竜胆と待雪草
「ユキ姉ちゃん、爪どーしたの?」
ユキの爪はいつもツヤツヤのピカピカ。確かに彼女の爪はいつも薄いピンク色だけど、今日は濃いピンク色になっていた。似合いもしないのに派手な色ばかり好む母と違い、優しい色が彼女に良く合うとリンドウは思う。
「これ? プリムラちゃんが塗ってくれたんだよ」
ユキの言葉に記憶の糸を必死に辿る。そういえば、さっき途中まで一緒だった女生徒も普通の爪の色じゃなかったなぁ。あっちはオレンジだった気がする。
ユキ姉ちゃんのお友達さん、ありがとう。竜胆は心の中で名前も知らない同級生(実際は何度も会っているが竜胆は覚えていない)にお礼を言いながら、ユキの手を取ると爪の色をじっと見つめた。キラキラと光るその爪は本当に飴玉みたいで、舐めたらイチゴ味かなと思った。
「り、竜胆君!」
考えるより先に躰が動いていて、竜胆はユキのミルク色の人差し指をパクッと口に含んでいた。飴を舐めるようにつるつるした爪の表面を舌で転がしてみたけれど、イチゴの味はしなかった。味なんてなくて、シンナーの匂いが口いっぱいに広がっただけ。
「甘くない……」
「あ、あたり前でしょお腹壊すよ!」
「じゃあ口直し」
学習した竜胆は、ユキの唇を奪いとった。
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