波乱な王城での出来事
課外学習から数日が経ったある日…
『アリスー。早く寮に帰ろう?』
「少し待ってください。リトア。」
「アリス。ちょっといいか?」
「?ロン先生?どうかしましたか?」
リトアと帰ろうとしていた私をロン先生が引き留めた
なにか用事があるのだろうか?
「お前、洞窟から帰ってきたときに誰か連れてたろ?」
「ああ…。あの子ですか…。」
先生が言ってるのはあのゴブリンに襲われてた女の子のことだろう。
まぁあそこは
転移陣で帰ってきて別れた後会ってなかったのよね。
そもそも名前も聞いてなかったし。
リョウゴにはちょくちょく会いに行っていたんだけど。
「その子がどうしたんですか?」
「実はな、ぜひお礼したいと…親御さんが…」
「そんなの適当にロン先生が代わりに受けておいておいてください。」
「それがな?その親御さんっていうのが…国王陛下なんだよ。」
「…はい?」
よく聞こえなかったな。
特に国王陛下ってところが。
「だから…王様がお前をご指名なんだよ。
助けられた娘ってのが探索に出てた第四王女らしくてな。
ぜひとも助けた人にお会いしたいそうだ。」
「めんどくさいですね…」
実にめんどくさい。
またあの子に会えるのはちょっと楽しみだけど王様に会うのはめんどくさい。
私、畏まった態度とか苦手なんだよね…。
だいたい王様ってセレノ王子が言ってた通りならクソ屑でしょ?
そんなやつに頭下げたくないな…。
『素が漏れてるよ?』
「おっと…。何でもないです。私、なんにも言ってないです。」
あっぶねぇ…。
もう少しで私の心優しいイメージが崩れるところだった。
まぁとりあえずそれは脇に置いておくとしよう。
「ロン先生が助けたってことに出来ませんか?」
「無理だ。王女様はお前の顔を見てる。誤魔化すのは不可能だ。」
「変身魔法があるじゃないですか。」
「俺は変身魔法は使えん。そもそもそんなことしたら俺の首が飛ぶ。
面倒だとは思うが、行ってくれ」
そう言ってロン先生は私の足元に魔法陣を描く。
…まさかこの人、私に転移魔法使おうとしてる?
「ちょ…」
抵抗しようとしたときには時すでに遅し。
もう既に城の前まで飛ばされていた。
くっ…あの教師め…何が変身魔法は使えないだよ!
この前、娼館に行くのに別人に変身してただろ!
娼館に言ってたこと奥さんにばらしてやろうか…。
とロン先生に恨みを募らせていると門番さんに話しかけられた。
「ここにどんな御用かな?お嬢さん。」
「あー。国王様に呼ばれまして…」
「あ、あなたが王が言っていたミア様を助けてくださった御方ですか。
大変失礼致しました!」
「そう畏まらなくても大丈夫ですよ。私はしがない公爵令嬢…いえ今は一魔法学校生ですから」
畏まられるのって苦手なんだよね…。
なんていうかめんどくさい。
「こ、公爵令嬢!?なおさらご無礼を…」
「あ、やば…」
勢いで口に出しちゃった。
「急いでるんで中に通してもらっていいですか?」
「し、失礼しました!」
門番さんはそう言って扉を開けた。
開けた瞬間だった。
「やっと会えましたーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!」
そう叫んで黒い影が突っ込んできた。
「ぐふっ…誰…」
あれ…?シェリルの時に激突耐性ついたのに…
「覚えていませんか?私です。洞窟で助けていただいた第四王女のミア=イア=スクレットです。」
「ああ…ミア様…テンション違いませんか…?」
洞窟の時のミア様、もっと落ち着いてたよね…
「お名前!お名前を教えてください!」
「アリスって言います。」
「アリス様…ですか。なんだか不思議なお名前ですね。」
「そうですか?」
アリス…という名前はこの世界ではさほど珍しいものではない。
知り合いの令嬢にもアリスという名前の人間は何人もいる。
不思議の国のアリス…なんてね。
「あ、お父様に会いに来たんですよね、案内するから付いてきてください!」
そう言ってミア様は私の手を引いて歩きだした。
ほんとなら転移で一気に王室まで行きたいが…。
まぁ手を離してくれなさそうだし諦めよう。
そう思って私は歩きだした。
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ミア様に手を引かれながらなんとか王室へたどり着いた。
途中、お腹が空いたからとミア様がおやつを食べに行ったり、食べてからお昼寝してたりと
随分と寄り道をしたが。
…あれ?寄り道ってレベルじゃなくない?と思ったけど。
ちなみにミア様はそのまま布団で寝てる。
「我を待たせるとは何事だ?愚民。何をしていた。」
中に入るといきなり冷たい声が響いてきた。
王様は偉そうな態度でこちらを見下している。
まぁ王様だから偉いんだろうけどさ…
セレノ王子の話聞いてるからいい奴には全く見えないよね…。
それに私にお礼を言いたいような人の態度じゃないし
ちなみに王妃様は不在だ。
きっと浮気でもしてるんだろうね。
旦那、こんなのだし。
まぁ適当ないいわけでもしとくか。
「かわいらしいおもてなしを受けまして。」
「そんなことはどうでもいい。貴様か。ミアを誑かしたのは」
私が返答を返すと唐突に王様は訳の分からないことを聞いてきた
この人頭悪いんだろうか?
王様とはいえその態度はないと思う。
あの場は協力しないといけない雰囲気だったから
ミア様を助けたことをどうだこうだ言うつもりはないけど…
仮にも娘の命の恩人にその態度はおかしいのではないか?
あのまま助けなかったらミア様死んでたよ?
「」
そう考え始めた時、セレノ様のことを思い出した。
そう言えばセレノ様はとても寂しそうだった…。
…こいつがこんな態度でふんぞり返っているからセレノ様はあんな顔をしていたのか。
いつかこいつを王座から引きずり降ろしてやろう。
そう思っていると王様がぶつぶつと独り言を言い始めた
「全く…せっかくあいつを殺して王座を得たというのに…」
「イライラが止まらん…。適当なメイドでも夜の相手に…」
「セレノのやつも殺すべきか…。」
そしてちらりとこちらを見る。
「ん?まだいたのか愚民。消えろ。もう話は終わりだ。」
一言そう言ってまたぶつぶつと独り言を言い始めた。
「…面白いこと聞いちゃった♪」
私は思わぬ収穫を得て寮へ戻るのだった。
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