第21話 なりきり師、初ボスに挑む2。

 剣も効かない魔法も効かないこんな敵どうすれば倒せるんだよ…

 大体ロックスコーピオンはどうしたんだ?なんでアイアンスコーピオンなんてモンスターが出るんだよ……


 戦いの最中なのに文句ばかりが出てくる…

 こんなんじゃいけない!余計な事は考えるな!今はどうやってアイツを倒すかを考えないと……



「かってぇ〜!ユウキどうなってんの?アイツ…」


「わかんない…魔法も全然効いてないみたいなんだ……」


 ホークの攻撃のおかげなのかアイアンスコーピオンは走るのを止めおれたちと向かい合うかたちになった。

 とは言えおれたちにはアイツの防御を抜ける攻撃手段がない…

 それにあのハサミと尻尾…あんなのに攻撃されたらひとたまりもないぞ……



「どうするユウキ?何か作戦はないの!?」


「作戦つってもなぁ…相手はカチカチの鉄のモンスターだし……あっ!」


「なにか思い付いたの!?」


「あ〜うん…いや、別に…なんでもない…」


「なにか思いついたんでしょ?やる前から諦めちゃダメだよ!どうせ今はどうにもならないんしやるだけやってみなよ!」


「わかったよ…なりきりチェンジ!」


 【なりきる職業を選んでください】


戦士 剣士 格闘家 魔法使い ヒーラー アーチャー テイマー 鍛冶士 鑑定士 マッパー 空間支配者



「鍛冶士」


 魔法使いから鍛冶士へと転職する。


 頭には白のバンダナ、グレーのつなぎの服に黒のエプロンそして手にはハンマーを持っている。


 そうおれが思い付いたのは相手が鉄で剣で切れないならハンマーで叩けばいいんじゃね?って安易な考えだった……



「ユウキ…何やってんの?」


「ホークがやれって言ったんだろ!それより来てるぞ!」


 アイアンスコーピオンが両方のハサミを振り上げそのまま地面に叩きつけた。



「「うわっ!」」


 地面が砕け周りにはヒビが入っている。おれたちはまた左右に別れ離されてしまった。



「ホーク大丈夫か?」


「大丈夫!当たってない!」


 どうにかしてダメージを与えないと…このままだといつまでたってもピンチのままだ…。

 かと言って鍛冶士に転職したけどこのハンマーではリーチが短すぎる……



「サンダーウィップ!」


 唯一アイアンスコーピオンの動きを止めたサンダーウィップだけが今使える最大の武器だ。


 さっきよりも近くからサンダーウィップを打った。


 するとやはりアイアンスコーピオンは動きを止める。



「これでどうだー!」



『カーーン!!』



 動きを止めたアイアンスコーピオンの横っ腹に鍛冶士の武器のハンマーで攻撃をした。


 結果…金属同士の叩き合う音が響いただけでアイアンスコーピオンは何の反応もしない。



「………ァハハ…ですよねー…ん?グハッ!!」


 それどころかアイアンスコーピオンの尻尾で薙払われ逆にダメージを負ってしまった…。



「ユウキ!!!」


 アイアンスコーピオンが動かない内にホークが駆け寄ってきた。


「…ヒール。くっそやっぱり鍛冶士じゃ駄目か…でもわかったぞ。アイツの倒し方!」


「本当か!?」


「あぁ!絶対とは言えないけどわかった気がする。今からスキル連発するからホークは少し離れててくれ!」


「わかった。ユウキを信じるよ!いつでも加勢するからね!」


「その時は合図するから頼むよ!」


「当たり前だよ!」


「なりきりチェンジ戦士!」


 ホークに少し離れてもらい準備は万端だ。



「今度はおれたちがお前を追い込む番だ!」


 再び動き出したアイアンスコーピオンに宣戦布告をする。



〈ギャアァァ!!〉



 まずはこちらに向かって来るアイアンスコーピオンの動きを止める。



「サンダーウィップ!サンダーウィップ!」


 サンダーウィップを両手に出しアイアンスコーピオンに向かって投げる。

 さっきまでと同じ様にアイアンスコーピオンは動きを止めた。



「攻撃上昇!」


 攻撃上昇はおれの攻撃力を1.5倍にするスキルだ。


 おれの攻撃力はさっき四階層で戦士が9になった時点で76。鍛冶士で上がったかは確認していないが少なくとも今は114の攻撃力はある。


 おれはアイアンスコーピオンに近付きスキルを使う。



「旋風!!!」


 威力の高まった旋風が大きな竜巻を作る。



「うぉぉぉおーーー!」


 この技がこの作戦の肝だ!ここでアイアンスコーピオンを飛ばせないと失敗してしまう…

 だが、アイアンスコーピオンは鉄の塊だ。なかなか動かない…



「飛んでけーーーー!!!!!!」



〈ギャギャ〜〉



 全力で旋風を使いアイアンスコーピオンは浮かび上がって行った。



「よし!なりきりチェンジ 魔法使い!サンダーウィップ!サンダーウィップ!」


 おれはサンダーウィップを上に投げる。どこにいようが鉄である限りサンダーウィップはアイアンスコーピオンを追いかけていく。



〈ギャアァァァァ…〉



 やっぱりだ!アイツに魔法は効く!おれがサンダーウィップを使っていた時に動かなかったのは地面に放電していたんだ。

 ファイアーボールやウォーターショットなどは物理的に潰して対処していたがサンダーウィップだけは地面に放電するしかなかったようだな…。


 おれがこれに気付いたのはハンマーで攻撃した時だ。


 攻撃される前に離れようとハンマーを奴から離そうとしたがアイアンスコーピオンに吸い付く様に引っ張られた。

 その事に一瞬気を取られ回避が遅れて攻撃されてしまった…。


 やっと思い出したが鉄に電気を通すと磁石になる。

 それで磁気を帯びたアイアンスコーピオンにおれのハンマーが反応したんだ。

 あの時アイアンスコーピオンは確実に電気を通していたんだ。



「サンダーウィップ!サンダーウィップ!」


 まだだ、まだ足りない!



〈ギャアァァ〉



「ファイアーボール!ファイアーボール!ファイアーボール…」


 そして電気を通せば熱を帯びる。


 ズドーーン!と物凄い音を立ててアイアンスコーピオンが空から落ちてきた。



「アイスニードル!アイスニードル!アイスニードル…」


 熱を持った金属を急激に冷やすと脆くなる!


 アイスニードルで急激に冷やされアイアンスコーピオンの全身にヒビが入った。



「ホーーーク!!」


「待ってたよユウキ!双刀斬!!」


 ホークの双刀斬でアイアンスコーピオンの両方のハサミが崩れ落ちた。



〈ギャギャアァァァァ…〉



「なりきりチェンジ 戦士!攻撃上昇!」


「いけー!ユウキー!」


「うぉーー!兜割り!!!」


 アイアンスコーピオンに向かって走りおれは渾身の力を込めてアイアンスコーピオンの頭に兜割りをくらわせた。


 兜割りは斬る剣スキルではなく一点集中の突きの剣スキルだ。



〈ギャ…ア〉



 モロに頭に剣の刺さったアイアンスコーピオンはそのまま力尽き消えていった。





【戦士の熟練度が10に上がりました】

【戦士専用スキル スラッシュバスターを覚えました】

【戦士の熟練度が限界まで上がりました】

【戦士の上位職 重戦士が開放されました】

【なりきり師のレベルが2に上がりました】

【転職可能職業が増加しました】

【ステータス整理が開放されました】

【マスター称号が開放されました】



「うおっ!いつもより多いな…」


「ユウキ!おれまたレベル上がったよ!」


「おれも上がったよ!それより疲れた〜…死ぬかと思ったよ…」


「えっ!?ユウキもレベル上がったの?ステータス見せ合いっこしようよ!ねぇユウキ!」


 駄目だホークが変なテンションに入っちゃった…おれ一休みしたいんだけど…



「わかったよ!わかったから。少しだけ休ませてぇ…」


「なんでだよ〜!はやくみようよ!ねっ!ねっ!」





 ホークのテンションには勝てず5分だけ休憩してお互いのステータスを見ることにした。

 その5分も隣でずっとワチャワチャしていたので全然休めた気はしなかったが約束なので仕方ない……



「「オープンステータス」」


 まずはホークだ。



ホーク


15歳


双剣士


レベル5


HP463/642

MP51/81

攻撃123

防御96

魔攻41

魔防38

俊敏153

幸運72


スキル


ダブルスラッシュ 双刀斬


称号


なりきり師の仲間 異常に抗いし者





 そして次におれ



ユウキ


15歳


戦士


レベル2 熟練度10


HP221/726

MP106/486

攻撃103

防御92

魔攻81

魔防80

俊敏77

幸運93


スキル


なりきりチェンジ 鑑定 インベントリ マップ スラッシュ ヒール 薙ぎ払い 回転斬り 遠目 ファイアーボール ウォーターショット サンダーウィップ ビッグシールド 斬撃波 ウインドサイズ アイスニードル シールドスロー 兜割り バリアー アンチポイズン マジックディバイド 攻撃上昇 転写 旋風 武器生成 ★スラッシュバスター


EXスキル


創造神の加護 無詠唱 鑑定阻害 熟練度10倍 ドロップアップ 生産率上昇 


称号


転生人 なりきり初心者 異常に抗いし者 嗜むなりきり


マスター称号


戦士


◆ステータス整理






「なんだこれ…上がりすぎだろ…」


「アハハ相変わらずユウキはめちゃくちゃだね!」


「これは絶対おれのせいじゃないだろ!」


「まぁ強くなる分には何の問題も無いしそれがなりきり師の能力なんでしょ?」


「そうなんだろうけどさ…」


「まさかおれの事気にしてるんじゃないよね?」


「えっ、あっいや…」


「ていっ!」


「いてっ」


 ホークにチョップされた。



「おれはもうユウキがどれだけ強くなっても自分と比べたりしないよ。ユウキがスゲーってのはおれが一番よく知ってるし、それに卑屈になるのはもう辞めたんだ!」


「ホーク…」


「おれだって意地でも強くなってユウキがパーティーにいてくれって頼む位のステータスになってやるんだからな!」


「それならもうなってるよ。ホークはこれまでもこれからもずっとおれの仲間だろ!?」


「ユウキ…」


「頼りにしてるぜ!相棒!」


「ヘヘッ…うん!」


 二人共笑顔で拳と拳を突き合わせる。



「メルメルの街に帰ろっか。」


「そうだね!」


 予想外の出来事が多かった今回のダンジョン探索は目標にしていた五階層まで踏破する事ができた。


 おれたちは六階層の階段前まで進みそのまま引き返して街へと戻った。

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