第34話 なりきり師、VSバイホーンゴート1。

 さっき思いついた作戦をおれはギルマスに話した。



「面白ぇじゃねぇか!確かにそれならおれたちの利点を無駄なく活かせるな。」


「できそうですか?」


「おれたちを誰だと思ってるんだ?できるに決まってるだろ!」


 よかった…それならこの階層はなんとかなりそうだ。



「ユウキ、やったね!」


「ホーク……ごめん!!!」


「どっ、どうしたのユウキ?急に謝ったりして…」


「おれ今までホークの事を守るのに必死で勝手だったよな…ホークの意見を聞いてなかった…

今まで作戦とか全部決めちゃってたけど今度からはちゃんと話そう!」


「あ〜それってさっきギルマスに言われてた事だよね?でもぶっちゃけおれはそこまで気にしてないよ?」


「えっ?」


「だっておれよりユウキの方が作戦たてるのも上手いし、そのおかげで今までだってダンジョン攻略できたんだよ。おれに文句なんかないよ!」


「そうなの?」


「ただユウキがおれを守ってくれようとしてるようにおれもユウキを守りたいって思ってるよ!

村で魔王を倒すって決めた時からおれはユウキの力になるって言ってたでしょ!?」


 あっ!魔王の事言っちゃってるよ…まぁおれが転生人だって話したしギルマスになら聞かれてもいいか……



「魔王だと?どう言う事だ?」


 やっぱりちゃんと聞いてるよね…



「あっ!え、えっとぉ…ダメ!今のナシ!」


「いいよホーク。後で必ず話します。今はそれでいいですか?」


「…わかった。」


 ギルマスとしては多分今すぐにでも聞きたいんだろうけど後で話す事で納得してくれた。



「とにかくホーク!これからは二人で一緒に強くなって行こう!

誰よりも強く…勇者パーティーが相手になんない位に!」


「そうだね!」


「それじゃああの二人の所に行って改めて作戦を説明しましょう。」


 おれはバリアーを使い守りを硬めシルバさんの所へ行き

 ギルマスとホークにはマーガレット所長の所に説明に行ってもらった。



「シルバさん!」


「ユウキ君?どうしてここに?ギルマスが守ってるはずじゃ……」


「そのまま戦いながら聞いてください!この階層を切り抜ける作戦を考えてきました!」


「作戦…?聞かせてくれるかい?」


「はい!まず最初にこの階層のマッピングをします!今のおれのマップじゃ埋まってる所が少なすぎてモンスターマップで本体を探せないので、マッピングして本体を見つけ出します!


その方法なんですけどギルマス、マーガレット所長、シルバさんの俊敏の高さを使わせてもらいます!」


「俊敏の高さ?」


「簡単に言うとおれたちを背負って走ってもらいます!これはギルマスとマーガレット所長にお願いしてるのでシルバさんには飛んでくる角や横から来るモンスターをその影の剣で払いのけてもらいたいんです!」


「なるほど…君達の護衛をすればいいんだね?」


「そうです。一番多方面をカバーしてもらわなきゃいけないんですけどできますか?」


「うん、大丈夫だよ。この影剣シャドーソードは出してれる間なら自由自在に動かせるからね。

ただ防御に使う事なんて今までなかったからちょっと頑張らないとね!」


 よし!シルバさんが守れるならこの作戦の成功率はグッと上がるぞ!


「お願いします。それじゃあ作戦の続きを…。

まずギルマスがおれを背負って先頭で走ります。次にマーガレット所長がホークを背負って走ります。最後にシルバさんが続いてください。」


「了解だ。」


「マッピングしてる間にモンスター本体が現れたらおれが魔法で一撃を与えます。

ホーンゴートなら間違いなく倒せます。それで周りの幻影も多少は消えると思います。

もしホーンゴート本体がバイホーンゴートに変わっていて能力が強くなっていた場合はおれが一撃を与えた後におれとホークが戦います。

シルバさんは周りの幻影、分身達に邪魔されないようにギルマス、マーガレット所長、シルバさんで周りの敵を蹴散らしてください。」


「僕達が本体を倒した方が早いんじゃないかい?」


「これはおれたちの試験ですから!」


 シルバさんの言う通り本体を3人に倒してもらう方が簡単で確実だ。


 だけどもう二人で強くなるって決めたんだ!


 ホークと一緒に戦いたくなったんだ…。



「そうか…そうだね。それなら僕達は全力で君達をサポートするよ!」


「ありがとうございます!」


「ユウキちゃん!楽しそうな作戦を考えたわねぇ〜!」


「うわぁ!!」


 後ろから急に話しかけられめちゃくちゃビックリした!



「あら?ごめんねぇ〜。驚かせちゃったかしらぁ〜?」


「い、いえ…大丈夫です。マーガレット所長、おれの考えた作戦はできそうですか?」


「ホークちゃんを連れて走ればいいんでしょ〜?キャワイイボーイにバックハグしてもらえるなんてぇ〜!役得よねぇ〜♪」


 バックハグじゃなくておんぶするだけなんだけどな…この人にホークを任せて大丈夫なのか…?



「ゴロズ所長!変な事考えないでください!彼らは真剣なんですからね!」


「んも〜!冗談も通じないのぉ〜?シルバちゃんってばぁ〜。」


「あなたが言うから冗談に聞こえないんですよ!」


 確かにおれも冗談に聞こえなかったな…怖いから口には出さないけど…



「ユウキ、シルバに説明は終わったのか!?」


 ギルマスもホークを連れて合流した。とにかくこれで全員におれの作戦は伝わったな。 



「終わりました!問題ないそうです。」


「そうか。それならこんな奴らさっさと片付けて次に進むぞ!」


「はい!」


 おれはギルマスに、ホークはマーガレット所長におぶさりバイホーンゴートの討伐を開始する。

 ちなみに杖は邪魔になるのでインベントリにしまってある。

 魔攻は下がってしまうがホーンゴートになら問題ないだろう…。



「おれたちはシルバがついてこれるスピードに合わせる。それでもお前達には速いだろうからしっかり捕まってろよ!」


「「はい!」」


 ガッチリとギルマスに抱きつき振り落とされないようにする。



「行くぞ!」


 皆に合図してギルマスが走り出したのだが…速い。風が顔にぶつかり前を見てられない…なんでこのスピードで移動できるんだ?



「ユウキ、大丈夫か?モンスターを見つけたらちゃんと知らせろよ!」


「ぶぁい!」


 このスピードの中では返事一つろくにできない…

 おれは右手をギルマスから外し顔の前に持っていきなんとか風除けを作りモンスターマップを見れるようにした。



「いた、一体目だ!」


 ギルマスの肩を叩き合図する。

 ギルマスはスピードを緩めてくれたのだが通り過ぎてしまっていた…。



「どの方向だ?」


「ここから右斜め後方、約30メートルです!」


「後ろ?ちゃんと教えろつっただろ!」


「教えましたよ!でも速すぎて通り過ぎちゃったんですよ!」


「戻るぞ!」


 モンスターに向かってギルマスは走り出してくれた。

 距離も近いのでスピードもそんなに出ていない。これならおれでも耐えられる!



「アイツだ!ライトニングボルト!」


「ライトニングボルトだと?」



『ドーーーーン!!!』



 おれはモンスターマップに反応してるホーンゴートに新スキルのライトニングボルトを使った。


 狙いを定めたホーンゴートの頭上から太い雷が落ちホーンゴートを跡形も無く消し去った…。



「うわー!スッゲー威力…」


 中級魔法の単体攻撃ってこんなに威力出るの?完全にオーバーキルだよ…

 周りにいたホーンゴートも本体を倒した事により同時に消え去った。

 だがバイホーンゴートは残ってしまっている…。



「そうか…そうだったな。お前は無詠唱で魔法が使えるんだったな。

詠唱もなしにいきなり中級魔法を使うから驚いちまったぜ…」


「ごめんなさい!打ちます!次に行きましょう!」


「ったく…遅ぇよ!お前ら次行くぞ!」


 周りのバイホーンゴートを相手にしてくれていたシルバさんとマーガレット所長にギルマスは次に行くことを伝えた。


 ホークはマーガレット所長にしがみついていたがマーガレット所長あれでよく戦えるな…







 おれたちはマッピングをして本体を叩く作戦を繰り返し行い徐々にモンスターの数を減らしていった…。


 そして6体目。モンスターマップに示された場所にいたのはバイホーンゴートだった。



〈ヘ゛ェ゛ェェェェ!!!〉



 おれたちが近付いただけで鳴き声をあげ周りのバイホーンゴートやホーンゴートも視線をこちらに向ける。



〈〈〈ヘ゛ェ゛ェェェェ!!!〉〉〉



 周りにいたバイホーンゴートも鳴きはじめ明らかに今までとは違う反応を示した。



「ライトニングボルト!」


 おれは迷わず本体にライトニングボルトをくらわせる。



〈ブルブルルゥ!!!〉



 だがホーンゴートと違い生き残ってしまった。

 大きさだけでなく本当に馬みたいな鳴き声を出し首を振りおれを睨みつけた。


 ヤギなのに……



「ホーク!今おれが魔法を当てたのが本体だ!やるぞ!皆さんは周りの奴らをお願いします!」


「わかった!」


「任せろ!」


「了解!」


「殲滅よぉ〜!」


 周りの敵は三人に任せれば心配ないだろう…。

 今はそれよりコイツが本物のバイホーンゴートなのかを確かめなければ…



「ホーク!アイツの攻撃に注意しろよ!角も飛ばしてくるからな!」


「わかってる!」


 おれたちは二手に別れバイホーンゴートを挟み撃ちにする形で戦う。

 さっき魔法で攻撃したことによりバイホーンゴートの狙いはおれだ。



〈ヘ゛ェ゛ェェェェ!!〉



 バイホーンゴートは鳴きながら角を飛ばしてきた。



「バリアー。」


 インベントリから杖を出しバリアーを使って少しでも防御面をカバーする。

 角が直撃した事でバリアーは割れてしまったが回避には成功した。



「鑑定!」



バイホーンゴート(変)


レベル12


HP96/223

MP73/73

攻撃88

防御43

魔攻36

魔防44

俊敏69

幸運33



 弱い…最悪だ…。考えてた事で起きてほしくなかった本物のホーンゴートの進化が起こってしまっていた…。



「ホーク!コイツはボスじゃない!ホーンゴートがバイホーンゴートになった奴だ!早く倒して次にいくぞ!」


「わかった!斬撃連波!」


 ホークの新スキル斬撃連波。

 二つの斬撃を飛ばして遠くの敵にも攻撃できる双剣士のスキルだ。



〈ヘ゛ェ゛!〉


 バイホーンゴートの後ろから攻撃したので完全に直撃だ。


 バイホーンゴートがホークの方に向き直ったので今度はおれの方に隙ができた。



「ライトニングボルト!!!」



〈ヘ゛ェ゛ェェェェ…〉



【魔法使いの熟練度が7に上がりました】

【スキル トルネードプリズンを覚えました】

【スキル ブリザードドームを覚えました】



「よし!」


 本物だけど偽物のバイホーンゴートを倒した事で熟練度が上がった!今の戦闘もなかなかスムーズに戦えたと思う。

 これなら本物のバイホーンゴートにだって通用するはずだ。



「やったねユウキ!」


「ホークありがとう!ホークが気を引いてくれたおかげで魔法を当てられたよ。次も頼むよ!」


「任せといて!」


「終わったようだな…。」


 ギルマス達も周りのモンスターを倒し終わってこっちに来ていた。



「はい。でも偽物でした。次の場所に向かいましょう。」


「わかった。」


 おれたちはまた本物のバイホーンゴート探しに向かった。

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