第43話 なりきり師、見守る。

 ホークいつも以上に真剣だったな…


 思い詰めすぎて心配だけどホークがやるって言ってたしおれはホークを信じるしかないか…。



「助けなくていいのか?」


「ホークが倒すって言ってるんです。だったらおれはホークが敵を倒すのを待つだけですよ。

それよりギルマス、もしかしてホークに何かしましたか?」


「そんな怖い顔するなよ。おれはただこの先冒険者を続けるなら一人でも戦える様になれってアドバイスをしただけだ。」


「だからあんなに意地になってたのか…どう考えたってそんなのまだ早いでしょ!ホークはまだレベル1桁台なんですよ!」


「レベル1桁の冒険者がこんなダンジョンに足を踏み入れてる事が異常なんだよ!

だが今お前達にはどうしてもついてきてもらわなきゃいけない。

ホークにも言ったがこの先の階層次第ではトラップにかかって誰かと一緒に戦えなくなる状況になったっておかしくないんだ…お前も心構え位はしとけよ。」


「ったくあんまりホークをけしかけないでくださいよ。

おれだってその内怒りますからね…。

それにしても転移トラップか…罠系関連のシーフも今後育てないといけないな…」









 〜ホークVSジェネラルゴブリン〜


 ジェネラルゴブリンの巻き起こす風がより一層強くなっている…。

 ユウキにはおれが倒すって言ったけどどうやってあれを止めよう……



「メタリカを使うと動けないしな…斬撃連波もあの風じゃ消されそうだし……

かといって突っ込んで行ったってあんなのおれには破れないしただ返り討ちにあうだけだもんな…」


 ユウキみたいに遠距離攻撃があれば簡単に倒せるんだろうな…

 ってダメだ!ないものねだりしてる場合じゃない!

 探せ突破口!剣でもスキルでも身体でも使える物は全部使ってアイツを倒さないと…



「何かないか?何か……」


 周りを見回しても何もない。ダンジョンが作り出している木があるだけだ。

 使えそうなアイテムが落ちてるなんて奇跡は起こるわけないか…



「あっ!」


 あるじゃん使える物が一杯!なんで忘れてたんだろ…前にユウキが岩場を破壊して戦える場所を広げたんだった…。

 次に通った時は元に戻ってたけど破壊すること自体は可能なんだ!


 この森の木を切ってアイツにぶつければあの攻撃止まるんじゃないか?



「そうと決まれば!っオラッ!」


 すぐ近くにある木に向かって剣を振る。


 スパッと切れたらよかったのに少し切れ込みが入っただけで止まってしまった…。



「堅い…でも普通に斬れないならスキルを使えばいい!フンッ!」


 途中で止まってしまった剣を力ずくで引き抜き次の行動に移す。



「ダブルスラッシュ!」


 残りMP59。


 さっきとは違い左右から斜めに斬りかかる。スキルを使っただけであんなに堅かった木が切れた。



「よし!行けぇ!」


 相変わらず風を巻き起こしながらこっちに向かっているジェネラルゴブリンにさっき切った木が倒れていく。



「止まれぇぇ!!!」


 だがおれの作戦は上手くいかなかった。

 倒れて行った木はジェネラルゴブリンの風を止める事ができずそのまま上へと巻き上げられてバラバラになっていった…。



 「ッ!!」


 まだだ!まだ諦めるな!一つだからダメだっただけだ!



「ダブルスラッシュ!ダブルスラッシュ!」


 近くにある木をスキルを使って倒す。



「今度は2本だ!これで…」


 別方向からジェネラルゴブリンに向かって木を倒してみるが結果はさっきと同じで倒れていった木は粉々にされてしまった…。



「そん…な…」

 

 精一杯考えた作戦だったのに…やっぱりおれはユウキと違って一人で戦う事なんてできないのか…



「くそっ!くそっ!くそっ!」


「ホークまだ戦闘中だぞ!下を向いちゃダメだ!」


「ユウキ…」


「顔を上げて!敵から目を離しちゃダメだ!

何か色々考えながら戦ってるみたいだけど動きが全然らしくないよ…。

ホークは思ったままに戦う方が絶対強いよ。」


「思ったままに?…」


「それとも一人で倒すの諦めちゃうか?」


「!!!」


 そうだおれが一人で倒すってユウキに言ったんだ…。作戦が一つ上手くいかなかったからってまだ終わった訳じゃないんだ!

 おれはいっつもユウキに励まされてはがりだな…。



「諦めてなんかやらないもんね!見てろよユウキおれがあんな奴パパっと倒してきてやるんだから!」


「そっか、それなら休憩しながら待ってるよ!頑張れホーク!」


「……ありがとうユウキ。」


 最初からおれに小難しい戦法なんて向いてなかったんだ。

 作戦を考えるなんて頭を使う事はユウキに任せればいい。



「おれが思ったままに戦うか…この状況じゃそれが一番難しいんだよね!」


 でももういい!やってやる!



「斬撃連波!」


 キンキンと予想していた通りに弾かれてしまった!


 残りMP35。



「次!ダブルスラッシュ!」


 さっきと同じ様に木を切り倒す。


 だけどさっきとは違い倒れていく木におれは飛び乗り斜めになっている木を駆け上がる。



「動けないなら動かなきゃいい!」


 倒れきる前にジャンプしてジェネラルゴブリンの真上にきた。

 風の影響は地面より少ない。これならいける!



「メタリカァァァァ!!!」


 全身が鉄で覆われ身体全体が重くなる。その勢いのまま垂直落下しついにジェネラルゴブリンに辿り着いた。



「止まれぇぇぇぇぇ!!!!!」


 おれの右足と、ジェネラルゴブリンの回してる槍で激しく火花が飛び交う。



〈ゴブゴォォォ!〉



「うぉぉおおお!」


 パキッと言う音が響きジェネラルゴブリンの持っている槍が折れた。


 おれも同時にメタリカがとけお互いに吹き飛んだ。



「痛て…」


 メタリカで防御しながら突っ込んだのでダメージはあったもののなんとか起き上がれた…。


 一方ジェネラルゴブリンはまだ倒れている。



「ホーク!トドメだ!行けぇ!」


 ジェネラルゴブリンの所に駆け寄り斬りかかる。



「うぉぉぉ!双刀斬!!!」


 さっきの衝撃で装備が砕けたのか奴の上半身の装備が無くなっていた。

 なのでおれは迷わずにジェネラルゴブリンの首をはねた。



〈ゴブ…〉



 そう一言だけ呟きジェネラルゴブリンは消えていった。



「はぁはぁはぁ…勝った…。」


「ホーーーク!!!」


「うわっ…痛いよユウキ!」


「やったな!一人で倒したな!」


「何かテンション高くない?おれはもうダメ疲れたぁ〜…」


「いつもホークにおれがやられてるんだぞこれ!今日は逆だけどな!ハハハ…」


「わかった謝るから!ちょっとだけ休ませて。」


「ハハ…ホークお疲れ様。」


「ユウキ…待っててくれてありがとう。」


 残りMP9。ギリギリだったけどちゃんと一人で戦えてよかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る