第35話 なりきり師、VSバイホーンゴート2。

「いました!」


 この移動方法にも慣れてきた。風を受け流すコツも掴めて喋る程度ならできるようになった。



「どっちだ?」


「バイホーンゴートです!」


「わかった!行ってこい!」


「はい!」


 ホーンゴートならギルマスに乗ったまま魔法を使いそのまま倒して次に進むが、バイホーンゴートの場合おれとホークで挟み撃ちにして戦う方法を続けていた。



〈ヘ゛ェ゛ェェェェ!〉



「ライトニングボルト!」


 初撃ならアイツは鳴いて周りに知らせる事に集中していて動かないので簡単に当てられる!



「双刀斬!」



〈ヘ゛ェ…〉



 ホークもバイホーンゴートとの戦いになれたのかおれがライトニングボルトを使いダメージで硬直した一瞬を狙い的確にスキルを使って倒している。



【魔法使いの熟練度が8に上がりました】

【スキル アースラインボムを覚えました】


「おっ、また上がった!経験値うまいんだなコイツら…」


「ユウキごめんMP無くなった!またあれやって!」


「わかった!マジックディバイド!90」


 マジックディバイドはヒーラーの熟練度4で覚えたスキルだ。

 おれのMPを仲間に渡すことのできると言う援助のスキルだった。

 今まで使う事がなかったが今回は大活躍だ。



「あっ、おれも多分そろそろMPがヤバいな…ステータス!」



ユウキ


15歳


魔法使い


レベル2 熟練度8


HP790/790

MP33/617

攻撃109

防御98

魔攻105

魔防98

俊敏83

幸運107


スキル


なりきり師▶

戦士▶

魔法使い▶

ヒーラー▶

アーチャー▶

マッパー▶

鍛冶士▶

鑑定士▶

契約士▶

空間支配者▶

伝授▶


EXスキル


創造神の加護 無詠唱 鑑定阻害 熟練度10倍 ドロップアップ 生産率上昇 


称号


転生人 なりきり初心者 異常に抗いし者 嗜むなりきり


マスター称号


戦士


◆ステータス整理



 まだ四階層なのにボス戦とかやってたから魔法使いの熟練度が6も上がったんだよな…。

 ステータスも結構伸びてきたしいい感じに強くなれてきてるな。



「ギルマス、マジックポーション貰いますね!」


「好きに使っていいぞ!それはお前達に支給した分だからな。」


「ありがとうございます。」


 おれは1本飲み干した。とはいえ完全回復するにはこれを6本も飲むのか…

 ゲームみたいに連続使用できたらいいのにな…生身の身体だと連続で飲むのはなかなかキツイな…


 マジックポーションで回復するMPは1本で100。

 もっと上級の物も持たせてくれているが今使っているのは低級の物だ。

 量はそんなに多くないのだが必ず飲まないと効果を発揮しない。

 ポーションと違い振りかけるだけではだめなんだそうだ。



「ユウキちゃんの作戦うまくいったわねぇ〜!もうほとんど消えちゃったわよぉ〜。」


「皆さんが協力してくれたからですよ!うまくいってよかったです!

でもまだ本命のバイホーンゴートの本物は倒していません。もう一踏ん張りして倒しましょう!」


「よく言ったユウキ!その調子で最後まで気は抜くなよ!」


「はい!」










 おれは更にマジックポーションを2本飲みまたさっきのようにギルマス達に走ってもらった。



〈ヘ゛ェ゛ェェァァァァ!!!〉



「アイツは…」


「あぁ!どうやらやっと会えたようだな。」


 今までのバイホーンゴートとは明らかに違う殺気を放ちこっちに向かって走ってきた!



「速い!」


「よっと…」


 ギルマス達はおれ達を背負いながらでも軽くかわしている。



「どうするユウキ?コイツもお前らでやるか?」


 強さも、殺気も、やる気も、今まで戦ってきた偽物とは全然違うぞ…



「もちろんです!」


 でも違って当然だ!さっきまでのは偽物でコイツは本物。それだけの事だ。


 階層ボスは強くて当たり前。クイーンブーンビーも、アイアンスコーピオンもそうだった。

 おれたちは十階層のボスを倒さないといけないんだ!こんな所で逃げてられない!



「ホーク!行くぞ!」


「うん!」


「鑑定!」



バイホーンゴート


レベル20


HP598/598

MP99/99

攻撃203

防御105

魔攻89

魔防72

俊敏201

幸運58



 くっそ…やっぱり強いな…なんだよこの能力…アイアンスコーピオンより前の階層なのに全然強いとか本当におかしいだろ!



〈ヘ゛ェ゛ェェァァァ!!!!!〉



「バリアー!ぐあっ!」


 バリアーは軽く破壊されバイホーンゴートの突進で吹き飛ばされた。

 角に刺さらなかった事が不幸中の幸いだ。



「ユウキ!!!」


「大…丈夫だ!」


 見えない程速い訳ではないが今のおれに避けられるスピードではない…こんなの繰り返してたら本当に死ぬぞ…



〈ヘ゛ェ゛ェェァァァ!〉



 ヤバイッ!!!



「あ、危ねぇ…」


 バイホーンゴートが角を飛ばしてきた。突進により吹き飛ばされた事でできた距離があったのでなんとか横に回避したが、あれは近くで打たれると避けきれないな…



「双刀斬!!」


 いつもみたいにホークが隙をついてバイホーンゴートに攻撃を仕掛ける。

 でもコイツは今までの雑魚とは違いボスだ…仕掛けるにはまだ早すぎる…



〈ヘ゛ェ゛ェェ!!!〉



「バリアー!ホーク避けろー!!」


「えっ?ブアッ…」


 ホークの双刀斬でダメージを負ったバイホーンゴートは後ろ足でホークを蹴り飛ばした。

 その後すぐにホークの方へ身体ごと振り向いた。追撃するつもりか…?



「させねぇよ!メガフレイム!」


 単発のファイアボールと違い杖の先から継続的に炎が出るメガフレイム。

 ホークに向き直った事でおれに背を向けたバイホーンゴートには避けられない。



「なっ…」


 避けれないはずだったのに…バイホーンゴートはホークの方を向いたままおれのメガフレイムを避けてしまった…。



〈ベェェ〉



 なんで避けれるんだ…?後ろに目があるのかコイツ…完全に死角から攻撃したはずなのに……



「ユウキ、そういった横に目があるモンスターは共通して視野が広い!

相手が警戒してる時に見え透いた大技だと避けられてしまうぞ!」


「わかりました!」


 視野が広いか…また厄介な特性を持ってるな…


 さっきホークの攻撃が当たったのはおれに攻撃をした時の隙をついた事とホークの俊敏が高く一気に距離をつめれたからか…


 それならおれは相手の視界を奪うか見えない攻撃で戦うしかないな…。



「ダークネス!」


 闇魔法ダークネス。指定した場所に闇を作り出し真っ暗にしてしまう。

 魔法使いのスキルの中で唯一攻撃力のない魔法だ。


 おれはバイホーンゴートの顔を中心に闇を作り出し視界を奪った。



〈ベェッ!ベッ!ベッ!〉



 視界を奪った事でバイホーンゴートがその場で暴れだした。



「アースラインボム!」


 視界を奪ったが一応見えない魔法を使った。アースラインボムは地中を移動する地雷魔法だ。

 ただ欠点としておれをスタート地点とし指定した方向へ一直線にしか進まない。


 相手が近すぎるとおれも巻き込まれるし遠すぎる距離は移動できずそのまま消えてしまう。

 もちろんおれが任意で爆破させる事もできるので先制攻撃とかに便利な魔法かもしれない。


「ダークネス!」


 念の為ダークネスを重ねがけしておく。



『ボーーーン!!!』



〈ベェェェェ…〉



 バイホーンゴートの真下でアースラインボムが爆発した。



「ホーク大丈夫か?」


「いてて…でも大丈夫!」


 回復してやりたいがヒールを使える距離にホークがいない…

 大丈夫って言ってるしホークを信じて今はバイホーンゴートに集中しよう。


 砂煙が落ち着き姿を現したバイホーンゴートは息を荒くしおれをめちゃくちゃ睨んでいた。



「どうやら少しは効いたようだな!」



〈ヘ゛ェ゛ェァァァァ!!!!!〉



 怒り狂っておれに向かって突っ込んできた。



「メガフレイム!」


 バイホーンゴートの攻撃をおれの俊敏では避けれない。

 ならバイホーンゴートにおれの攻撃を避けてもらい攻撃の邪魔をする。



〈ベッ〉



 予想通りバイホーンゴートはメガフレイムを避けたが…



「バックステップって…そんなところはヤギと違ってモンスターなんだな…だけど!」


 バックステップで下がった先にはホークがいる!



「斬撃連波!」



〈べェェェ〉



 斬撃連波がバイホーンゴートの背中を斬りバイホーンゴートにダメージを与える。



「ライトニングボルト!」


 ホークの攻撃を気にした事で一瞬おれから気をそらした。その一瞬の内に頭上からライトニングボルトを落とす。



〈べェェェ〉



 よしいける!あとは気を付けてこうやってダメージを与えていければ勝てるぞ!



〈ヘ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!!!!〉



 今までよりより一層大きな声で鳴いた…ピンチになって大声で鳴くって前にもあった気がする…

 確かギャザーウルフと戦った時だ。あの時は仲間に伝わってモンフェスが起こったんだったな…。



「ホーク!気をつけろ!コイツ何かする気だ!」


「わかった!」


 ホークにも警戒を促したがバイホーンゴートが鳴いた理由はすぐにわかった。


 周りにバイホーンゴートが増えたのだ。

 今まではホーンゴートの幻影を依り代にしてバイホーンゴートになっていたがバイホーンゴート自身も分身を出せたんだ。


 これは普通に戦ってたら相当キツイだろうな。だが…



「邪魔はさせないよ。」


「そんな事しちゃだめよぉ〜!」


「ユウキ、ホーク雑魚は任せろ!お前らは本体に集中しろ!」


 おれたちにだって頼もしい仲間はいる。


「「ありがとうございます!」」



〈ベッ…〉



 バイホーンゴートは大勢でおれたちを袋叩きにでもするつもりだったのかあの三人の登場に少したじろいた。



「さぁ決着をつけようぜ!」

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