課外学習に行こう①

「今日は課外学習だ。外に出るぞー」


教壇に立ったロン先生はそう言って全員に地図を配布する。


「今配った地図に書いてあるバツ印のところにあるのがここから数キロ先にいったところにある洞窟だ。


三人一組になってその洞窟を攻略してもらう。」


連携の勉強…って行ったところかな?


ロン先生も面白そうなことを考え付いたものだ。


課外学習なら外の世界の危険性も分かるし、チーム線なら連携の大切さも分かる。


「とりあえず勇者と勇者は組むの禁止なー。チームバランスが崩れる。


あと…同じ理由でアリスと勇者のペアも禁止だ。


…俺が決めた方が早いか。ほいっと」


ロン先生は手慣れた手付きで私たちの名前が書かれた紙を並び替えていく。


その結果…


アリス ロイル  サーシャ


幸   ラナール クララ


香音  ラーニャ シェリル


夏美  クリウス ライゼ


という組み合わせになった。


「よろしくお願いしますね。ロイルさん。サーシャさん。」


忍びっぽい方がロイルで


黒髪の可愛らしい方がサーシャね。


「はい!首席さんが一緒なのは心強いですね!」


「…ああ。首席の力、まじかで見せてもらう。」


二人とも私の実力に期待してくれているらしい。


力をセーブしないといけないからそんな大きな魔法は使えないけど。


二人の期待に答えられるように頑張るとしますか。


そう言えばサーシャにはどこかで会ったことあると思うんだよね。


どこだったかな…?


「サーシャさん。私達、会ったことありますよね?」


「んーと…あ!パーティの時にお話ししましたね。


少ししか話しませんでしたけど…。」


「自己紹介はすんだなー。じゃ。」


そう言ってロン先生は私たち全員を一瞬で洞窟前まで移動させた


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ここはゴブリンとかしか出ないからな。


初心者には安心安全ってわけだ。


まぁアリスには退屈かもしれんが。」


「そんなことないですけど…」


ロン先生の中で私はどんな強さに設定されてるのん?


私も洞窟探検は楽しみだったりするよ?


「ま、別に何でもいいか。じゃあアリスのチームからスタートしてくれ。」


「了解しました。」


「承知した。」


「はーい。」


そう返事をして私達は洞窟内へ入った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「薄暗いですね…」


「そうですね…」


当然と言えば当然だが洞窟内は薄暗く不気味だ。


ロン先生、松明ぐらい用意してくれても良かったのに…


「ここは俺に任せろ。ライト」


そう言ってロイルは光初級魔法のライトで明りを灯す。


「おー。これで進めますね。」


「迅速に先に進もう。」


そう言って二人は先に進む。


「…」


ロン先生はこういうことも考えてチームを組んでたってことかな?


だとしたらすごい。


「アリスさーん?行きますよー?」


「はい。今行きますね…」


そう言って二人に追いつこうとするとズシン…と音がする。


「…?」


この足音…ゴブリンじゃないな…?


洞窟に響くぐらいの音となるとオーガか?


それともドラゴンか…?


いや流石にこんな浅い層にドラゴンなんているわけがない。


前に読んだ本にはドラゴンは秘境に住んでいてめったに姿を見せないと書いてあった。


たまに見かけるのはその秘境を追い出されたものかドラゴンを名乗るワイバーンだと。


じゃあワイバーンの方が可能性は高いか…。


「なんにせよ警戒をしないと…」


ドラゴンだろうがワイバーンだろうが対策しなければならない。


そう思ったその時だった。


『誰だ?私の目を覚まさせるものは…』


そんな声が洞窟内に響く。


どうやらさっきの地響きを起こしたやつの声らしい。


「どこから喋っているんですか?」


「もう少し下の階層だ。


まぁお前ら人間にはたどり着けないと思うがな。」


「二人とも。離れていてください。ここは私が。


ロン先生にこのことを伝えてきてくれませんか?」


「でも…アリスさんは…」


「いいからお願いしますね?」


そう言って私は二人に転移を発動して外に脱出させた。


これで…心置きなく戦える。


「待っていなさい。


今から行きますから。ハンマー」


《スキル:ハンマーを発動しました。》


そう言って私はハンマーを使って…


『私を起こした愚か者よ。


そんなものでは私のところにはたどり着かない…ぞ…?』


床をぶち抜いてドラゴンの元へ降りる。


「降りてくるとは思ってなかったって顔ですね。」


『当たり前でしょうが!床ぶち抜いてくるとは思わなかったわ!


ここお前がいたところから7階層もしたなんだぞ!?』


「…どうしましょう?下に降りすぎてしまいました。


転移魔法使えますかね?」


『もう帰りの心配か!?


そんな余裕はないぞ!』


そう言っていきなりドラゴンは炎を吐いてくる。


【獄炎乱舞】


「ウォーターボール!」


『そんなものは無意味だ』


【アイスブレス】


ウォーターボールは氷の吐息にカチコチに凍らされて砕かれてしまう。


全ての攻撃に反応されるなんてリリンさん以来か…


「…一筋縄ではいきませんか」


かくなるうえは消滅のスキルを使えば勝てるんだろうけど…。


うーん。それが防がれたときの対策は…。


『我を無視するでない!』


【ファイアショット】


考え事をしていたらドラゴンに炎を吐かれました。


まぁ避けるんですけどね?


『ぐっ…攻撃が全く聞かぬ…』


そりゃ…あなたの攻撃も強いけど


私はもっと強い人と稽古で戦ってましたからね。


「ではこちらの反撃と行きましょうか。来なさい。シキザクラ」


そう言うと私の手元にシキザクラが召喚される。


『そ、その刀は…!』


「私の愛刀です。最近手に入れたんですがね」


『まさかまだこの世界にあったなんて…!


持ち主ごと消し飛ばしたはずだったのだが…』


口ぶりから察するにあのドラゴンはこの刀のことを知っているらしい。


それに少しトラウマも抱えているらしい。


これは好機じゃないかな?


この刀で息の根を止めてあげよう。


「では…一息に屠って差し上げましょう。」


『や、やめろ…!』


「切り刻め…桜之一撃。」


私の周りに桜が現れてその桜はドラゴンを包みこむ。


『なんだ…この花びらは…!体が動かない…!』


「その桜に包まれたらたとえ転移魔法だろうと抜け出せませんよ?」


『ぐぉぉぉ!!!!!!』


ドラゴンは雄たけびを上げて爆発した…はずだった。


『いたた…あれ?私、死んでない…』


ドラゴンが爆発したその跡から出てきたのは小さな女の子だった。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


一方外ではサーシャの報告を受けたロンたちが苦悩していた。


こんな序盤にドラゴンがでて、さらに生徒が取り残されているのだ。


助けにはいきたいが下手に動くと被害が増えかねない。


「…勇者たち倒せる?ドラゴン。」


「「「ちょっと…」」」


「だよなぁ…」


ロン先生は落胆する。勇者でも無理だった。


もう打つ手はなさそうか…。


そう思ったその時だった。


ドォーーーーーーーーーーーンと。


洞窟からものすごい音が響いた。


「無事でいてくれよ…。アリス。」


ロンは未だ中でドラゴンと戦う教え子の名前をそう呟いた。





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