第6話微笑む師匠

メノッサに会ってから一週間以上経つが師匠の様子がおかしい。私が声をかけても返事が返ってくることはない。寂しげな表情が多くなっていた。

「できるようになりました!師匠っ」

「えっ、ああ。見せて、ミニミア」

私は、手を前に出して掌からビー玉サイズの黄色く淡い光を放つ球体があらわれる。球体に身体に流れる魔力を流し込み、光を強める。

「順調だね、ミニミア。今はそのままでいいけど、相手に投げることも体内にしのばせることもできるよ。それは応用編ってところかな」

「それもできないと師匠には近づけないのか......」

「自分を追いこみすぎると引き出せるものも引き出せなくなる、覚えておくこと」

頭を優しく撫でてくれる師匠。

「わかりましたっ、珍しいのがいます。何ですか?」

空を飛んでいる小鳥をさして、訊ねる。

空を飛んでいる小鳥は、水色の体毛に覆われていて、腹の辺りが灰色で翼は長く、体のサイズと合っていない。

水色の小鳥は師匠の左肩にちょこんとのって、鳴き出す。いや、話し出す。

「『あいつから聞いた。無事を祈る』とのことだっ」

甲高い声の小鳥だった。

「ありがとう、メノッサ」

師匠は、小鳥が飛び去るとそう呟き、微笑む。

師匠は、空を仰ぎ見て大きく息を吸う。

師匠がメノッサに死なないでと言ったことが引っかかっていた。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る