第6話クチナシ
「おい何が言いたいのかわからないよ」とよく言われる。なぜなら俺には口がないから。正確に言えば声帯がない。だから誰かに何かを伝えるには筆談か手話を使う。けれど人間は歪な物を嫌う。おかげで俺は化け物扱いだ。そんな俺に天使が舞い降りた。耳の不自由な彼女は俺にとっては天使、いやそれ以上の女神に見えた。おしとやかで品のあるいい人だ。俺はすぐアピールしに行ったね。迷惑そうな顔をされたこともあったが最終的には嫁さんになってくれた。俺は俄然嬉しかったね。
二人の間に生まれた子供は「凱」と名付けた。少々小っ恥ずかしいかもしれないが、それでもきちんと意味を込めてつけた名前だ。いつか気に入ってもらえると嬉しい。
どんな時でも勇ましく戦い、勝ってほしい。彼にはそんな意味を込めた。
だけど「凱」は俺ら二人の悪いところを受け継いでしまった。整体が不自由なのに加え耳も不自由なのだ。それでも俺は絶望せず一生懸命に育てた。
その甲斐あってか彼は健康に育ち、比較的明るい性格になり大学を卒業した後、家を出て行った。
あいつに嫁はできるだろうか。どんな嫁だろうか。俺が生きている間に子供は産まれるのかな。別に急かすつもりはないができることなら顔を拝んでみたい。
なあ母さん。「凱」は元気に今も生きているよ。
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