決闘

「やい!お前!首席だか何だか知らないがな…!俺の方が強いんだよ!


勝負しろ!」


入学式が終わり、先生のあいさつが終わり、その日は解散となった…のだが。


私は帰れていないでいる。


目の前の男のせいだ。


よく分からないけど帰ろうとしたら俺の方が強いから勝負しろ…と勝負を吹っかけてきたのである。


どうでもいい…どうでもいいから早く帰りたい…。


寮までの道あんまり覚えてないから早く帰りたいのに…


だいたい私は首席とかどうでもいいのよ。


なんかシェリルと決着付けてたらこうなってただけだし。


だけど勝負しないと帰れなさそうなんだよね…


それにこの男…


私と一回会っていることを忘れているのだろうか?


さも初対面のような態度だけど。


まぁとりあえずは一回断ってみよう。


「誰か存じませんが私にも予定というものがありますので帰らせていただけませんか?」


「ふん!怖気づいたのか?こんなのが首席だなんて笑わせるな!」


「私はここに通うだけで十分なので。首席が欲しいならどうぞ差し上げます。」


帰れるなら首席の座ぐらいくれてやろう。


まぁロン先生が許してくれればだけど。


「待て!」


そう言ってロンドは私の手首を掴んでくる。


乙女の柔肌に軽々しく触れるなんて…


この男はなんて恐れ知らずなんだろうか?


私じゃなかったらぼっこぼこにされて地面に埋められてたよ…


というかそんなに私と勝負したいんだ…。


仕方ない。そこまで言うなら勝負してあげようじゃないか。


「来てください。ボコボコにしてあげますよ。」


「お、やっとやる気になったのか!ぼこぼこにしてやる!」


私達はそう言い合いながら場所を移動した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


私達は少し場所を移動して学校が所有するコロッセオに来ていた。


このコロッセオという施設は学生と学生が決闘をするために作られた施設であり、決闘での使用が常時許可されている。


全体に上級回復魔法の結界が貼られており、めったに死ぬことはないそうだ。


結界の回復許容値を超えなければ…らしいけど。


ちなみに決闘システムというのは、この学校のシステムの一つで


いうなれば殺す以外何でもありの一騎打ちだ。


「ここなら怪我をしてもすぐに治るので安心ですね」


「まぁ俺はどこでも大丈夫だけどな。


どこからその自信沸いてくるんですか?


私にも分けてほしいくらいだよ。


「では始めましょうか。どこからでもかかってきてください」


スキルをフル活用して戦ってもいいけどそれじゃ一方的すぎる。


最初はスキルを使わずに…


そうだ。


今朝貰ったばかりのあれがある。


「来なさい。神竜刀『シキザクラ』」


私がそう言うと手元にシキザクラが現れる。


そして手に持った瞬間、シキザクラの使い方が頭の中に入ってくる。


「剣だぁ?男は黙って魔法一択だ!食らえ!」


そう言ってロンドはファイアショットを繰り出してくる。


どうやら刀のことは知らないらしい。


ちょうどいい機会だから力を見せてやろう。


相手のファイアショットは…


普通より少し強いくらいの威力で、普通の人なら軽く倒せるくらいの威力だ。


そう。普通の人ならば。


私は少し普通じゃない転生者。


「これくらい…避けなくても問題ないです。」


そう言って私はシキザクラで魔法を切って見せる。


「魔法を切った…だと?」


男は驚いているがシキザクラにはまだ秘密がある。


「お返しに私のとっておきを見せてあげましょう。


冥土へのお土産です。」


そう言って私はシキザクラに水を纏わせる。


「このシキザクラはですね?


送り込んだ魔力の属性によって性質が変わるんです。」


「そんな…まさか…」


「覚えておいてください。


私は首席なんかには興味はありません。


肩書だけなら差し上げます。


ですが…他人からもらった頂点なんて屈辱以外の何物でもないですよ?」


そう言って私は刀を振り下ろした。


相手の男は切る直前で気絶してしまった。


あーあ。防御しないから…


まぁどうせそのうち復活するでしょ。


回復魔法の結界が貼られてるんだから。


そう言えば前の世界で友達に借りてやった何かのゲームでもこんなうざったるい攻略対象がいたような…


金髪で…やたらうざくて…でもルートに入るとイケメンになるんだよね。


「まぁ…気のせいか。」


転生は現実にもあり得ることだからいいけど…


ゲームの中に転生とかありえないしね。


そういうのは小説とかアニメだけの話だ。


そもそも私、そのゲームは友達に借りて数回遊んだだけで転生したいって思うほどやってないし。


仮にここがその世界で私がストーリーやらなんやらを覚えてたとしても


クラスメイトが転移してきている時点で既に物語は書き換わっているだろうし。


「さてと帰りますか」


私は倒れて動かない男を横目に転移のスキルを使い寮へと戻った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


後日、コロッセオに倒れていた男を決闘をしに来た生徒達が発見して大問題になった。


男の発言から私とその男が決闘をしたということがバレた。


ロン先生からは『あいつは魔力もそんなにないからもう少し手加減してやって欲しかった』といわれた。


いやそんなの知らないけど?


あっちが突っかかってきて煽ってきたんだけど?


私悪くないよね。


そもそも決闘したこと話さないでよ…。


「でも今度からは威力抑えめでいこう」


そう心に決めて今日も私は学園生活を楽しむのだった。

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