第36話 なりきり師、VSバイホーンゴート3。

「さぁ決着をつけようぜ!バイホーンゴート!」


 バイホーンゴートの分身能力もギルマス達のおかげで無効化できている。

 後は本体であるこのバイホーンゴートを倒せばこの階層はクリアだ。



「ホーク!最後まで気を抜くなよ!」


「ユウキこそね!」



〈ヘ゛ェ゛ェェァァァ!!〉



「ダークネス!」



〈ベッ!〉



 反応がさっきよりも早い?モンスターの癖に学習してやがる…

 ダークネスをさっきと同じように顔を狙って打ったのに今度は避けられてしまった…。


 MPの残りもヤバくなってきたぞ…視界を奪ってから回復しようと思ってたのに…

 バイホーンゴートにはおれの使う魔法の方が厄介なのかホークではなくおれから視線を離さない。



「ホーク!一瞬でいい!バイホーンゴートの隙を作ってくれ!」


「わかった!斬撃連波!」



〈ベッ!ベッ!〉



「まだまだぁ!斬撃連波!」



〈ベッ!ベッ!〉



 ホークの斬撃連波をことごとくかわし全然当たらない。

 ギルマスが教えてくれたバイホーンゴートの視野が広い事と俊敏が高い事を考慮すると当然か…


 ホークが時間を稼いでくれている内におれはマジックポーションを飲みMPを回復する。



「トルネードプリズン!」


 球体状に吹く風の檻に閉じ込める魔法トルネードプリズン。

 閉じ込めるだけでなく中に入れた者を切り刻む事のできる魔法だ。



「チッ、外したか…」



〈ヘ゛ェェェ!〉



「うぐっ…」


「ユウキ!!!」


 カウンターで打ってきたバイホーンゴートの角がおれの左肩に突き刺さった…。

 ホークに気を抜くなって言っときながらおれが攻撃をくらってしまった……



〈ヘ゛ェ゛ェェァァ!!!〉



 チャンスとばかりにバイホーンゴートが突っ込んでくる。ダメだ回避が間に合わない…



「バリアー!なりきりチェンジ 重戦士!」


 なりきりチェンジで重戦士に転職した事で装備が変わる。

 右手に持っていた杖が黒い剣に変わり左手には黒い大盾。頭には黒いヘルムをかぶり黒い全身鎧に纏われた。



「あ゛ぁぁぁぁ…」


 左肩に刺さった角はローブから鎧への装備変更で折れてしまった…。

 だが鎧の中で残った分がまだ刺さっていて鎧になった事で余計に食い込んでしまった。


 左手はそのせいで動かない。おれは右手の剣を捨て右手に盾を持ち衝撃に備えた…。



〈ヘ゛ェェェッ!〉



 バイホーンゴートは突進では無く前足を高く上げ勢いよく振り落とし踏みつける攻撃をしてきた…。



「ぐあっ…」


 バリアーは簡単に破られ盾に上から体重をかけられる。

 力を入れると左肩に響くのでうまく力が入れられない…



「ユウキから離れろぉぉぉ!!!」



〈ベェェ…〉



 ホークが来てくれたおかげでバイホーンゴートが離れた。



「ユウキは早く回復を!時間はおれが稼ぐから!」


「ありがとうホーク!なりきりチェンジ 魔法使い!」


 まずは角を抜かないと…

 重戦士のままでは鎧があって無理なので魔法使いにまた転職する。



「ふぅ……ん!ぐうぁぁぁ……」


 覚悟を決め傷口に指を突っ込む。


 バカみたいに痛ぇ…肩に食い込んだ角を指でしっかり掴み引っ張る。



「アァアァァ!!!……ハァハァ…抜けた…」


 日本の医療ではこんな荒療治ありえないだろうな…

 力づくで肩から角を引き抜き回復魔法を使う。



「ヒール、ヒール、ヒール。」


 みるみる内に傷が塞がり血も止まる。そうだ!ホークは…



「ハハッ…すげぇ。」









 〜ユウキ回復前のホーク〜



「ユウキは早く回復を!時間はおれが稼ぐから!」


「ありがとうホーク!なりきりチェンジ 魔法使い!」


 これがバイホーンゴート…。今までの敵より全然強いな…能力もヤバイしまさかここまでとは思わなかったな…

 あの時ユウキを一人で行かせなくて本当によかった…。



「お前の相手はおれだ!」



〈ヘ゛ェェ…〉



 一人で戦うなんて初めてだ…。でもユウキの回復までおれがなんとかしないと。

 ユウキなら回復魔法もあるしインベントリにはポーションだってある。多分一分もあれば復活してくれるはずだ…。

 おれがその一分を稼げればまた2人で戦える!



「斬撃連波!」


 当たらなくてもいい。とにかくユウキとの距離を取らせないと!



〈ヘ゛ェェェェ!〉



「ヒィ〜、あっぶねえ…」


 コイツ突っ込んでくる時こんなに速いの?…ユウキ今までよく戦ってたな…

 おれの方がユウキより俊敏は100以上高いけどこれを何回も避けるのは難しいぞ…



「でもそんな事言ってらんない!」


 よく見ろ、動きを読め、チャンスを逃すな、集中しろ。

 アイツが見せた攻撃は突進、角飛ばし、後ろ足キック、踏みつけ。

 何をしてくるかしっかり観察するんだ…。



〈ヘ゛ェェェ!〉



「当たるか!」



 角を飛ばしてきたがはっきり見えた。

 角は本体程速くない!これならおれは避けられる!



〈べベェ…ベェェェェ!〉



 今度は突進…と思わせてからの踏みつけか! 



「ちゃんと見えるぞ!双刀斬!」


 突進に備え横に回避したがその後に踏みつけのモーションに変わった。

 足を振り上げた時におれは更に横移動し逆にバイホーンゴートの横っ腹に双刀斬をおみまいした。



〈ヘ゛ェ゛ェェェェ!!!〉



 おっ、どうやらおれに狙いを決めたみたいだ。よかった!

 これでコイツはユウキを狙わないぞ!おれだってちゃんと戦えるんだ!



「来い!バイホーンゴート!」



〈ヘ゛ェェェ!!ヘ゛ェェェ!ヘ゛ェェェ!〉



 バイホーンゴートは連続で角を飛ばしてきた。



「そんな事もできるんだ!でもおれには当たんないよ!へへん何発でも打ってきてみろ!」



〈ヘ゛ェェェェェ!!!〉



 今度は突進だ。



「そぉら!」


 避けれるギリギリまで引きつけて回避しながらも一撃をいれる。



「トルネードプリズン!」


 突然バイホーンゴートが風に包み込まれた。



「ユウキ!!」









 〜回復後ユウキ〜



「ハハッ…すげぇ。」


 バイホーンゴートと互角に戦ってる。俊敏の低いおれにはできない戦い方だ。

 いつもおれが隙を作ってから攻撃してもらってたからな…ホークのこんな戦い方は初めて見る。


 ギルマスの言ってたようにおれがホークの成長の邪魔をしてたのかもしれないな…



「まずはマジックポーションを飲んでからだ。」


 マジックポーションもこれで5本目だが激しい戦闘をした後なので今は特に苦にはならない。

 それに消費の重い中級魔法ばっかり使っていたので400回復したはずのMPがもう残り少ない…もっと効率良く戦わないとな……



「よし、準備完了!」


 マジックポーションを飲み干し応急処置も終わった。


 これでホークの援護に回れるぞ!


 バイホーンゴートは完全に狙いをホークに絞りおれをもう気にしてない。

 今なら避けられずに魔法を当てれるはずだ。後はホークとのタイミングをおれが合わせれば……



「今だ!トルネードプリズン!」


 ホークが突っ込んでくるバイホーンゴートに一撃を入れ距離が離れた今がチャンスだった!



「ユウキ!!」



〈ベァァァァァ…〉



「ありがとうホーク!時間稼ぎ助かった!」


「治ったんだよね!?よかった……」


「あぁバッチリだ!ライトニングボルト!」


 中級魔法の連続攻撃だ!いくらボスでも相当ダメージが入るだろう。



「ホーク!トドメは任せたぞ!」


「おう!任せろ!うぉーーー!双・刀・斬!!!」



〈ベェ…〉




【魔法使いの熟練度が9に上がりました】

【スキル ウッドゴーレムを覚えました】

【魔法使いの熟練度が10に上がりました】

【詠唱時間が4分の1短縮されます】

【魔法使い専用スキル メテオを覚えました】

【魔法使いの熟練度が限界まで上がりました】

【魔法使いの上位職 魔導師が開放されました】

【なりきり師のレベルが3に上がりました】

【転職可能職業が増加しました】



 おぉ…これまたたくさん。この感じは久しぶり?……でもないか。2日ぶりだ。



「ユウキ〜〜!!!」


「うわっ!」


「心配したんだからね!大丈夫なの?もう痛くないの?」


「大丈夫!大丈夫だから!そんなに触んなくても…」


 うわっ!マーガレット所長が目を見開いてこっち見てるぞ…怖っ!



「あぁ〜ん!あたしも混ざるわぁ〜!」


「バカな事考えないでください。」


 シルバさんがマーガレット所長の首根っこを掴んで止めてくれた。



「ユウキ、ホーク。よくやったな!」


「「ありがとうございます」」


「ユウキ傷は大丈夫か?」


「はい、回復したので跡も残ってないと思います。」


「そうか。すまなかったな守ってやるって言ってたのに…」


「いえ、大丈夫です。分身を相手にしてくれただけで十分でした。」


「そう言ってもらえるとこちらも助かる。だが次からはちゃんと怪我をさせないようにするからな。」


「わかりました、よろしくお願いします。」


 モンスターが増殖すると言う洒落にならないフロアだったな…

 初めて大きな怪我もしてしまったが魔法使いの職業もマスターできた。

 とにかくこれで四階層も制覇だ!

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