課外学習に行こう②

目の前で起こったありのままのことをはなすぜ…!


ドラゴンが私のスキルを掻き消したと思ったら爆発して女の子が出てきた…。


…なぜ?バグ?わけがわからないよ。


この子が…さっきのドラゴン?


いやいやいや!姿と口調が違いすぎるし…


さっきと比べて随分と可愛らしくなったし…


でも状況から見てそれしかありえないし…


そんなアニメとか漫画みたいな展開…


あ、ここ魔法のある世界だからあってもおかしくないか。


じゃあ問題ない…のかな?


『…?何をそんなに見つめてるの?』


「…目の前でありえないことが起こったので」


『なにをいって…あれ?あなたそんなに大きかったっけ?』


そう言って私を見て不思議がっている女の子(ドラゴン)


私が大きくなったんじゃなくてあなたが小さくなったんだよ。


「鏡見ますか?」


私はちょうど持っていた鏡を目の前の元ドラゴンと思しき女の子に今の姿を見せる。


そこには小さくなった彼女の姿が映っている


『わぁ…可愛い女の子ですね。お名前は?』


女の子(ドラゴン)は目の前の鏡に映る自分に話しかけ始める。


しかしその鏡に映る女の子は同じ動きをするだけでしゃべらない。


女の子は不思議そうに鏡を叩いている。


どうやら鏡というもの自体を知らないらしい。


「…そこに移ってる可愛らしい女の子はあなたですよ」


『…ん?』


「それは鏡という道具で自分の姿を映すものなのです。」


『じゃあ…この鏡?に映っている女の子は…私…?』


ドラゴンは青ざめた表情でこちらに尋ねてくる。


残念ながらそこに写っている可愛らしい女の子はあなたです。


「そういうことです。さっきの爆発で何かが起こったんでしょうね」


『…私の羽や尻尾は?』


「出せないんですか?」


漫画とかなら自由に羽とか尻尾とか出せたりするものだけど…


やはりさっきの爆発で何かがあったのだろうか?


爆発の影響で吹っ飛んだとか?


…ないかな。


『うーん…!』


女の子が踏ん張ると


ポンっと音がして女の子の背中には小さな羽が生えていた。


尻尾はだめだったらしい。


魔力が足りないとかそんなやつかな?


「…羽生えましたね」


『…うん。』


もうこれ以上この問題には突っ込まないで上げよう。


「そう言えばさっき戦ってた時と口調が違うのはなぜですか?」


『あれは…強そうなドラゴンをイメージしてみただけで…


実はこっちが素なの。


私、ほんとはあんまり強くないし。』


「そうなんですか。そう言えばお名前は?」


『えっと…前は…なんて呼ばれてたかな?


最後に喋れる生物と関わったのが云百年も前だから忘れちゃった。』


「名前は必要です。私がつけて差し上げますよ。」


いつまでも女の子(ドラゴン)って表記するわけにはいかないし。


名前…名前…


付けてあげるといったものの…


思えばこういうのはあんまり得意じゃないなぁ…


なんかよさげな名前…名前…。


あ、そう言えば友達に借りた乙女ゲームにドラゴンが出てた気がする。


主人公の前に立ちはだかる巨竜で確か名前は…リトア。


確か力を使いすぎて誰かの手下として操られて出てくるんだよね。


複数の属性を操る最強の竜…とかいう設定だったはず。


まぁそんなドラゴンがここに出てくるわけないし、名前を借りちゃっても大丈夫だろ。


ここはそのゲームの世界ってわけじゃないだろうし。


「リトア…なんてどうですか?」


『リトア…うん。なんかいいね。』


どうやら気に入ってくれたみたいでよかった。


嫌だ。とか言われたらたまらず泣くところだった。


「とりあえず外に…ってふさがっちゃってますね…」


リトアを連れて外に出ようとしたが道が岩でふさがれていた。


さっきの爆発で洞窟が崩れてしまったのだろう。


道は閉ざされていて開きそうにない。


「ハンマー」


《スキル:ハンマーを発動…出来ませんでした。


先ほどの戦いで力を使いすぎたと推測します。》


「…さっきシキザクラにパワーを送りすぎましたか」


リトアとの戦いでシキザクラに力を使いすぎたらしい。


多分だけど桜之一撃がかなりエネルギーを食っているんだと思う。


今後はあんまり使わないようにしないと…。


『私もさっきの戦いで少し疲れた…』


そう言ってリトアは洞窟の壁にもたれ掛かる。


二人ともさっきの戦いで力を使いすぎてしまったみたいだ。


ここで休憩するのが一番安全かな…。


「そうだ。転移は」


《スキル:転移を発動します。


場所の指定はできませんがよろしいですか?》


…うん。


やめておこう。


どこに飛ばされるか分からないのは怖い。


「そう言えばリトアはここにずっといるんですか?」


『うん。70年くらいかなー。動いてなかったから体がなまってたみたい。』


「では私と戦ったあれは本来の力ではなかったのですか?」


『本来の力は元住んでたところを出るときにほとんど持っていかれちゃってね…


今はここで力を回復してたところだったんだ。』


「このダンジョンの中で安全に休める場所はありませんか?」


『私の寝床は比較的安全だったんだけど…


さっきの戦いで崩れちゃったしなぁ…


あ、もう二階層下にどのモンスターも住んでない空洞があったと思うよ』


「もう二階層下ですか…」


ただでさえ上に上がる方法がないっていうのにさらに下に降りるのは…


でももしかしたらもっと下に降りれば転移魔法陣とかあるかも?


ここで休んでたら体力も回復してハンマーも使えるようになるだろうけど…


その間にモンスターに襲われないとも限らない。


リトアも戦えない状態…だけど…。


可能性があるなら進んだ方がよさそう…かな?


「先に進みましょう。もしかしたら別に上に上がる階段があるかもしれません。」


『そうだね。私も歩いてればこのダンジョンの構造を思い出せるかも』


そう言って私達は奥へと進み始めた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「見つけました。下に降りる階段です。」


階段…というには少々作りが荒い気がするが、下層への入り口ということに変わりはない。


「リトア。慎重に進みましょう。この先なにが待っているかわかりません。」


ここからは慎重にいかなければ、死ぬことだってあり得る。


『そうだね。確か下にはおっきな蛇とかワイバーンとか住んでたはずだし。』


「うちの先生はゴブリンしか出ないって言ってましたけど…」


『多分、人間は一番上の階層しか探索しないからじゃないかな?


下の階にはゴブリン以外もたくさんいるよ。


あと下の階で生き残っているゴブリンは相当強いよ』


「気を引き締めていかないといけませんね。」


そう言いながら私達は階段を下りる。


その降りた階層で一番最初に見たものは…


「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!助けてくださいぃぃぃぃ!!!!!!!!!」


そう叫びながら走ってくる女の子とその裏から迫るゴブリンの大群だった。


え?なにあの大量のゴブリン。


いくらこの下層が過酷で生き残りにくいからってあの大群は…って


あの女の子…こっちに…向かってきてる?


「…流石に今のたいりょくじゃああの数は相手出来ませんね…」


『…私も。』


ってことは…


「『逃げろォォォォォォォォぉォ!!!!!!』」


私達は全力で逃げる。


ただそれだけしか出来なかった。


「そこのあなた。なんてものに巻き込んでくれたんですか。」


「仕方ないじゃないですか!?私だって逃げなきゃいけないんですから!


そもそもなんであなたたちはこんなところにいるんです!?


ここ下層ですよ!?」


「知ってますよ。上に上がれなくなったから下に降りてきたんです。」


私達だって降りたくて降りてきたわけじゃないんだ。


道がそれしかなかったんだ。


「とりあえずさっき体力まで休んでたので体力は回復しました。」


多分私達三人ぐらいなら転移でなんとか脱出できるだろう。


「転移!」


《スキル:転移を発動します。


若干不安定な状態のため洞窟内のどこかに転移します。》


「背に腹は代えられません…。それでお願いします。」


転移が発動されると別の場所に移動出来た…


のだが。


『ここ…最下層だよ。』


…どうやら一番奥まで来てしまったらしい。

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