第39話 なりきり師、初階層に行く。

 スキルの書を使って空中に現れた魔法陣がホークの中に全て入りきった。



「うん大丈夫!スキルも覚えたみたいだしレベルアップの時と同じ様に教えてくれたよ。」


「よかった…。何のスキルだったんだ?」


「試しに使ってみるよ!見てて!メタリカ!」


 新スキルを使ったホークの全身が鉄化していく。



「うわっ…身体重っ!」


「鉄?」


 鉄になるスキルって事はアイアンスコーピオンと関係があるのか?アイアンスコーピオンも鉄だったし…



「ほぅ、メタリカが出たのか。」


「知ってるスキルですか?」


「勿論だ。それは騎士や聖騎士なんかの職業が覚える防御技だからな。守りに特化したスキルだよ。」


 聖騎士が覚えるスキルか…。そう考えると中々の当たりスキルなのかな?

 ホーク自身も防御スキルを持てたのならおれもホークも今まで以上に戦えるかもしれないな…。



「ギルマスこれ動き辛いよ!こんなんで戦えるの?」


「動く様なスキルじゃねぇよ!敵の攻撃から身を守る為のスキルだ。

ただ完全に防げる訳じゃねぇ!さっきのアイアンスコーピオンを思い出せば意味はわかるだろ?」


「アイアンスコーピオン?あ〜なるほど…」


「盾を持たないホークにはいいスキルなんじゃないか?危なくなったらメタリカを使えばいいんだし。

さっきの感じだと魔法じゃ無くて特技だから詠唱もいらないんだろ?」


「そうだね。今まではユウキがバリアーを張ってくれたりしてたから大丈夫だったけど、おれも防御技覚えたしこれからは一人でも戦える様になったって事だよね!?」


「う〜んまぁそうだな!それでもおれは多分防御技をホークに使うと思うけどな…。

結界師の新しいスキルもたくさん覚えたし。」


「あっ、そっか!さっきの戦闘で熟練度が上がったんだね。おれも戦ってないのにレベルアップしたんだった!

ユウキはどんなスキルを覚えたの?」


 ホークもレベルアップしてたんだ…。パーティーリングもつけてるから経験値は入ってくるもんな。

 それに階層ボス2連戦なら上がってもおかしくないか…。



「多分バリアーより広範囲を守れるけど設置型のスキルって感じかな?

職業通り結界を張るって感じのスキルだよ。使ってみないとわかんないけどな。」


「へぇ〜、じゃあユウキがいればおれたちは結界アイテムいらないね。」


「これから奥深く潜る時は一応は準備するつもりだけどな。」


「いい心がけだ。ユウキ、ホーク、いいかいくら強くなっても慢心はするなよ。

命のやりとりは時に常識が通用しなくなる時もある。」


「「はい!」」







 おれたちは余り疲れてなかったので少しだけ休憩したあと六階層に降りた。


 休憩の時にギルマスとマーガレット所長の職業について聞いてみたのだが


 ギルマスの職業は『ウェポンマスター』


 マーガレット所長は『デストロイヤー』


 と、なんとも物騒な職業だった。

 ギルマスの職業ウェポンマスターは特別なスキルこそ他の職業程覚えないがレベルが上がるにつれて装備出来る武器が増えていくそうだ。


 マーガレット所長のデストロイヤーは文字通り破壊者。己の体一つで全てを破壊する職業なのだそうだ。

 おれも格闘家を育てていけばいつか転職できるようになるのかもしれないな。


 二人ともが上級職で相当に珍しい職業だそうだ。

 なんでメルメルの街にそんな強い人達が集まってるんだろうと思ったがあまり個人的な事に首を突っ込むのも良くないと思い聞くのは辞めておいた。







 〜アイズダンジョン六階層〜



「ここが六階層…」


 おれとホークは初めて降りてきた階層だ。1〜5階層と違いここからは森のエリアみたいだ。

 木が無数に生い茂り道と言う道は無い…。



「ここからはボスは出来る限り無視して最短距離でいくぞ!

階段までの地図ならおれが持ってきてるからお前らはしっかりついてこい。行くぞ!」


「「わかりました!」」


 この木々の中を通らないといけないのか…結界師だと魔法しか使えないし戦闘面でちょっと不安だな……


 育てるって決めたばかりだけど適材適所ってもんがあるからな…よし転職しよう。



「なりきりチェンジ」


【なりきる職業を選んでください】


★戦士 剣士 格闘家 ★魔法使い ヒーラー アーチャー テイマー 鍛冶士 鑑定士 マッパー 空間支配者 重戦士 ランサー シーフ ギャンブラー 契約士 料理人 奴隷 魔導師 道化師 結界師 サポーター 商人



「格闘家を選択!」


 結界師の格好から上下紺色のアンダースーツみたいにピタッとした服に変わり肘、膝、胸に簡易的な軽鎧がついていた。

 そして手には指先が出てるクローブが装備されている。格闘家の場合は靴にも攻撃力があるみたいだ。



「防御力無さそうだな…まっ、スキル使えば大丈夫か。ステータス」



ユウキ


15歳


格闘家


レベル3 熟練度1


HP1205/1205

MP903/1036

攻撃165

防御153

魔攻157

魔防149

俊敏126

幸運161


スキル


なりきり師▶

戦士▶

格闘家▶     掌打

魔法使い▶

ヒーラー▶

アーチャー▶

マッパー▶

重戦士▶

鍛冶士▶

鑑定士▶

契約士▶

結界師▶

空間支配者▶

伝授▶


EXスキル


創造神の加護 無詠唱 鑑定阻害 熟練度10倍 ドロップアップ 生産率上昇 


称号


転生人 なりきり初心者 異常に抗いし者 嗜むなりきり なりきり好き


マスター称号


戦士 魔法使い


◆ステータス整理



「やっぱり結界師じゃあんまりステータス伸びないんだな…まぁしょうがないか。

あれ?新しい称号が出てるぞ!なになに?」



 なりきり好き…なりきりチェンジで10種類の職業に転職した。


 効果:モンスター撃破時熟練度微増



 熟練度アップだ!めちゃくちゃいい称号じゃないか!

 熟練度10倍のEXスキルがあるから微増だとしてもその10倍貰えるってことだよな?これは嬉しいぞ!


 つか、もう10種類もなりきりチェンジしたんだ?

 称号取得には熟練度とか関係なさそうだし今度まとめて転職するのもありかもしれないな…。



「ユウキ君!ボサッとしてるとはぐれちゃうよ!しっかりついて行かないと!」


「あっ、すいません!すぐ行きます!」


 ステータスに集中しすぎてシルバさんに注意されてしまった…。

 森の中を移動する際に一列になって進む事になったんだ。

 ギルマスが一番前次にマーガレット所長、ホーク、おれ、シルバさんの順でここからは攻略していく。


 六階層の敵はゴブリン系が出てくるそうだ。普通のゴブリン、ナイトゴブリン、アーチャーゴブリン、マジシャンゴブリン、中でも一番強いのがソルジャーゴブリンなんだそうだ。

 ただここにもボスがいるはず。プライからは聞いてないけどゴブリンのボスなら予想は大体できてしまうよな…


 そんな事を考えてると先頭を歩くギルマスが止まった。どうやら敵を見付けたようだ…。



「7体だ。ゴブリン5マジシャン1アーチャー1だ。」


「ホークちゃん、ユウキちゃん、頑張ってねぇ!」


「「えっ?」」


 おれたちだけでやるの?さっきここからは戦闘に参加するって言ってたじゃん!試験は終わったんだよね?



「皆で戦わないんですか?」


「雑魚ならお前らでやれるだろ!ほら急げ早く鎮静剤を使わないといけないんだろ?時間ねぇぞ!」


 それがわかってるなら倒してよ!この人達地味にスパルタ辞めないよな…



「わかりましたよ!ホーク行くぞ!おれがマジシャンとアーチャーをどうにかする。普通のゴブリンは任せた。」


「りょーかい!」

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