廃教会と聖女様
王城の一件から数日後…
私は強いスキルを発現するべく教会へ来ていた。
…といってもさびれた廃教会だけど。
授業?
そんなのサボってきたよ。
ロン先生が数日間出張に行くらしくて臨時の先生(名前忘れた)が入ってきたんだけど。
これがめちゃくちゃつまらない。
魔法基礎の教科書の内容をずっとやってんだよ?
そんなのつまらないに決まってるじゃん。
しかもそいつなんか嫌らしい顔してたし…、
ちなみにリトアは竜の里なる場所に行ってくるといって旅立っていった。
確かリトアの親戚がいる場所…とか言ってたけど
詳細はよく聞かなかった。
そんなわけで一人で何しようかってなってここにたどり着いたってわけだ。
「回復の術を知るにはやっぱり教会だよね…まぁ廃れてっけど」
前に学校の付近の教会に見学申し込んだけど断られたんだよね。
『関係者と信者と勇者以外は立ち入り禁止です』って。
私も勇者と同じようなもんだろ。
転生者と転移者だし。
まぁ入れなかったものは仕方がないけど。
「廃教会でほんとに回復魔法なんて覚えられるのかな?」
もし手に入ったら大きな戦力アップになるだろう。
私のスキルって体力削るんだよね…。
そこが改善されたらきっと戦いも少しは楽になるはずだし。
「さて…ごめんくださーい。どなたかいませんか…?」
扉を開けるとそこは元教会とは思えないほど酷く寂れていた。
使われなくなってからもうずいぶんと経つのだろう。
廃教会と呼ばれているだけのことはある。
「すごい荒れてる…」
きっと昔、ここで何かがあったのだろう。
至る所に血痕らしきものが散らばっている。
「あら?どなたですか?」
そんな声がして私は後ろを振り返った。
そこには黒い修道服を着た女の人がいた。
黒い修道服ってめちゃくちゃ怪しいんですけど?
邪教の人だったりしないよね…?
少し、警戒した方が良さそうかな…。
「私、回復魔法を覚えたくてそのヒントになる場所を巡ってるんです。」
「あら…教会の方には行かれたんですか?」
「行ったんですが門前払いされてしまって…」
「そうなんですか…。それはお気の毒でしたね?」
女の人はゆったりとした声でにっこりとしてそういう。
一見したら普通に優しそうな女の人だ。
「…ここは廃教会と聞きましたが、あなたはここに何をしに来たんですか?」
返答次第では敵対することになるが…
「私の家計はここで代々聖女をさせていただいております。」
聖女…
人々の傷を癒し神の声を聴き伝える者だったかな…。
RPGなら勇者と共に旅をしたりするものだけど。
この世界では勇者はまだ旅立ってないから
「でもここはすでに教会ではないですよね?」
「しかし神はまだいらっしゃるのでお祈りは出来るんです。」
「…そうなんですか」
私にはよく分からないけどそんなものなのか。
「回復魔法習得のヒントってありますか?」
「そうですね…聖魔法は代々聖女と呼ばれる一族でないと扱うのは難しいんですよ。」
それは初耳だ。
どの本にも書いてなかったんだけど…
この世界では常識だったりするんだろうか?
「しかし扱えないというわけではないですよ。」
そう言ってニコリと笑う。
「あなたにも神様のご加護がありますように…」
聖女さんがそう言うと不思議な力が私に流れ込んでくる。
不思議な…あったかいような力が。
「今のは?」
「聖魔法がうまく使えるようになるおまじないみたいなものです。」
「ではレッスンを始めます。」
「あの」
「なんでしょう?」
「こちらから聞いておいてなんなんですが教えてもらっちゃっていいんですか?
お家の秘伝だったりしないんですか?」
「いいんです。困ってる人は見過ごせませんから」
「そう言うことならよろしくお願いします。」
「では胸の前で手を合わせてください。」
「こうですか?」
言われた通りに胸に手を当ててみる。
「そうです。そして目を瞑って神に祈るのです。」
「…」
私は目を瞑り集中する。
イメージ…。
自分が回復魔法を使っているところを想像する。
《スキル:回復を取得しました。》
「ありがとうございます。おかげで回復魔法を覚えることが出来ました。」
「いえ。それにしてもこんなに早く回復魔法を習得できる方がいるとは思いませんでした。」
「まぁ…それは…」
チート持ってますなんて言えないしなぁ。
ここは適当に言っておこう。
「これが神様のご加護…なのかなと」
「ふふっそうですね。それでは私は用がありますので」
そう言って聖女の女の人は帰っていった。
「…あ、名前聞いてないわ。」
女の人が帰ってから名前を聞いてないのを思い出した。
まぁもう会わないし別にいっか。
「さて私も帰りますか。」
私は転移を使って寮へと戻った。
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次の日…
「君は何を考えているんだ!授業をサボるなんて!」
私は新しく来た先生(名前忘れた)に叱られていた。
内容は先日、授業をサボっていた件だ。
「お言葉ですが先生は私より魔法がうまいんですか?」
「何を言っているんだ!今はそんな話してないだろう!」
「いえ。重要なことです。私は自分より弱い人間に教わることはありませんので。」
今まで魔法や剣を教わったのだって元剣聖や英雄…それに聖女だけだし。
こんな明らかに弱そうでなんか汚そうなデブになんも教わることはない。
「逆に聞くが君は私より強いのか?そんなわけないだろ?
あまり大人をからかうなよ?」
そう言って先生は水の魔法を出して見せる。
…小さい水の球を。
「どうだ?私はこれでも先生なんだぞ?これからはもっと敬って…」
そう言っている先生の前で私は風の中級応用魔法、ウインドアローを撃って見せる。
「…で?誰が誰より強いんですか?」
「き、今日のところは勘弁してやる。教室に行きたまえ。」
「では失礼します。」
そう言って私は教室へ戻った。
後日、別の先生から木が折れている。
あなたのせいではないのか。
と聞かれたので先生に唆されたと言っておいた。
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