第20話 なりきり師、初ボスに挑む1。
五階層へと続く階段で一休みする。サナさんが言うにはダンジョンのモンスターが階層を越えることはないそうだ。
前にギャザーウルフにモンフェスを起こされた時に一階層へ逃げ込んだのは正解だったみたいだ…。
「さっきのホーンゴートにはビックリしたな…あんな行動するのになんでサナさんは教えてくれなかったんだろう?」
あれだけダンジョンは危険だと引き止めてくれていたのにホーンゴートは角に注意すること以外は教えてもらっていなかった…。
「サナさんも知らなかったんじゃ無いの?」
「ギルドの職員がそんな事ってあるか?深い階層ならまだしも誰でも来れるような四階層だぞ!?」
「う〜ん…じゃあホーンゴートが新しくスキルを覚えたとか?」
「それもどうなのかなぁ…」
そんな事ってあるのか?ホークの言う通りサナさんが知らなかった方がまだ可能性はあるかな…
モンスターがパワーアップするダンジョンだとしたら攻略は遥かに難易度が上がってしまうぞ…それに急にパワーアップするなんて普通に考えれば現実的じゃないよな…
「まっ、何にしても四階層も突破できたんだしいいじゃん!」
ホークはどんな時でもホークだな…。
でも確かにそうかもしれない。ここで考えていてもおれには原因はわからない…
「よし、少しは休めたか?そろそろボス戦に行こうか?」
「うん!大丈夫!いよいよボス戦かぁ!頑張ろうねユウキ!」
「おう!」
五階層はこれまでとは少し構造が違う。聞いた話だと階段を降りた先には扉があって入るとボス部屋だそうだ。
反対側には六階層へと降りる為の階段があってその前にも扉があるらしい…。
ボスを倒せばその扉も開き六階層へと降りる事ができるそうだ。
一度ボスを倒せば入った時に開いてボスに気付かれなければそのまま戦わずに降りる事もできるようになるそうだが、一度も倒していないパーティーメンバーがいると閉じたままらしい。
どうやって判別してるのかはわからないがダンジョンの不思議として冒険者達には広まっているのだとか……
「行くぞ!」
ホークに声をかけ扉を開ける。
「あんまり他の階層とかわんないね!あっ、でも反対側の壁がここからでも見えるよ!」
「本当だ…今までよりかなり狭いみたいだな…」
今までの階層は広く階段を降りてすぐには壁は見えなかった。壁と言ってもただの石の壁なのだが地面とは違う材質な感じがした。
「そういえばダンジョンってなんで明るいんだろうね?天井も見えないし…」
「そう言われれば確かにそうだな…道やマップの事ばかり気にして普通なら当たり前の疑問にも気付かなかった…これもダンジョンの不思議ってやつなのかな?」
ダンジョンの不思議…都合のいい言葉だな……。
「この階層もマッピングするの?」
「ボスを倒して余裕があればしようかな?次回戦わなくてもいいルートもできれば見付けておきたいし…」
「ボス次第ってやつだね!」
「あぁ…今日はとにかくボスを倒して階段の前まで行ったら帰ろう。」
おれたちはとりあえず一直線に反対側の壁を目指す事にした。そうすればその内ボスとも出会うだろう…
この階層のボスはロックスコーピオン。高い防御力がある石のサソリだ。
「また毒の敵なんだよね?…ユウキの解毒魔法があるからいいけどもうあの辛さは味わいたくないよ…」
「そのためにわざわざ10分も我慢して称号取ったんだろ!耐性が50%もあるんだ半分は防げるはずだよ。」
「次はすぐに治療してよ?」
「わかってるって。」
そんな話をしていた時『ドンドンドンドン』と遠くの方から凄い地響きが鳴り始めた。
「ホークお待ちかねのボスが登場するみたいだぞ…」
「うん…凄い地響きだね!」
「石のサソリだから剣ではダメージが薄いかもしれない。基本はおれの魔法ベースで戦うぞ。バリアー、バリアー。」
「わかってるって!何回も作戦会議したでしょ!ったく…ユウキは本当に心配性だね!」
「テンション上がり過ぎてたまに周りが見えなくなる仲間がいるからな…来るぞ!」
〈ギャオォォォ!!!〉
「避けろホーク!!」
おれたちは左右に別れロックスコーピオンの初撃を回避する。
もうここまできたら怪獣だな…おれたちよりも大きいハサミを二つ広げ尻尾を高く上げたサソリがおれたちの間を突っ切った。
「鑑定!」
アイアンスコーピオン
レベル11
HP376/376
MP98/98
攻撃73
防御144
魔攻20
魔防28
俊敏49
幸運24
「アイアンスコーピオン!!!?」
どう言う事だ!?自分で調べたのもサナさんから聞いた情報でも五階層のボスはロックスコーピオンだったぞ!
しかもステータスバカ高ぇし…何なんだよこのダンジョン…事前情報と違う事ばっかりじゃないか…。
「ユウキどうしたの!?大丈夫?」
「ホークいきなり想定外だ!あいつはロックスコーピオンじゃない!石より固い鉄のアイアンスコーピオンだ!」
「それってあの敵の方が強いって事?」
「そう言う事だ。ホーク戻ってくるぞ!」
ドドドドドと音をたて八本の足で土煙を巻き起こしながら戻ってくる。
〈ギャオォォォ!!〉
とにかくあいつの動きを止めないと…
「ファイアーボール!」
魔法なら遠距離から攻撃できるしアイアンスコーピオンの魔防も弱かった。
こいつに勝つには魔法しかないだろう。しかし…
〈ギャアァァ〉
「なっ!……」
おれの打ったファイアーボールをスパーンと走りながらハサミで切ってしまった……
止まるどころかおれの攻撃に全く怯む事なく走り続けるアイアンスコーピオンはおれに狙いを定めたらしい。
おれの方に向かって走っている方向を少し変えた。
「ファイアーボール!ウォーターショット!アイスニードル!」
三発ならどうだ!と思って打ってはみたものの両方のハサミでファイアーボールとウォーターショットの二発が切られ、残りのアイスニードルは尻尾で弾かれ消されてしまった。
ヤバイぞ…どう戦えばいいんだよ……
「ユウキ!避けろぉ!」
「ビッグシールド!バリアー!」
ビッグシールドを使い盾を大きくして地面に突き刺す。
盾に隠れながら後ろにさがりアイアンスコーピオンが突っ込んできた時に横へ全力で走る。
バリアーは念の為保険として使っておいた。
「なんとか避けきれた…」
さっきとは違い今度は明白におれを狙っていたので回避は早すぎても遅すぎても駄目だ…。
「ユウキ大丈夫か!?」
「大丈夫だ!それより相手から目を離すなよ!今あいつはただ走ってるだけだ!まだ攻撃すらしてきてないぞ!」
アイアンスコーピオンを止める方法が思い付かない…
ウォーターショットとアイスニードルで地面を凍らせるか?駄目だおれたちも戦えなくなるし広範囲にそれをやろうとすればMPもめちゃくちゃ使ってしまう…
それにアイツが滑るかどうかの確証もない。おれの使えるスキルで何か方法はないか……
〈ギャオ゛ォォォ…〉
またUターンして戻ってきた…
「ウインドサイズ!」
目に見えない風の攻撃ならどうだ…
『キンッ』と高い音がした。攻撃は当たったようだが動きを止めるまでには至らない。
「これも駄目か…ならサンダーウィップ!」
おれの持っている最後の魔法サンダーウィップを出した時いつもと様子が違った。
手に持っている雷の鞭がアイアンスコーピオンに引き寄せられて?いたのだ。
「そうか!避雷針だ!」
おれやホークの鉄製装備には特に反応しないが敵であるアイアンスコーピオンの鉄には反応している。
今までサンダーウィップを使ってきた敵はギャザーウルフとホーンゴートしかいないから魔法にこんな特性があるなんて知らなかった…。
「でも鉄に雷って効くのかな…?」
おれはサンダーウィップを槍投げの槍の様に持ち直しアイアンスコーピオンに向かって投げた。
投げた瞬間にサンダーウィップはアイアンスコーピオンに向かって行った…。
〈ギャ…〉
「当たった…どうだ…?」
〈ギャガァァァ!!!〉
駄目か…一度動きは止まったもののピンピンしている。
でも変化はあった。アイアンスコーピオンは確実に一度止まったんだ。
鉄に電気で何が起こるんだっけ?…学校なんて仕事で忙しくてそんなに行ってなかったからあんまり覚えてないぞ……
「なりきりチェンジ 魔法使い サンダーウィップ!」
魔法使いに転職して魔法の威力を高めさっきと同じようにサンダーウィップをアイアンスコーピオンに投げる。
〈ギャア……〉
やっぱり少しだけなら動きを止めれるぞ。これを繰り返せばいずれ倒せるかな?
って言うかどのくらいダメージ入ってるんだこれ?
「鑑定」
アイアンスコーピオン
レベル11
HP372/376
MP98/98
攻撃73
防御144
魔攻20
魔防28
俊敏49
幸運24
!!!
「ほぼノーダメージ!?なんでっ!?」
ウインドサイズとサンダーウィップ二発は確実に当てたぞ…魔防の弱さ的にももっとダメージがあるはずだろ。
「双刀斬!!」
ホークがアイアンスコーピオンの動きが止まった隙に双刀斬を叩き込むがこれもキーンと甲高い音を立てて弾かれた。
「ホーク早く離れるんだ!」
くそ…こんなのどうすればいいんだよ……
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