ、ごめんなさい夕食ですか?遅れちゃいましたか?」


「いいやもう昼だよ!昨日の夜も、今日の朝も呼びに来たけど出てこなくてあたしも他に仕事があるからこの時間にもう一度声をかけたのさ…。」


「昼!?」


 そんなに寝てたの?ほぼ丸一日寝てるじゃないか…ってホークに至ってはまだ寝てるし…



「相当疲れてたのかい?でも声をかけても何の反応も無いとこっちも気が気じゃないから気を付けておくれよ。」


「ごめんなさい。爆睡してたみたいで全然知らなかったです。ご迷惑おかけしました。」


「朝食を残してあるからホークも起こして食べに来な。二度寝するんじゃ無いよ!」


「ありがとうございます。すぐに行きます!」



「グガ〜……グガ〜…」


「スゲーいびきだな…おれもよくこんな中で寝てたな…ホーク、ホーク起きて!」


 ホークの身体をゆすり起こしにかかる。



「んん…もうちょっと寝るぅ…」


「ダメだって!寝過ぎだよ!夜寝れなくなっちゃうぞ!それにネネさんがご飯を用意してくれてるんだ早く行こうぜ!」


「んん…ご飯食べる…」


 寝ぼけながらもムクッと身体を起こした。昨日から何も食べてないし寝ててもお腹がすいたんだろう。



「よし!じゃあ起きて!早く食べてギルドに行こう!」


「うん……」


 なんとかホークを起こしご飯を食べおれたちはギルドに移動した。



「サナさんこんにちは。お久しぶりです。」


「サナさんこんにちは!」


「ユウキさん、ホークさんお久しぶりです。昨日からギルマスがお待ちですよ!」


「アハハ…ちょっと思ってたより疲れてたみたいで…。」


 別に約束はしてなかったけど待っててくれたんだ?

 まぁ一応今回ダンジョンに入ったのは依頼って事になってるもんな…。



「お二人が来たかどうかの確認も何回もされてしまいました。それこそ回数を重ねる毎に不機嫌になられてしまって…」


 は?不機嫌?



「ユウキ!ホーク!来るのが遅ぇんだよ!いつまで待たせるつもりだったんだ!?」


 ギルドに響き渡るかのような大声で奥からギルマスが叫んでこっちに来てる… 


 周りの冒険者もこっちに注目するし…最悪だ…



「ごめんなさいこれには深い理由があって…」


 二人共深い眠りについてたんだ…。


「ちょっと奥まで来い!」


 そう言って両肩におれとホークを担ぎ、拉致られてしまった。



「えっ、ちょ…誰か助けて!」


 おい!さっきまで見てたくせに何で目をそらす冒険者達!この薄情者集団がぁぁぁ!






 奥に連れて行かれ椅子に座らされる。



「何でこんなに遅いんだ?おれはずっと待ってたんだぞ!」


「えっ、でもおれたちすぐ来るなんて言ってませんよ?」


「バカ!あの流れだとギルドに寄るのが普通だろうが!何してたんだよ?」


 うわ怒ってるよ…これ寝てたなんて言ったらもっと怒っちゃうな…



「ずっと寝てごも…」


「アハハ…」


 ホーク、なんでも正直に言えばいいってもんじゃないぞ…聞かれたか?



「そうか…おれがずっと働いてる間にお前らは寝てたのか…」


 あちゃ〜間に合わなかったか…



「おれたちも驚いたんです。まさか丸一日近く寝てたなんて思ってなくて…だからワザと来なかったんじゃないんですよ。」


「フン!まぁいい。疲れてたのは本当だって知ってるからな。改めてギルマスとして今回の事に礼を言う。助かったありがとう。」


「ど、どうしたんですか急に…」


「この街に住む一人としての礼だ。お前達があのダンジョンを元に戻したって事は誰も知らない。知られる事の無い真実だ。せめて知ってるおれが感謝するのはおかしくないだろ?」


「は、はぁ。でもギルマス達がいなかったら鎮静できなかったですよ?おれたちだけだと多分死んでましたし…」


「そうだとしてもだ。おれがお前らに感謝する事は変わらない。ありがとう。」


 ギルマスが頭を下げて感謝してくれる。

 ヘヘッ感謝されるのって悪くないな…ホークも同じ事を思ってるんじゃないかな?



「「どういたしまして!」」


「さて、約束通りお前達の冒険者ランクを上げるぞ。おれ個人の意見としてそれぞれの実力やステータスでいけばユウキはBランク、ホークは頑張ればCランクだ。だが流石にそこまでは上げられない。」


 へぇ〜個人評価結構高いな…おれたちまだGランクだぞ?ホークも転生人じゃないのにもうCランクの評価されてる…頑張ってたもんな。



「ユウキおれCランクだって!ユウキはBランクだって!凄いね!」


「ギルマス個人の評価だぞ。本当には上がらないからな!Eランクまで上げてもらう約束でしたもんね。二人共同じランクでお願いします。」


「あぁそれなんだがDランクまで上げていいか?」


「へっ?」


 なんでだ?そんな簡単にランクって変えていいのか?Eランクは約束だったから上がるとは思ってたけど、Dにまで上げていいのか?他の冒険者がうるさいんじゃ無かったのか?



「そんな事してギルドは大丈夫なんですか?」


「あぁ大丈夫だ!ギルマス権限って奴だ誰にも文句は言わせねぇよ。」


 ゴリッゴリの職権乱用だ。



「…でも何でDランクまで上げてくれるんですか?」


「あぁその説明も必要だな。その前に二人共冒険者プレートを渡せ。先に昇格手続きをやらせてしまおう。」


「あっ、はい。」


 インベントリから冒険者プレートを出す。ホークの分もおれが預かってるので無くす心配はない。



「確かに預かった。」


 ギルマスが冒険者プレートを受け取るとそのまま部屋を出ていった。


EランクのはずだったのにDランクまで上げてくれるって何か理由があるのかな?

 もうプレートは預けちゃったし嫌でもDランクになっちゃうんだろうな。ギルマスの説明が面倒臭い理由じゃなきゃいいけど…

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