第44話 なりきり師、宙に浮く。
「はい、これで全回復!ただ体力的にはまだ疲れてるだろうから少し休憩な。」
戦闘が終わったホークにヒールとマジックディバイドを使ってあげHP、MP共に全回復しておいた。
「ありがとうユウキ!」
「ったく無茶するよ…今度からはどっちかの戦闘が終わったら一緒に戦おうな!
そんなに強くないとは言ったけどレベル的には間違いなく格上なんだから。」
「わかった!でもおれでも上位種のモンスターを倒せたんだよね!」
「ゴブリンなんかで満足してる暇は無いぞ〜!この先もっと敵が強くなるんだから覚悟しろよ〜!」
「アハハわかってるって!打倒魔王!だもんね!」
ホークの自信もついたみたいだし結果的には一人で戦って良かったのかもしれない…。
ただメタリカで突っ込んで行った時はビックリしたなぁ…メタリカは無敵になる訳じゃないのによく突っ込んでいけるよな…
「ユウキ近くに敵はいないか?」
「大丈夫です。モンスターマップでも確認してますしこのミラージュバリアで外からは見付けられないはずですよ。」
結界師熟練度5で覚えたミラージュバリア。蜃気楼を起こし周りの風景と同化する結界だ。
蜃気楼の原理はよく知らないがまぁ便利なスキルだし使えるんだから知らなくても問題ない…。
「ユウキちゃんは本当に多才よねぇ〜!あたしもなりきり師になって色々お着替えしたいわぁ〜。」
「アハハ…」
マーガレット所長が思うなりきり師の利点ってそこなの?今のはただ単にコスプレしたいって言っただけじゃない?
「やめてください。その趣味の悪い装備品だけでも胸焼けしそうなのにこれ以上恥を晒さないでください。」
「シルバちゃん、それはあたしに恋してるって事かしらぁ〜?でもダメ!あたしは皆のマーガレットなのよぉ〜!」
「どこをどう聞き間違えたらそんな事になるんですか!その耳と頭は呪われてるんですか!?」
マーガレット所長の言ってる事は確かに意味不明だ…。
でもそれに的確にツッコめるなんてやっぱりこの二人は名コンビなんじゃないだろうか…
おれは怖くてツッコめないもん……
「あっそうだ!マーガレット所長、シルバさんちょっと聞きたい事があるんですけどいいですか?」
「あたしの美貌の秘訣かし…」
「なんだい?ユウキ君」
無視していいのかな…?
「えぇっと…ギルドってどんな素材でも買い取ってくれるんですか?」
「流石にどんな物って訳にもいかないかな。価値の無い物は買取れないし逆に高価すぎる物はギルマスと相談しなきゃいけないよ。
まぁこの辺で取れる様な物だと大抵は買取可能だと思うけどね。急にどうしたんだい?」
「いえ、さっきホークがジェネラルゴブリンを倒した時にマッパーの熟練度が上がってマテリアルマップってスキルを覚えたんですよ。」
「マテリアルマップ?聞いた事無いな…どんなスキルなんだい?」
「う〜ん…簡単に言うと薬草や鉱石なんかのある場所がわかるってマップです。
種類まではわからないみたいですけどね…。」
マッパー熟練度7で覚えたマテリアルマップ。
薬草や鉱石、素材などの場所を教えてくれるマップだ。
これがあれば冒険者ギルドで買い取りしてくれる限り金には困らないだろう…。
安全に金儲けできるスキルがついに出てしまった。
「マッパーにそんなスキルがあったなんて初めて知ったよ。
でもこんな事が知れ渡ったら今いるマッパーが大変な事になるよ。ユウキ君、これも黙っておいた方がいい。」
「大変な事?マッパーの人にとってはチャンスなんじゃないですか?」
「いいかい君と違って普通のマッパーは戦えないんだよ。
レベルを上げようとすれば戦闘職のパーティーに入ってモンスターを倒してもらうか自分で旅をしてかなりの範囲のマップを埋め尽くさなければならない。
悪い冒険者がそのマテリアルマップの存在を知ってしまったら無理矢理同行させて危険な目に合わされてしまうマッパーが出ないとも限らないんだ…。
そしていくつまでレベルを上げたらそのスキルが出るかもわからない。
このスキルが出回ってないのもそう言った理由があったのかも知れないね。」
考えてみればそうか。マッパーはレベル上げが大変だし熟練度6の時点で超一流のマッパーと並んでるんだもんな…。
おれはまだそのスキルは出てないけどマーガレット所長が言うにはステータスの様にオープンにできるマップがあるって話なんだよな。
って事は過去にはそこまで辿り着いたマッパーがいたって事だよな。
それなのに知られてないって事は広まると他のマッパーにとって不都合な事態になると思ってマテリアルマップは広めなかったのかも知れないのか……
「わかりました。じゃあこれも黙っておきます。」
「そうしてくれるかい。あぁごめん素材の買い取りの話だったね。
薬草や鉱石なんかの素材はいつでも大歓迎さ!むしろ集めて来てくれる方がギルドとしては助かるよ。」
よし言質取ったぞ!これで食いっぱぐれは無くなったな!
「ありがとうございます!買取所によった時はよろしくお願いします。」
「ユウキちゃん、限度はあるからねぇ〜!常識の範囲で持って来ないとダメよぉ〜。」
「アハハ…わかってますって!」
くっそ大量に持ち込んでも換金できないのか…それならインベントリに置いておいて様子見しながらだな。
ホークの休憩も十分にとれたのでおれたちはまた七階層への階段を目指し歩き始めた。
途中適度に出てくるゴブリンのパーティーはどれも弱くさっきみたいな上位種パーティーはあれからは出てきていない。
マッパーの熟練度もそこそこ高くなってきたのでどうやらゴブリンの経験値だけでは上がりにくくなってしまったようだ…。
そうこうしている内に七階層への階段へと到着し今回はボス戦無しで次の階層へ降りる事ができた。
〜アイズダンジョン 七階層〜
「七階層もまた森か…」
「ユウキ君、このダンジョンは五階層毎にしかエリアは変わらないんだ。だから十階層までは森エリアだよ。」
「そうですよね。五階層までそうでしたもんね…。
って事はもしかしてこの階層もおれたちが先頭ですか?」
「よくわかってるじゃねぇか!と言うよりこの階層と次の階層はマッパーが存分に役に立つんだ。
さぁ気合い入れて行けよ!方向は向こうだ!」
マッパーが役に立つ?迷路にでもなってるのかな?ってか六階層も木ばかりの森だったしほぼ迷路だったか…
「わかりましたよ…行こうホーク。」
「うん!」
ギルマスの言った方向に進んで行くとモンスターマップに反応があった。数は一体だけ。この階層の敵はなんなんだろう?
「モンスターが一体だけでいます。どうしますか?」
「そりゃ勿論倒すだろ!そうだな…最初はユウキお前が倒すんだ。
いいかどんな敵だったとしても油断するなよ!」
「へっ?敵の情報教えてくれないんですか?おれこの階層のモンスター知らないんですけど…」
「何でも聞けば教えてもらえると思うなよ!
お前らは誰も行った事の無い未踏のフロアにも今後行くんだろ?この階層はその予行演習だと思え!」
「そんなめちゃくちゃな…」
また急にスパルタスイッチ入ってるよ…確かに三十五階層以降は誰も行った事無いそうだし情報は無いだろうけどまだまだ先の話だし今は別によくない?
「グタグタ言わず行ってこい!ホークは危ないからおれたちと一緒に行動だ!」
は?今危ないって言った?絶対言ったよね?え?おれはどうなるの?危ないんだよね?ね?
「(このオッサンいつか絶対ぶっ飛ばしてやる…)」
「あ?何か言ったか?」
「! 何も言ってません!行ってきます!」
地獄耳かよ…てかおれ今声に出してないぞ…
モンスターマップの示す場所まで約10メートルまで来た。だがモンスターの姿はまだ見えない。
「場所的にはあの木だな…って事は敵はあの木の裏か。」
どんなモンスターか知らないで戦うって結構不安だな…あの木に隠れれる大きさって事みたいだから大きさはそんなに無いんだろう。
なるべく音を立てないようにゆっくりと近付いて行く。
「ブハッ!」
残り約3メートルまで近付いた時に顔面に鈍い衝撃が走った。
「痛ってぇ…な、なんだ?」
殴られた?でも何に?幸い大したダメージにはなっていないが急に攻撃されたぞ…
まさかこの木はトレント系のモンスターなのか!?
「でも動いて無かっ…ぅぐッ…」
首に何かが巻き付いて締め上げおれは空中に浮かんだ。
風景に変化は何もない。首の周りにはブニブニしてる感触はある。だが見えない。
「しょ……ゔ…だ。」
マッパーで武器を持っていなかったので格闘家の初期スキル掌打で力一杯殴ってみた。
「はぁはぁはぁ…」
巻き付いていた物から開放され地上に落とされた…。
なるほど…どんな敵でも油断するな。か…
あのギルマス本当いい性格してるよ!
「わかる…わけ…ねぇだろ!」
〈シャーーーー!!!〉
モンスターは木の裏にいた訳でもトレント系のモンスターでもなく完全に透明になれるカメレオンだった。
掌打でダメージを与えた事で透明化が溶け紫色のカメレオンが姿を現した。
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