禊萩と目箒

義兄にいさんは、奪い取らないんですか?」

「時と場合によりけりだね。バジル君なら、奪い取る?」

「少なくとも、ただ黙って指を咥えてはいません」

「……そう。そうだね。だけど知ってる?」


 義姉からの誕生日に贈られたスコップを地面にぶすりと突き刺して、腹違いの弟がかくりと首を傾げる。相変わらず表情の読めない硝子玉のような瞳はすぐ側にいるはずの禊を素通りして、ずっと遠い何処かを見詰めている。その視線の向こうには遠くなっていく二つの後ろ姿があって。可愛い義妹と最近できた『おでき』を見送ると、禊はバジルにだけに聞こえるように小さく小さく呟いた。


(恋にはいずれ終わりが来るかもしれないけれど、家族は長い年月が経っても家族なんだよ)

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