第41話 なりきり師、上位種に会う。
あれからゴブリンのグループが出る度に戦わされ格闘家の熟練度も5まで上がり
打点肘は肘による一点突破型の攻撃で円月蹴は蹴り飛ばす威力が上がるスキルだ。
どちらも単体攻撃だがスキルが増える分には大歓迎だ。その内使う時も来るだろう…。
それにしてもこの階層は平和だな…。敵が全然脅威にならない。
多くても10体程度だしほとんどが普通のゴブリンだ。毎回おれとホークが戦っているが何の問題もない。
と言うより今までの方がおかしかったんだ。バイホーンゴートに関しては仕方なかったにしてもクイーンブーンビーに関してはこっちから攻撃しなければ普通に素通りできたはずだったのに…
まだ数時間前なのに結構前の事に感じるな……
「ユウキ、ホーク、また出たぞ!行ってこい!」
「またですか?たまには倒してくれたっていいじゃないですか!おれたちばっかり戦ってますよ!」
「なぁに言ってんだ!新人の間はとにかくレベル上げだ!雑魚の相手を新人がしないでどうする!それともボスを二人で戦うか?」
ボスだって戦わせてたじゃないか!手伝ってはくれてたけどどうせボスか出たらまた戦わせるくせに…
「わかりましたよ!やればいいんでしょう!やれば!」
「それでいい!よし行ってこい!」
格闘家も慣れてきたしゴブリン程度なら戦闘職じゃなくても倒せるよな…
いっその事非戦闘職に転職しちゃおうか。
「なりきりチェンジ マッパー」
「ユウキどうしたの?」
「相手も弱いし格闘家に経験値を振るより非戦闘職を育てようと思ってね。
今回はおれがやるからホークは見てていいよ。」
あいつら毎回固まって集まってるからスキルさえ使えば簡単に倒せるはずだ。
今までは格闘家の練習もしたかったから控えてたけど多分あれなら中級魔法で全滅させられるんだよな…。
「ブリザードドーム!」
ナイトも、マジシャンも、アーチャーも、勿論普通のゴブリンも巻き込みあそこにいたモンスターグループ全員をブリザードドームに閉じ込めた。
誰一人としてスキルの外には出てこれずやはり上位種でなければ中級魔法ならうまく当てれば一撃みたいだった。
まだソルジャーには出会っていないが出会わずに済むならそのまま七階層に行ってしまいたい。
【マッパーの熟練度が6に上がりました】
【マッピングの範囲が拡張しました】
「おお!ラッキー!マップ」
今回結構広がってるじゃん!さっきまで20メートルだったのに今は50メートルまでマッピング効果があるぞ。
「ユウキ、何がラッキーなの?」
「ん?あぁマッピングの範囲が広がったんだよ。なんだこれなら先に熟練度上げとけばよかったよ!」
「広がったってどの位?」
「おれを中心に前後左右上下50メートルだよ。モンスターマップを出してれば50メートル以内の敵なら見付けられるよ。」
「ユウキ君、50メートルのマッピング能力なんて超一流のマッパーと呼ばれる存在だよ。
君、本当に他の人に能力を知られちゃダメだよ!」
超一流のマッパーか…って事はこのレベルのマッパーがいる事はいるんだな…。
非戦闘職で熟練度6相当のレベルまで上げるって大変だったろうな…。
「大丈夫ですよ。街に戻ればおれはただの戦士に戻りますから。
街でスキルを使うにしてもちゃんとバレないように使います。」
「できれば使わない方がいいんだがな…だがそれは街に帰ったら気をつければいい。今は先に進む事だけに集中しろ。
ユウキ、50メートルの索敵ができるならお前がホークと先頭を歩け!
おれよりもモンスターの発見能力は上だろうからな。方向がズレればおれが教えてやる。気楽に行け!」
確かにこの木が入り組んだ森で50メートル先まで見るなんて難しいか…
「わかりました。モンスターを見付けた場合は教えるので戦うのか戦わないのかは決めてください。」
「わかった。」
隊列の順番を変え順調にギルマスの言う方向に進み少したった頃にモンスター3体の反応がモンスターマップに出た。
「モンスターの反応があります。数は3体です。」
「ゴブリンのパーティーにしちゃ少ないな…シルバ少し様子を見てきてくれ…。」
「わかりました。ユウキ君、場所は?」
「この先に約50メートル行った所です。」
おれはシルバさんに指で方向と距離を伝える。
「ありがとう。少し待っててくれるかい…」
そう言って音もなくシルバさんが偵察に行ってしまった。さすがアサシンだな…
「ゴブリンが3体だと何か変なんですか?」
「変と言うか違和感を感じるな…。ゴブリン種は大体5体以上で行動することが多いとされるモンスターだからな。
まぁおれが気になっただけなんだが一応はシルバに偵察に行ってもらったんだよ。」
熟練の冒険者の勘って奴かな?おれはゴブリンが3体だった事に別に違和感なんて感じなかったもんな…
少ないなら楽に倒せるな位しか思わない。
「どうだった?」
ギルマスが急に呟くとシルバさんがまた音もなく移動して帰ってきた。
「ジェネラル、ウィザード、ソルジャーの3体でした。鑑定したので間違いありません。」
「これもダンジョン活性剤の効果って奴か?
ジェネラルにウィザードなんてこのフロアでは出ていいモンスターじゃねぇぞ……」
さっき聞いた六階層のゴブリンの種類を超えてきたな…
ジェネラルにウィザードって明らかにさっきまで倒してたゴブリンの上位種だよね?……
あれ?ジェネラルゴブリンとウィザードゴブリンがこの階層のボスなのかな?
「少し遠回りして気付かれないように進みますか?いちいちボス戦やってたら時間もかかっちゃいますし…」
「ん?ジェネラルとウィザードがボスな訳ないだろ!あいつらは上位種なだけでボスの器じゃねぇぞ!
お前らでも十分倒せるぞ!それにゴブリンのボスつったらキングゴブリンしかいねぇだろ。」
…やっぱりそうなっちゃうよね…まだ姿は見てないけど大体予想はしてたよ…。
ジェネラルとウィザードが出たって事に希望を託して聞いてみたけどギルマスもキングゴブリンがボスだって思ってたって事か…
「ボスじゃないんですね…そうですか…でも上位種ですもんね!?倒すの手伝ってくれたりとかは…?」
「しねぇな!ユウキ、ホーク、行ってこい!」
「よ〜し!ユウキ行こう!」
なんでホークも乗り気なんだよ…あぁもう!あんまり活性剤の影響がなさそうな平和な階層だと思ってたのに!
ボス以外に種類が増えるなんて聞いてないぞ!
「今まで戦ってきたゴブリンとはレベルが違うからな!気を付けろよ!」
本当に気楽に言ってくれるよ…大変な思いをするのはおれたちなのに…
ゴブリンの上位種達の所に気付かれないように少しづつ近付き相手の姿が見える所までやってきた。
木の影に隠れながらまずはどんな敵なのか観察してみる。
今まで戦ってきたゴブリン達とは明らかに違う。身体の大きさ、装備、全てが強くなっていそうだ……
「鑑定」
ソルジャーゴブリン
レベル12
HP240/240
MP12/12
攻撃69
防御31
魔攻1
魔防1
俊敏49
幸運1
ウィザードゴブリン
レベル15
HP159/159
MP123/123
攻撃22
防御34
魔攻109
魔防83
俊敏16
幸運1
ジェネラルゴブリン
レベル18
HP399/399
MP73/73
攻撃103
防御96
魔攻43
魔防54
俊敏63
幸運1
「う〜ん…多種多様って感じだな…」
「ユウキ魔法で倒せそう?」
「他のゴブリン達は鑑定してないからなんとも言えないんだけど多分倒せそうなのはソルジャーだけかな?
ホークはジェネラルとウィザードだったらどっちと戦いたい?どっちもそんなに強くないんだけどさ…」
この位の強さならギルマスが言ったように今のおれたちなら問題なく倒せるだろう。
「じゃああの槍持ってる方がいい!」
「ジェネラルだな…あの中で一番強いけど大丈夫か?」
「大丈夫!大丈夫!任せてよ!」
「そっか、わかった!じゃあ行こうか!いつも通りまずはおれが魔法を打ち込むからな!」
「うん!」
今の職業はマッパーだけど…まぁ大丈夫かな。
「ブリザードドーム!」
猛吹雪がジェネラル達を包み込む。
「行くぞ!」
ブリザードドームの魔法の効果がきれジェネラル達の姿が再び現れる。
〈ゴブゥァ!!!〉
「なっ!」
完全に不意打ちで魔法を使ったにも関わらずウィザードが防御魔法を使ったのかジェネラルとウィザードゴブリンはピンピンしていた。
ただソルジャーゴブリンは消えていたのでウィザードが守ったのは自分とジェネラルゴブリンだけだったようだ。
「ホーク想定してたより全然ダメージを与えられてない!注意してくれ!」
「りょーかい!斬撃連波!」
ホークがジェネラルゴブリンに斬撃連波を使いそれを合図にホークとジェネラルゴブリンの戦闘が始まった。
ウィザードゴブリンも魔法を発動するつもりなのか目の前に小さな魔法が出現し始めた。
奇襲攻撃は失敗しちゃったな…ゴブリンのくせになかなか便利なスキルを持ってるようだし油断しないようにしないとな…。
「ストーンスパイラル!」
拳大の大きさの石が5個現れその5個の石が円を描く様に周りながらウィザードゴブリンに向かって飛んでいく。
〈ゴブゴ!〉
ウィザードゴブリンは唱えていた魔法をキャンセルして防御魔法を使ってストーンスパイラルを防御した。
「なるほどな防御魔法は発動が早いのか…。」
〈ゴブゥ!!〉
「それでブリザードドームも耐えたって訳だな。まぁわかってたら戦い方なんていくらでもあるんだよ。」
転職してもいいんだけど今回は戦うマッパーで行ってみますか!
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