第30話 なりきり師、VSクイーンブーンビー。

 さて、やると決めた以上は足を引っ張ってられないな。



「ホーク!おれたちはギルマス達のサポートに回るぞ!邪魔にだけはならないようにしよう。」


「わかった!」


「ちょっと待て!何言ってんだお前ら。アイツを倒すのはお前たちだぞ!」


「「は?」」


「は?じゃねぇよ!ダンジョンに来る前に言ったろ!これは昇格依頼で試験だって。」


「いやいやいや、ギルマスが確認したいからって言うからわざわざここに来たんでしょ!なんでおれたちがボファッ…」


 なんだ?急に体を持って行かれたぞ…



「ユウキちゃん、戦場じゃよそ見しちゃだめよぉ〜!」


 マーガレット所長に小脇に抱えられながら注意されてしまった…

 さっきいた所を振り返って見てみるとクイーンブーンビーの牙が地面に刺さっていてそのまま地面をえぐりとっていた……



「あ、ありがとうございます。助かりました…」


 ホークも同じようにシルバさんに抱えられてる…話に夢中で敵の攻撃に全然気付かなかったな…



「ユウキちゃん、あたしたちが見守っててあげるからぁ〜!頑張ってぇ〜♪」


 見守ってないで手伝ってよ!と言うより倒してよ!

 なんでおれたちがボス戦をやらなきゃいけないんだよ…こいつ倒したって復活するんだぞ!



「ユウキ、ホーク!ボサボサすんな!敵は待ってくれないぞ!」


 誰のせいだよ!



「あ゛ぁ…もう!わかりましたよ!やればいいんでしょ!やれば!鑑定!」

 


クイーンブーンビー


レベル18


HP463/463

MP152/152

攻撃168

防御64

魔攻42

魔防52

俊敏179

幸運48



 は?なんで五階層のアイアンスコーピオンより強いんだよ!おかしいだろそんなの!階層の法則位守れよダンジョン!



「ホーク!こいつアイアンスコーピオンより攻撃と俊敏が相当強いぞ!気を付けろ!」


「わかった!でもおれ飛んでる敵に攻撃できないよ?どうやって戦えばいいの?」


「いつもみたいに最初はおれが魔法でなんとかしてみる!ホークはチャンスがあれば一撃離脱でダメージを与えてくれ!」


「りょーかい!」


 とは言ったものの…あの動きをなんとかしないと魔法も当たらないしな…


 クイーンブーンビーはシルバさんに狙いを付けさっきと同じ様に牙で攻撃したがシルバさんは軽くかわし反撃はしなかった。



「バインドプラント!」


 降りて来ている今がチャンスとばかりにバインドプラントで拘束を試みる。


 が、空中に逃げてしまった。その上今の魔法が引き金でヘイトを稼いでしまったらしくクイーンブーンビーの狙いがおれに向いてしまった…



〈ギシャーー!ガチャンガチャン〉



 羽音と声、顎牙による威嚇が同時におれへと向けられる。やばいな…おれの俊敏より100近く高いのに回避できるのか?



「ウインドサイズ!」


 見えない風の攻撃ならどうだ!ブーンビーならこれで真っ二つだ…



 〈ギッ!〉



 ダメだ…当たったけど真っ二つどころか少し気を引く程度しか効果がないぞ…



「バインドプラント!バインドプラント!バインドプラント…」


 ウインドサイズでだめならとにかくアイツの動きを止めないと…

 空中に向けバインドプラントを打ちまくる。だが縦横無尽に動き回るクイーンブーンビーには全く当たる気配がなかった…



「全然当たんねぇ…」


 空を飛ぶ敵なんてどうやって倒せばいいんだよ…なんとか地上に下ろせないかな…

 そんな事を考えてるとクイーンブーンビーが毒攻撃を発射してきた。



「うわっ!危ねえ…」


 ブーンビーと同じ毒の弾だが大きさがまるで違う。

 クイーンブーンビーの方はまるで大砲だ…あんなの当たったら耐性があっても毒になってしまいそうだ…



「どうしたユウキ!そんなもんなのか?こんなので手間取ってて本当に十階層までいけるのか?」


 くっそぉ!鬼め…一体誰のせいでこんな事になってると思ってるんだよ!

 でも言われっぱなしってのも腹が立つし絶対にアイツはおれたちで倒してやる!



「ウインドサイズ!」


 何か突破口となるものはないか?思い出せ…



「ウインドサイズ!」


 ブーンビーみたいにMP切れは期待できそうにないし…

 あの俊敏で突っ込んで来られると避けきれないぞ…今は魔法を使って牽制し続けないと。


 そういやブーンビーも日本の蜂と同じ様に巣を作ってたんだよな…

 大きさは違えど蜂は蜂だ日本の蜂と同じ様に弱点や嫌がる事もきっとあるはずだ。


 日本にいた時にスズメバチハンターのVTRを見る仕事をやった時どうやってたっけ?


 殺虫剤なんてこの世界にはないし…



「ウインド…」


 危ねぇ…また毒の大砲が飛んできた。アイツおれの魔法を使うタイミングに合わせたのか?

 小癪な真似を…ワンパターンで慣れてきたのかもしれないな…だったら!



「ウォーターショット!」



〈ギギャ!?〉



 ん?なんだ?当たってないのに明らかに今までとは違う反応をしたぞ?ウォーターショットが弱点なのか?



「ウォーターショット!」


 ダメだ当たらない…それよりあの時ハンターのおじさんなんて言ってたっけ?…確か煙で燻して弱らして…ってあれは巣に直接やるから今は無理だし…

 ベトベトの粘着テープの奴…もここにはないし掃除機…ではあんなの吸込めないし…

 何だったかな…思い出せそうで思い出せない。早くなんとかしないといけないのに……



「あぁ〜ん!ユウキちゃん、じれったいわぁ〜!あたしが打ち落としてあげちゃおうかしらぁ〜」


「辞めてください。ゴロズ所長。これは彼等の試験だって言ってるでしょう。」


「シルバちゃんのい・け・ず!でもこのままじゃユウキちゃんやられちゃいそうよぉ〜!」


「ギルマスも言ってましたけどこの程度で根を上げるようなら彼等に十階層攻略は無理ですよ。」


 聞こえるとわかってて嫌味言ってるな……ちくしょう絶対倒してやるからな!



「ブンブンブンブンうるせぇんだよ!どいつもこいつも!ファイアボール!!!」


 ウォーターショットの様な反応はしない。ファイアボールは普通に避けただけだ。やっぱり水が弱点なのか?


 水?あれ何だっけ今一瞬思い出せそうだったぞ…



「今のユウキ君って僕達に向けて言ってませんでした?」


「シルバちゃんが冷たい事ばっかり言うからでしょ〜!ユウキちゃんプンプン状態突入よぉ〜!」


 冷たい事言うからプンプン状態って…怒ってるのはおれじゃなくてクイーンブーンビーの方だろ…


 ん?冷たい…プンプン状態……



「あっ、思い出した!そうだ、そうだったんだよ!ホーク!反撃開始だ!」


「何か思い付いたの?ユウキ?」


「あぁ。前世の記憶が役に立つはずだ!なりきりチェンジ!アーチャー!」


 弓など使った事はないが感覚で打てるとわかる。おれだけの戦い方を三人に見せてやるよ!



「ほう…アーチャーになって狙撃でもするのか?だがあのスピードを捉える事ができるかな?」


 確かにギルマスの言う通りアーチャーになったからってクイーンブーンビーを捉える事は今のおれにはできない。


 だがそんな必要はない!



「ウォーターショット!ウォーターショット!ウォーターショット!ウォーターショット!」


「おいおいユウキ君。やけになったって倒せないよ。ちゃんと狙わないと!」


「狙い通りですよ!」


 おれは弓を引きクイーンブーンビーより高く上がったウォーターショットを撃ち抜いた。



〈ギギャ!〉



「まだまだぁ!ウォーターショット!ウォーターショット!ウォーターショット…」


 クイーンブーンビーに当たれば儲けもの外れてもおれがウォーターショットを弓で撃ち抜く!


 さっき思い出したハンターのおじさんが言ってた事は蜂は雨に弱い!

 羽が濡れて重くなって動きが遅くなるから駆除するなら雨の日がオススメだって事!


 それに魔法使いのおれの格好は真っ黒のローブ姿だった。蜂は黒い物に対して攻撃的になる。

 だからバインドプラント一発でヘイトがおれに向いてしまったんだ。


 ここまで日本の蜂と同じ特性ならきっと最後も効果的なはずだ!



「ウォーターショット!ウォーターショット!」


 やっぱりそうだ。さっきよりクイーンブーンビーの動きが悪くなってきている!


 だがクイーンブーンビーもやられてばかりではない。毒の大砲を撃ってきたので弓でウォーターショットを打抜けなかった。



「くっそ…もう少し濡らしたいのに…」


「あの魔法を撃ち抜けばいいのか?」


「えっ?」


 ギルマスがいつの間にか弓を装備しウォーターショットに向かって矢を放った。



「なんで?」


「なんでって…別におれたちは手伝わないなんて一言も言ってないぞ。

それに何をしてんのかわかんねぇけど直接敵に攻撃してるわけでもねぇしな…。」


 飴と鞭の使い方半端ねぇなこの人…でもこれならおれは魔法に集中できる。



「ありがとうございます!それじゃあウォーターショットがクイーンブーンビーより高くなったら撃ち抜いてください!ウォーターショット!ウォーターショット…」


 おれは動き回りながらウォーターショットを打ちまくった。


 それをギルマスだけでなくマーガレット所長も拳圧を飛ばして撃ち抜いてくれた。

 これでクイーンブーンビーの羽も十分濡れたな。ここからが最後の仕上げだ!



「バインドプラント!バインドプラント!バインドプラント!」


 動きの悪くなったクイーンブーンビーがバインドプラントに絡まる。



「よし!当たった!攻撃上昇!」


 おれはスキル攻撃上昇を使い攻撃力を上げバインドプラントを掴む。



「落ちろぉぉぉ!!!」


 クイーンブーンビーはなんとか飛び続け牙でバインドプラントを切っているが重ねがけしていたバインドプラントは全てが切れる事はなく絡みついたままだった。


 おれは力一杯に背負い投げの要領でクイーンブーンビーを叩き落とす。



〈ギッ…〉



「アイスニードル!アイスニードル!アイスニードル!アイスニードル!」


 間髪入れずにアイスニードルを使う。おれが思い出した蜂の最後の特性は寒さに弱い事。

 ハンターのおじさんは蜂は冬を越せないって言ってた。女王蜂は生き抜けるそうだが寒さに弱い事には変わりないはずだ!



「ホーク!頼む!羽を切り落としてくれ!」


「やっと出番だね!任せて!双刀斬!」



〈ギギャァァ!!〉



 ホークがクイーンブーンビーの片方の羽を切り取った。これでもう空中戦はない。



「なりきりチェンジ!魔法使い!」


 再び魔法使いになりおれにヘイトが集まる様にする。



「アイスニードル!アイスニードル!」


 クイーンブーンビーは羽をバタつかせたが飛べず地面を走り出した。

 ただ飛んでいた時のような速さはなく地上ならおれの方が速かった。



「ダブルスラッシュ!」


 前からはおれが魔法で攻撃し隙を見せればホークが斬りつける。



〈ギギ!〉



「おっと、まだそんな攻撃があったんだな。」


 クイーンブーンビーが口から石を飛ばす魔法を使ってきた。

 今まで見てない攻撃だが距離は十分あったので回避はたやすかった。



「アイスニードル!アイスニードル!」


 大分弱って来たな。



「鑑定!」



クイーンブーンビー


レベル18


HP33/463

MP92/152

攻撃168

防御64

魔攻42

魔防52

俊敏179

幸運48



「アイスニードル!ホークトドメだ!」


「これで終わりだ!双刀斬!」



〈ギ…〉



 ホークの攻撃により完全に力尽きクイーンブーンビーは消えていった。



【魔法使いの熟練度が4に上がりました】

【スキル ライトアローを覚えました】

【スキル ダークネスを覚えました】



【魔法使いの熟練度が5に上がりました】

【スキル メガフレイムを覚えました】



【魔法使いの熟練度が6に上がりました】

【スキル ガトリングウォーターを覚えました】

【スキル ライトニングボルトを覚えました】



「ふぁ〜!終わったぁ…」


「ユウキ〜!おれまたレベル上がったぁ〜!今回はスキルも覚えたぞ!」


 ホークが毎回のように飛びついてくるレベルアップ報告ももう慣れたな。



「ユウキ、ホーク、よくやったな。」


「二人共お疲れ様。躊躇してた割にちゃんと倒せたじゃないか!」


「若いボーイズの成長する姿♪たまらないわぁ〜…」


 好き勝手言ってるけど言い返す元気もないよ…。

 ハァ…なんでおれこんなギリギリの戦闘ばっかりやってるんだろ…

 まだ冒険者になったばかりなのにな…もっと余裕を持って戦える敵と戦いたいよ…。

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