第40話 なりきり師、初ゴブリンと戦う。

「ホークまずおれがアイツらを分断する。おれも終わり次第加勢に行くからそれまで踏ん張ってくれ!」


「早くしないと終わらせちゃうからな!」


「頼もしい限りだよ!アースラインボム!」



 職業が格闘家になっても魔法は使える。やっぱり先制攻撃で遠距離から攻撃できるってのはいいな。



『ボーーーーン!!!』



〈〈〈ゴブーッ…〉〉〉



 円になって固まっていたゴブリン達に地中からの爆発は避けれなかったようだ。

 中心で爆発させたつもりだったが木が邪魔で少し早かったのか少し手前で二体程に直撃してしまったようだ。



【格闘家の熟練度が2に上がりました】

【スキル 連打掌を覚えました】



「悪いホーク、タイミングミスった…。二体倒したけど他の奴は余りダメージが無いかもしれない。」


「数が減ったならその分楽になるから大丈夫!普通のゴブリンは任せて!」



〈ゴブッ!ゴブゴブッ〉



 急に地面が爆発しゴブリン達は何が起こったのかわかっていないみたいだ。

 あのパーティーのリーダーはどうやらマジシャンみたいだな…。

 雑魚敵には変わりないしさっさと終わらせて次に進まないとな。



「よし、行こう!」


 格闘家としての戦い方も経験しておきたいし危なげなさそうなら素手で戦ってみるか。

 おれ達は姿勢を低くしてゴブリンに向かって走り出した。



〈ゴブゴブー!〉



 おれ達の接近に気付いたのかマジシャンゴブリンが他のゴブリンに指示を出す。


 まずゴブリン三体がこっちに向かって走ってきた。持ってる武器は木の棒だ。コイツらはホークに任せる。



「頼んだ!」


「任せて!」


 おれは普通のゴブリンを無視してアーチャー、マジシャンゴブリンへと向かう。

 アーチャー、マジシャン共にもう攻撃段階に入っていて弓を引いていたり魔法の準備をしていた。


 普通のゴブリンをホークに任せてるんだこいつらはキッチリおれが倒さないとな。



「ダークネス」


 アーチャーゴブリンの視界を奪い狙いを定められない様にする。



〈ゴブッ!ゴブッ!〉



 突然視界が奪われたアーチャーゴブリンはパニックになり誰もいない方に矢を飛ばした。


 そのタイミングでマジシャンゴブリンの準備が完了したのか火の魔法を撃ってきた。



「森で火魔法撃つなよ!火事になるだろ!マジックバリア!」


 結界師で覚えたマジックバリアを使ってみる。おれを中心に四角形の結界が張られる。

 マジックバリアにマジシャンゴブリンの魔法が当たったがそのまま音もせずに消えていった。



「へぇ、結界ってこんな感じか…うん、広さも5、6人位なら寝転べそうだし結構便利かも…。」


 相手の魔法が弱いってのもあるかもだけどおれのステータスが上がればもっと強力な結界が張れるはずだ。


 結界師…結構使える職業じゃないか!



〈ゴブ!?〉



 自分の魔法が不発に終わった事にマジシャンゴブリンは驚いてるな。ちょっとの間そのまま戸惑ってろよ!


 おれはまずアーチャーゴブリンに狙いを決めた。再び走り出し距離を詰めた。

 格闘家ってどうやって戦うんだっけ?とりあえず殴ってみるか!



「えい!」



〈ゴッ…〉



 右手でアーチャーゴブリンの左頬を殴ってみたけどあれ?そんな威力あるの?なんと言うか身体が自然と動いたぞ。


 アーチャーゴブリンは結構なスピードで後ろの木まで飛んでいった。

 ただ、まだ倒せてないので起き上がる前に追撃しないと!

 今度は走って勢いをつけ敵のちょっと手前でジャンプしそのまま飛び蹴りをしてみた。


 アーチャーゴブリンはそれに耐えれずにそのまま消えていった。



「スキル使わなくても倒せるんだ…なんか久しぶりだなこの感覚…。」


 そうだよ!このダンジョンのせいでスキルを使って戦うのが普通になってたよ。

 こんな初めてのダンジョンでスキルに頼らないと進めないのがおかしかったんだよ!


 徐々に難易度が高くなっていってそれにつれておれも強くなってって冒険がしたかったのに!



「あのクソ勇者のせいで台無しだ!」


 マジシャンゴブリンにしてみれば完全な八つ当たりだがおれは勇者パーティーへの怒りをマジシャンゴブリンにぶつけた。


 マジシャンゴブリンの腹を殴り少し上に浮かせおれも一緒にジャンプし足を上げかかと落としの要領でマジシャンゴブリンを地面に叩きつけた。



〈ゴ…〉



 マジシャンゴブリンが力尽き消えていく。



【格闘家の熟練度が3に上がりました】

【スキル 回転蹴りを覚えました】



「ふぅ〜!スッキリした!格闘家も悪くないな。おっとそうだホークまだ戦ってるかな?」






 〜ホークVSゴブリン三体〜



「頼んだ!」


「任せて!」


 ユウキがこのゴブリン達を素通りしていくが、ゴブリン達は追いかけようとしてる。


 おれはユウキとゴブリンの間に入り込んで邪魔をした。



「行かせないよ!お前らの相手はおれがする!」



〈ゴブゴブ!〉



「何が言いたいのかわかんないよ!悪いけど経験値になって貰うよ。おれたち十階層に急いでるんだ。」


 ゴブリン三体か…どうやって倒そう?そういやおれ一人で複数相手に戦うのって初めてだな。

いっつもユウキがいたしユウキが範囲攻撃を持ってからは先にある程度倒しちゃうからな…。



「ハハッ、練習台にはちょうどいいや!」



〈〈〈ゴブーー!〉〉〉



 ゴブリン三体が一斉に飛びかかって来た。



「遅い!」


 おれの俊敏はさっきアイアンスコーピオンを倒した時のレベルアップで200を超えた。

 コイツらがどのくらい強いのかは知らないけどいつも慎重なユウキが鑑定しなかった位だ。多分弱いんだろうな。


 現にコイツらの動きは遅くて攻撃は当たる気がしない。



「まずは数を減らさないとね!」


 ゴブリン達の後ろに回り剣で刺してみる。



〈ゴ…〉



 えっ?これで死ぬの?ホーンゴートの幻影みたいだな…



「うーん…練習台にはならなかったな…ダブルスラッシュ!」



〈ゴ…〉〈ブ…〉



 なんかあの肩透かしだった決闘を思い出しちゃったよ。あれアイツらってなんて名前だったっけ?まぁいっか…。



「ホーク、ユウキと離れて戦ってみてどうだった?」


「あっ、ギルマス!相手が弱かったから全然大丈夫だったよ!」


「そうか。これから先ダンジョンに潜ってると必ずトラップが出てくる。

その時の罠次第ではパーティーがバラバラになってしまう様なトラップもあったりするんだ。

一人では戦えませんなんて事は通用しない。常に一人でも戦える様にしとけよ。」


 ダンジョントラップか…おれがひっかかってユウキに迷惑かけないようにしないとね…。


 そうだ!後でユウキにも教えてあげよっと!



「わかった!気を付けるね!」


「おっ、ユウキの方も終わったようだな…。」


「ホーク大丈夫だったか?」


「よゆー!めちゃくちゃ弱かったよ!」


「そっか!じゃあ先を急ごう。ギルマス行きましょう!」


「そうだな。ならさっきの隊列で行くぞ。ついてこい!」


 おれたちはまたギルマスの案内のもと七階層へと続く階段を目指しだした。

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