第22話 なりきり師、契約する。

 ダンジョンを抜け街へと戻ったおれたちはギルドへは行かずそのまま宿に帰り泥のように眠った。


 翌朝。今日は決闘の日だ。昨日はダンジョンから街へと戻る際最短距離かつモンスター全無視で帰ってきた。

 モンスターマップを覚えたからできる技だ。やっぱりモンスターマップは便利すぎるようだな。


 そして昨日疲れ切ったおれはまだ確認していない事がたくさんある。

 まずは新しく増えた職業だ。重戦士が戦士をマスターした事で増えたってのは知っているが他に増えた職業はまだ知らない…。



「なりきりチェンジ!」



【なりきる職業を選んでください】


★戦士 剣士 格闘家 魔法使い ヒーラー アーチャー テイマー 鍛冶士 鑑定士 マッパー 空間支配者 重戦士 ランサー シーフ ギャンブラー 契約士 料理人 奴隷



「どれどれ…?重戦士を含め7種類も増えてるぞ…大体はどんな職業なのか知ってるな。」


 ただ聞き慣れない職業もある。それが契約士だ。



「契約士って何だ?」


 日本での契約ってなったら就職だったり、家のローン、ガス、水道、電気、携帯など色々思いつくがこの世界では別に必要ないしな…



「気になるしなってみるか…契約士を選択。」


 宿で休んでいたので職業は戦士だが装備はインベントリにしまい今は普段着だ。

 契約士を選んだ事でおれは眼鏡をかけ白いYシャツのような服に黒のベスト黒のパンツと比較的キチッとした格好になった。

 だが一つだけこの格好に不揃いな腕輪が右手についていた。



「さてさて…契約士のスキルはどんな感じかな?ステータス」



ユウキ


15歳


契約士


レベル2 熟練度1


HP730/730

MP490/490

攻撃103

防御92

魔攻81

魔防80

俊敏77

幸運95


スキル


なりきり師▶

戦士▶

魔法使い▶

ヒーラー▶

アーチャー▶

マッパー▶

鍛冶士▶

鑑定士▶

契約士▶     コントラクト

空間支配者▶


EXスキル


創造神の加護 無詠唱 鑑定阻害 熟練度10倍 ドロップアップ 生産率上昇 


称号


転生人 なりきり初心者 異常に抗いし者 嗜むなりきり


マスター称号


戦士


◆ステータス整理



「コントラクト?契約を結ぶスキルか?」


 ちなみに今のおれのステータスはステータス整理をした状態だ。

 スキル欄がそれぞれの職業別になり職業を選ぶとスキルが見れると言う仕様に変わった。

 スキルが増えごちゃごちゃしていたので意外と嬉しい仕様変化だった。



「ユウキ〜!お〜い!ユウキ〜!」


 ホークが外から呼んでる…決闘前に体を動かしたいって言ってさっき飛び出して行ったんだ…。



「なんだよホーク。もう運動はいいのか?」


 二階の窓から顔だけ出し返事を返す。



「ん?ユウキなんで眼鏡なんかかけてるの?」


「内緒だよ。それよりどうしたんだよ?」


「あっ、そうだった!ユウキ生活魔法覚えようよ!」


「生活魔法…?」


 生活魔法ってあの異世界物では定番のあの生活魔法か?



「そう!さっきおれがランニングしてたらさ…」





 〜ホーク、街の水路にて〜



「はぁ…やっと終わった。もうやりたくない!」


「臭い汚いキツイのドブさらいの依頼だからな…」


「……クリーン!」


「あっ、ズリーおれたちにもクリーンかけてくれよ!」


「そうだよ!おれたちだってドロドロなんだ!」


「うるさいわね、あんたたちもクリーンくらい自分で覚えなさいよ!毎回私に頼ってばっかりじゃない!」


「おれたちに必要なのは剣の強さだ!余計なスキルに時間をかけるなんてできないのさっ!」


「じゃあその余計なスキルに頼ってんじゃないわよ!」


「それとこれは話が別。だから早くクリーンかけてくれよ!臭いんだよ!汚いんだよ!」


「全く、調子のいい事ばっかり言って…いーい!ちゃんと生活魔法の講座に出るのよ!そうじゃないとクリーンしてあげない。わかった?」


「「わかったよ、わかったから!早く!」」


「よろしい。☒〜◎÷〜△+…クリーン!」


「「はあぁ…綺麗になった!!」」


「約束だからね!」


「よし、ギルドへ依頼達成報告にいって修行行こうぜ!」


「そうだな!今日こそレベルアップして薙ぎ払い覚えるぞー!」


「ちょっと生活魔法覚える約束でしょ!待ちなさいよ〜!」






 〜現在、宿屋の前〜



「って事があったんだよ!」


「大丈夫なのかそのパーティー…なんかすぐに解散しそうだな…でも生活魔法クリーンか。

これから先ダンジョンで寝泊まりする事もあるかもしれないし覚えておくのも悪く無いかもな。」


 今はまだ日帰りでダンジョンに行けているが攻略階層が進むにつれて泊まり込みになって風呂に入れない様になるからな…



「でしょ?だからおれ急いで帰ってユウキに教えようと思ったんだ!」


「で、ホーク?その生活魔法の講座はどこで受けれるんだ?」


「えっ!?」


「やっぱり…」


 さっきのホークの説明に生活魔法を受けれる場所の説明がなかった。

 詳しい事はわからないがとりあえずおれに教えに来たんだろうな…。相変わらずそそっかしいな……



「ホーク今日は決闘もあるんだよ?生活魔法も大事だけどちゃんと目の前の事に集中しないと痛い目みる事になるよ。」


「うっ…」


「だから生活魔法は決闘が片付いてからだな。」


「…わかった。」


 お預けをくらった子供のように落ち込んだホークをとりあえず部屋に呼んで契約士の説明でもするか。



「ホークまぁ部屋に来いよ!面白い事があるぞ!」


「わかった!!!」


 面白い事ってのに反応しすぐに宿に入った。



「ユウキ面白い事ってなに!?ってなにその格好?……」


「これがさっき言った面白い事だよ。おれの新しい職業の契約士だ。」


「契約士?」


「スキルはおれもまだ使って無いから試してみようか。」


「ここで使っても大丈夫なの?」


「大丈夫。そんな派手なスキルじゃないよ。

そうだなぁ……じゃあホーク今日の決闘でおれたちが勝ったら昼飯はおれが奢るよ。負けたらホークが奢ってくれ。

期間は今日一日。もし約束を守らなかったら罰として今日はご飯抜きな。」


「どうしたの急に?まぁ別にいいけど…」


「コントラクト」


 おれがスキルを使うと目の前に光の玉が二個現れおれたちの体に入った。



「契約成立!こう言うスキルだよ。」


「どう言うスキルだよ!わかるように説明してよ!」


「約束を守らせるスキルだって事。まず約束事を決めて、次に期間そして守らなかった時の罰。今回だと

・決闘の結果でどっちかが昼飯を奢る

・期間は今日一日

・守らなかったら一日飯抜き

って感じだな。今回はお試しだから軽めの条件にしたけど契約内容しだいではもっと厳しい罰にもできたりするよ。」


「へぇ〜!また便利な職業が増えたんだね…。」


「そうだな。気になって転職してみたんだけど思ったより使えそうなスキルを覚えてラッキーだったよ。」


「ユウキそれなら他にも一気に転職してみたらどう?」


「まぁそれは追い々いだな!それより準備しないと決闘に遅れちゃうぞ!そろそろギルドに行こうか!」


「もうそんな時間?わかった!」


 もうすぐギルマスが指定した決闘の時間だ。二人共三日間の間にかなりステータスが上がったしできるだけのレベルアップもした。

 モブ達が決闘の為にレベルアップしたかはわからないが負けるつもりはない。










 〜冒険者ギルド〜


 おれたちは宿からギルドに移動してきた。相変わらずギルドは騒がしいのだがおれたちを見かけるとヒソヒソ話が増える…

 まぁ決闘もそうだけどマーガレットさんの時もやらかしたからな……。



「ユウキ、あれ!」


 ホークが言う方向を見るとチームヒーローことモブ3兄弟がおれたちを見てニヤニヤしていた。



「気にするなよホーク。あいつらが笑ってられるのも今だけだ。

それより何か食べようか?どうせ勝つし約束通りおれの奢りでいいよ。」


 ギルドに併設している酒場でちょっと早めの昼食にする。

 酒場だけど食事も出しているので酒を飲まない冒険者達にも人気のようだった。



「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりですか?」


 席につくと犬耳が生えた女のウェイトレスが注文を聞きに来た。

 リーイン村には人間しかいなかったのでこの世界に来て初めて獣人との接触だ。

 街には他にもエルフやドワーフ、他の種族の獣人や亜人もいたがおれたちは関わったことがなかった。



「何がオススメですか?」


「そうですねぇ…今日だと、オーク肉の蜂蜜漬けとかどうですか?オーク肉をブーンビーの蜂蜜で漬け込んでから焼くんですけどとっても柔らかくて美味しいですよ。」


 犬の獣人なのに柔らかい肉が好きなのかな?まぁどうでもいっか…



「ホークもそれでいいか?」


「うん!」


「じゃあそれを二つください。」


「かしこまりました。少々お待ちくださいね。」


 少し待つとさっきのウェイトレスがオーク肉の蜂蜜漬けを二つ持って来てくれた。


「熱いのでお気を付けください。あの〜…」


「? なんですか?」


「さっきホークさんっていってましたよね?もしかしてあなたはユウキさんですか?」


「そうですけど…」


「やっぱり!今日チームヒーローと決闘するんですよね?頑張ってください!応援してますから!」


「…あ、ありがとうございます。」


 知らない人に応援されてしまった。なんでだろ?



「チームヒーローの三人は多くの女性冒険者や職員のお尻や身体をわざとじゃない感じで触ったりしてきて困ってたんです…。

新人冒険者のお二人にこんな事言うのも申し訳ないのですが今日の決闘でやっつけてくださいね。」


「…えっと…頑張りますね……」



『すいませーん!』



「はーい!すぐ行きまーす!それでは。失礼します。」



 他の客が呼んだので、言いたい事を言って行ってしまった。

 しかしモブ達は新人イジメだけじゃなくセクハラまでやってたのか…救いようがないな……



 おれたちは昼食を食べ終わりギルドの受付に向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る