第8話<最悪>な存在の華奢な彼女

ある都市のクワードハーチという場所は、戦争の真っ只中。

あちこちで悲鳴があがり、住人にも被害が及んでいた。


そんな中、塔の上で笑い声をあげながら愉快そうに見下ろしている人物が一人いた。

「うひょー。アハハハハハハッ、やってるやってるぅ~楽しそう~ウチもまぁ~ざろぅー」

言い終えると同時に塔の上から姿が消え、屈強な兵士の前に姿を現す。

「誰だ!お前、なにもんだ」

兵士が大声で訊ねる。

何者なにもんでもどうでもいいだろぅ~抑えらんねぇーだよぅー。イマイチものたんねぇーんだよ、ウチはさぁ。混ぜてぇよぅ~楽しい楽しいぃ戦争ゲームにぃぃぃ~」

襲い掛かってくる人物に剣で対抗しようとした兵士が一瞬で地面に倒れ、死亡した。

兵士を一瞥し、つまらなさそうに呟く華奢な身体をした女。

「こんなもんかよ、ムダに筋肉がついてただけで努力なんてしてねぇんだろうなぁー。ウチが一発、拳をめり込ませただけでこの有り様ぁってかっ!ひとさし指だけで余裕だったな。ウチもムダなことしちまったぁ~。よくもこんなんで戦争ゲームに参加したな!今までの退屈なお遊びとなんもかわんねぇーが、暇潰し程度になるんだろうぅーなぁ」

彼女は見境なく、全兵士をひとさし指だけで息の根を止め、クワードハーチでの戦争は終わりを迎えた。

彼女の顔や身体は血を浴びていて、無傷だった。彼女の深紅に染まった長い髪が靡いていた。空を見上げながら、誰にも聞こえない声で呟く彼女。

本気マジでやりあえんのはいつなんだろう。ウチが死ねる日はやってくんのかな?」

つまんねぇ、この世界は──


<最悪>と呼ばれる彼女は瓦礫を踏みつけ、クワードハーチを後にした。



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