第37話 なりきり師、転生理由を話す。

 さっきの戦いで四階層のマッピングが3分の2程できてしまった。

 おれはマップ埋めや図鑑埋めは自分でやりたい派なんだがまぁ今回は仕方ないか……


 今は前来た時と一緒で四階層と五階層の階段で一休みしている。

 バイホーンゴートがいなくてもホーンゴートだけで群れてくるのでおれが階段で休む事を提案した。


 その休憩中におれは悩んでいた…。



「どうしたのユウキ?さっきから難しい顔してるけど…」


「う〜ん…次の職業何にしようか迷っててさ…。」


「あれ?魔法使いは?」


「さっきのバイホーンゴートで終わったよ。」


「えっ?そうなの?なんで?教えてよぉ〜!」


 今回のバイホーンゴートでホークのレベルは上がらなかったみたいでおれのレベルが上がったかどうか聞いて来なかった。

 なのでおれも今まで黙っていた。言ったら見せるまで止まらないからな…



「こうなる事を予想してたからな!あの時はヘトヘトだったし…。」


「ねぇユウキ!ステータス見せて?ねぇ早く!」


 聞いてないな…まぁいいや。休憩もできたし回復もしたし。



「わかったよ!オープンステータス!」




ユウキ


15歳


魔法使い


レベル3 熟練度10


HP1160/1160

MP943/971

攻撃159

防御150

魔攻155

魔防147

俊敏116

幸運152


スキル


なりきり師▶  ファイアボール

戦士▶     ウォーターショット

魔法使い▶   サンダーウィップ

ヒーラー▶   ウインドサイズ

アーチャー▶  アイスニードル

マッパー▶   ストーンスパイラル

重戦士▶    バインドプラント

鍛冶士▶    ライトアロー

鑑定士▶    ダークネス

契約士▶    メガフレイム

空間支配者▶  ガトリングウォーター

伝授▶     ライトニングボルト

        トルネードプリズン

        ブリザードドーム

        アースラインボム

        ウッドゴーレム

        ☆詠唱時間4分の1短縮

        ★メテオ


EXスキル


創造神の加護 無詠唱 鑑定阻害 熟練度10倍 ドロップアップ 生産率上昇 


称号


転生人 なりきり初心者 異常に抗いし者 嗜むなりきり


マスター称号


戦士 魔法使い


◆ステータス整理



 感想としては魔法使いはとにかくスキルが多かったな…。

 一つの熟練度を上げるだけでスキルを二つ覚えたりってのがほとんどだったからな。

 だが熟練度10で現れた効果の詠唱時間4分の1短縮は無詠唱のEXスキルを持つおれには完全に死にスキルだ…。

 正直いらないから変わりに他の魔法を覚えてほしかったな…



「でたー!ユウキの爆上がりステータス!いつ見てもスッゲー!アハハハハ…」


「いつ見てもってまだ二回目だろ!」


「どれどれ…おれたちにも見せろよ!」


「僕も興味があるよ。」


「ボーイの成長…うふッ楽しみッ♪」


「ちょっと…皆さん…押さないで…」


 自分達にも見せろとギルマスが右から肩を組んできて左からはシルバさんが覗き込み、後ろにはマーガレット所長がいて逃げ場がなかった。


「なっ…」


「えっ?」


「まぁ」


「お、おい、ユウキ?昨日見た時よりステータスが大分増えてるようだが?」


「はい、レベルが上がりましたから。」


「ユウキ君、これは魔法使いのスキルを君は全部使えるって事かい?」


「はい、熟練度が上がりましたから。」


「ユウキちゃん、あなたレベルが上がるとこれだけ強くなるって知ってたのか?」


 あっ、またマーガレット所長とゴロズ所長が混じってる。驚いた時は素が出ちゃうんだなこの人…。



「いえ、それは知りませんでした。でもさっきのレベルアップで自分なりに予想はできましたよ。」


「聞かせてくれるかしら?」


「多分ですけどおれのレベルアップのタイミングは熟練度の限界がきた時です。

なりきり師として、その職業になりきった。って事でなりきり師のレベルが上がるんだと思います…。


ステータスに関してはこれも予想ですがおれの初期ステータスがHP、MPが100その他が10でした。

戦士の熟練度が限界に達してレベル2に上がった時に多分HP、MPが200その他が20上がったんだと思います。

そして今回魔法使いが限界に達してレベル3に上がった時にHP、MPが300その他が30上がってこんなステータスになったんだと思います…。」


 おれの予想通りならこのデタラメなステータスの上昇の辻褄もあう。


 今度プライに会った時に聞いてみないとな…。



「それってつまりレベルが上がるにつれてステータス上昇率も増えていくって事なのかい?」


「そうだと思います。上昇率に限界があるのかないのかはわかりませんけどね。

プライがなりきり師は晩成型の職業だって言ってました。」


「本当に驚いたわ。今の上がり方で相当な上がり方してるわよ?転生人がここまで凄い能力だったなんてね…」


「全くだ。転生人の詳細が知れる事なんて普通はないからな。

ユウキ、本当に気を付けろ。転生人だって事は王族や貴族にだけは知られるなよ。」


 やっぱり王族や貴族に見つかったらまずいのかな?その辺はどの異世界でも同じみたいだな…。



「わかってます。そんな面倒そうな連中と関わるつもりはありませんから!おれはただの農家の息子ですし。」


「いや、貴族ってもんは冒険者にも目ざとくどこからか情報を仕入れてる。

冒険者として活躍していれば接触してくる可能性もある。

貴族の偵察の者がお前達の決闘を見ていてもおかしくはないんだ…。」


「へぇー。でもまぁおれは外では下級職の戦士ですしスキルもビッグシールドまでしか使わなかったので雑魚同士の決闘として終わったんじゃないですか?」


「そうでもないかも知れないよ。登録して4日の新人冒険者が10年以上冒険者をやってたパーティーに圧勝してしまったんだ。

他の冒険者から噂が広まってどんな尾ひれがついてしまうかわからないからね…。

目を付けられないよう行動する事は心がけていた方がいいだろう…。」


「そんなものですか?わかりました。気を付けます。冒険者活動の邪魔をされたくないですからね。」


「そうだ!ユウキさっきの話を詳しく説明してくれるか?」


「あぁ〜やっぱりそうなっちゃいますよね…まぁ他にも転生人がいるし隠す事でもないんですけど他の人に話すと不安を与えてしまうだけなのでここだけの話にしてください。」


「何?何ぃ〜?なんの話ぃ〜?」


「ゴロズ、まぁユウキの話を聞こう。勿論他言無用だ。シルバもいいな?」


「わかりました。」


「ユウキ、契約は必要か?」


「大丈夫です。ただいい話ではないですけどね…

皆さんには初めて話すんですけどまずおれがこの世界に来た理由から話しますね。

おれがこの世界に転生した理由は魔王を倒してほしいとプライに頼まれてきました。」


「「魔王!!???」」


 魔王なんて聞かされたらやっぱり驚いちゃうよね…



「どう言う事なのユウキちゃん!魔王だなんておとぎ話の作り話でしょ?」


「ゴロズ落ち着け。今はユウキの話をしっかり聞こう。質問はその後だ。」


「…わかったわ…」


「続きを話しますね。今この世界に魔王が復活しようとしています。と言うより魔王の復活はもう始まっています。

プライが言うには邪神によってまず悪魔が復活しそして魔王の復活を手伝っているそうです。

その悪魔がいるのがダンジョン最下層らしいです。」


「ダンジョン最下層に…?」


「悪魔達は協力して結界を張ってプライからの干渉をできなくして今も着々と魔王復活に力を注いでるそうです。

なのでおれはまずダンジョン最下層に行って悪魔を倒して魔王の力を弱めなきゃいけないんです。

ただ、この間自分でも調べたんですけど何故かどのダンジョンも最下層の情報が無くって…」


「それは誰も行った事が無いからだ。」


「えっ?」


 誰も行った事無いってなんで?勇者パーティーとかいるんだし転生人だって他にもいるんだろ?なんで誰も行った事が無いんだ?



「このダンジョンで言えば三十五階層のボスを倒しても次へ進む為の扉が開かないんだ…。


ダンジョンはボスを倒せば次の階層へ繋がる階段の扉が開く事は知ってるよね?だけど階数はまちまちだけどある所からはどのダンジョンも開かないようになる階層があってそれを通称【進めずの扉】って言うんだ。

僕の昔のパーティーも行った事はあるんだけどやっぱり開かなかったよ…」


 シルバさんってそんな奥深くまでダンジョンに入る様な冒険者だったのか…

 それにしても進めずの扉?なんだそのいかにも怪しい扉は…



「十階層から進めないダンジョンや十五階層から進めないダンジョンもあったりするぞ。

まぁ全て共通して言えるのは次に進む為の扉が開かないって事だけどな。

だから今はどのギルドも進めずの扉の階層ボスをダンジョンのラスボスって事にしてるんだ…。」


 まぁ進めないんならラスボスでもおかしくないのか?でも階層がバラバラなのも気になるし…

 プライが言ってるんだから悪魔は確実にダンジョンにいるしその扉を開けて進めないとダンジョン最下層に行けないって事だよな?

 えぇ…どうしよ…何か話してる限り悪魔のせいにしか思えないんだけど……。



「その進めずの扉っていつから進めないんですか?昔は通れたとかって記録があったりしませんか?」


「おれが産まれた時にはもう進めずの扉は常識だったからな…

もっと古いとなると引退した冒険者か過去の文献を調べるかエルフとかに聞かないとわからないな…」


 仮に悪魔の結界のせいだとすると昔から悪魔がいたって事なのか?

 今度プライに会った時に聞いてみないとその辺はわかんないな。

 えっ?でも魔王復活に何年かけてんの?それだけ力を注いでるって事だよな?



「すいませんが調べてもらってもいいですか?おれじゃどう調べたらいいかわかんなくて…

もちろんおれも自分にできる事はやるので…。」


「わかった。お前の言う通りこのダンジョンの最下層に悪魔がいるんならおれたちにとっても他人事じゃねぇからな。

絶対に復活する魔王が少しでも弱まるってんなら協力は惜しまないぞ。」


「よろしくお願いします。」


 ギルマス達には進めずの扉の事を調べてもらっておれたちは進めずの扉に行ってみなきゃな。

 とりあえずの方針はこれで決まりかな?だとしたらあの職業にならないとな。



「ホーク次の職業決めたよ!」


「何?何?何にすんの?」


「さっき新しく増えたんだ。なりきりチェンジ」



【なりきる職業を選んでください】


★戦士 剣士 格闘家 ★魔法使い ヒーラー アーチャー テイマー 鍛冶士 鑑定士 マッパー 空間支配者 重戦士 ランサー シーフ ギャンブラー 契約士 料理人 奴隷 魔導師 道化師 結界師 サポーター 商人



「結界師を選択!」


 なりきりチェンジをした事で右手の杖が金の錫杖に変わりローブも白のマントへと変わった。

 中の服も白い服とパンツに変わり腰にはウエストポーチがついていた。



「へぇ〜結界師だから和装かと思ったけどこの世界では違うんだな…」


 勝手なイメージで結界=和。みたいに思い込んでたよ。

 でも日本人なら多分そうだよね?おれだけじゃないはずだ…。



「結界師?」


「そう。結界師!もしかしたら進めずの扉は悪魔の結界が原因で進めないのかもしれないだろ?

結界師ならもしかしたら極めれば結界を張るだけじゃなく解除するスキルも覚えるかもしれないし覚えなくても熟練度を上げればなりきり師のレベルが上がるからどっちに転んでもおれの得になるんだ。

次のアイアンスコーピオンは倒し方もわかってるし結界師をゆっくりでもいいから育ててみようと思ったんだ。」


「へぇ〜。ねぇギルマス?普通の結界師って戦えるの?」


「ん?まぁ戦闘職では無いが鑑定士やマッパーよりは戦闘はできるな。

実力しだいだが敵の足止めや妨害なんかを手伝ったりするって感じか?

すまん…結界師はうちのギルドにはいないし結界アイテムもあるからよくは知らないんだ…。

王都にでも行けば会えるかもしれないな…。」


 王都か…いつか行かなきゃいけないんだよな…おれは全部のダンジョンに行って悪魔を倒すんだもんな。

 でも王族とかには見つからないようにしないとな。



「数が少ないならしょうがないですよ!それにおれは他の職業のスキルも使えますから大丈夫です!

休憩もしたし準備もできたしそれじゃあ五階層に行きますか!」


 アイアンスコーピオンなら1回倒した。前と同じ事をできれば負けない。

 いや、今は中級魔法も覚えたし前より余裕をもって戦えるはずだ。



 おれたちは階段での休憩を終え五階層へと進んだ。



「モンスターマップ」


 見付けた。今回は階段から階段までだがマッピングしているのですんなりと見つける事ができた。



「まっすぐ進めばアイアンスコーピオンがいます。どうしますか?」


「お前らは前に倒したんだろ?その時はどうやったんだ?」


「前はサンダーウィップで動きを止めて旋風で飛ばして、ファイアボールで温めてアイスニードルで冷やしてから斬って倒しました。」


「何だそのめちゃくちゃな戦い方は…よく倒せたな…」


「転生前の知識チートって奴ですよ。それより問題なければこのまま行っても大丈夫ですか?」


「真正面から行くのか?」


「多分近付くだけで気付かれますしどっちみち雷魔法で動きを止めるので真正面からでも大丈夫だと思います。」


「わかった。好きにしろ。」


 おれたちは次の階段までの道をまっすぐ進み半分を少し過ぎた頃にアイアンスコーピオンが動き出した。



「向かってきます!皆さん警戒を!」


 距離にして約300メートル。なんでこんなに遠いのに気付くんだ?確か前も走って来たよな…


 考えてる間にもどんどん距離は縮まる。



〈ギャオォォォ!〉



「サンダーウィップ!サンダーウィップ!」


 動いてる敵にはライトニングボルトって外しそうなんだよな…雷だから追跡するかもだけど今回は確実に当てにいった。



〈ギャオォォォ!!!〉



「なんでッ?」


 サンダーウィップを二発当てたのにアイアンスコーピオンは止まらない…。



「ゴロズ!ホークを!」


「わかってるわぁ〜!」


「うわっ!」


「うおっ!」


 おれはギルマスにホークはマーガレット所長に抱えられアイアンスコーピオンの突進を免れた…。



「えっ?なんで止まらないんだ?前は一発でも止まったのに…」



〈ギャオォォォ!!〉



 アイアンスコーピオンの身体はおれのサンダーウィップのせいかバチバチ言ってる…。


 当たってるよな?バチバチ言ってるもんな?



「ユウキ、お前ら本当にアイアンスコーピオンを倒したのか?」


「倒しましたよ!素材も持って帰って渡したでしょ!」


 『なんで?』それしか言葉が出てこない…。


 今は結界師の職業になってるけどおれの魔力もあの時より大分上がってるし威力としては前より強いはずなのに…



「まさか…」


「なんだ?どうした?」


「確認するのでもう一度おれを抱えたまま攻撃を避けてください。」


「それは構わねぇが…何をするんだ?」


 今までおれがずっと疑問に思って気になっていた事が点と点が線で繋がった気がする…。

 もしおれの思った通りだとしたら本当にあの勇者パーティーは疫病神だ。



「鑑定!」


アイアンスコーピオン


レベル25


HP876/911

MP186/186

攻撃121

防御306

魔攻73

魔防186

俊敏62

幸運35



「やっぱりそうか…あんのクソ勇者!」


 おかしいと思ってたんだよ!三階層、四階層のボスが五階層のボスより強いなんて!



「何かわかったのか?」


「あのダンジョン活性剤…思ってたより相当厄介な代物ですよ…。」


「どう言う事だ?」


「使った瞬間はダンジョンを進化させて強くしてしまうってのはプライから聞いたんで間違いないんですけど多分その後は時間の経過によって強化していく効果もあるみたいです…。

あのアイアンスコーピオンはおれ達が前に戦ったアイアンスコーピオンより倍以上レベルが高くなって格段に強くなってます!」


 これはかなりまずいぞ…プライは三十五階層までボスが出現したって言ってた…

 三十五階層のボスまで強化されてるとなるとどれだけの強さになるんだ?

 一度倒さないと消えないとも言ってたし少なくとも早く鎮静剤を使わないと手に負えないぞそんなの…


 後鎮静剤を使って弱体化すればいいけどな…



「なんだと?それは本当か?」


「あくまで予想です。でも限りなく確信に近い予想ですけどね…

急いで十階層に行かないと取り返しがつかなくなるかも知れません!」


「わかった。ユウキ、ホーク、悪いが試験はここまでだ!

ゴロズ、シルバ、ここからはおれたちも戦闘に参加するぞ!」


「わかりました。」


「まっかせてぇ〜!」


 おれたちが戦うと時間がかかる。悔しいけどせめて足手まといにはならないようにしないとな…



「おれたちはどうすればいいですか?離れた方が邪魔にならずに戦いやすいですか?」


「何言ってんだ?お前達も戦うに決まってるだろ!試験は終わってもここはダンジョンだぞ!全員で戦うんだよ!ほら来たぞ!」



〈ギャオォォォ!!!〉



 えぇ…おれたちも戦うの?三人いればこの辺の階層は楽勝なんじゃないのか?


 あぁもう…とにかくできる事だけ頑張ろう…

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