第5話師匠とメノッサの間には

一週間経過し、特訓を続けていた。魔力が増加し、扱いこなせなかった魔法も多少であるが扱えるようになったが、師匠の力にはまだ及ばない。

特訓の様子を倒れた丸太に腰をおろし口を挟むことなく見守る師匠。

吹いていなかった風が吹いてきて、勢いが増していく風。

「こいつはまさか......」

師匠が一度も見たことのない表情でそう呟き、丸太から立ち上がりその場を動かない。

微かに聞こえた師匠の声。


「やっと見つけましたぜぇ、お師匠様ぁ~。こんなところで油を売ってないで戻ってきてくださいよ。ってそのチビはっ、弱い弱すぎるっ!あんたはそんなのと関わるよりっ──」


頭上から聞こえた、風音がするにも関わらず高く可愛らしい、響く声。


お師匠様という割に慕っていない感じの話し方をする、漆黒のローブを身に纏い多少明るい金髪を後ろで団子のように纏めていた女性。

「やはりお前の仕業か。口出しするな、考えがあってのこと。村に迷惑をかけるな、何度言わせる」

師匠の言葉を聞いた彼女は唇を噛みしめ、静かに、「静まれ」と口にする。

さきほどまで吹いていた風が嘘のようにおさまる。

「見おろしてないで、おりてこいっ。メノッサ」

彼女の跨がる箒が降下する、彼女は地面に脚がつく前に箒の柄を持ち、音をたてず地面を歩く。師匠の前まで歩いていき、ビンタをする体勢にはいり、師匠の頬に触れる直前のところで手がとまる。

「くそっ、やっぱ無理かよっ」

そう吐き捨て、師匠を睨む彼女。

「悪いがあの人に伝えてくれないか、メノッサ」

「はぁっ、あのいけすかない奴にぃ?あいつに頼めよっ」

またも吐き捨て、箒に跨がろうとする彼女の腕を掴む師匠。

「死なないで。メノッサ」

さきほどとは違う、いつもの優しい師匠の声音。

彼女は、師匠の手を振りほどき、無言で箒に跨がり去っていく。

師匠は、丸太に座り直し足もとに目を落とし、そのまま微動だにしない。

話しかけられずに特訓を再開する。


空にはたくさんの星が輝いている。未だ帰っておらず、疲労して、仰向けになり、目の前に広がる綺麗な夜空を見ている私。

師匠は変わらず、丸太に座り、「ここまでにしよう」などと言わずにいる。



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