王都の探検

試験から二か月たったある日…


私は学校の寮へ引っ越しするべく必要なものを王都に買いに来ていた。


この世界に来てから買い物に来るのは初めてだ。


何か月も経ってるけど色々あって買い物は楽しめてなかったからなぁ…。


それにいつも欲しいものはメイドさんたちが用意してくれていたから


買い物をする必要がなかった。


だけど今回はそうは言ってられない。


一人暮らしみたいなものなんだから自分の使うものは自分で買いそろえないと…


というわけで王都へ繰り出したわけである。


「とは言ったものの…どうしようかなぁ。


まずはなにか食べよう」


必要なものを買いに行く前に軽く腹ごしらえだ。


思えばこの世界のジャンクフードみたいなものって食べたことなかったし。


家で出てくるのはいかにも貴族が食べそうなものばっかりだったからなぁ。


前回、パーティで王都に来た時に馬車から見た串焼き屋さん寄ってみたかったんだよね。


この世界の串焼き…。


魔物の肉とか使ってる可能性があるから結構楽しみなんだよね。


「すみません。店主さん。串焼きを二本くださいな。」


「あいよ!お?嬢ちゃん。貴族さんかい?」


「はい。そうですが…」


もしかして貴族はいつも平民を見下してるから買うなって意味ですか?


「いいのかい?こんな辺鄙な店で食べ物なんて買って」


「ええ。前々から気になっていたもので。」


「貴族様の嬢ちゃんにそんなこと言ってもらえるなんて嬉しいねぇ!


よし!おまけだ。もう二本持ってきな!」


そう言って屋台の店主さんは2本追加した4本を私に渡してくる。


「ではもう二本の代金も…」


「お代はいらねえよ!褒めてもらった礼だ!」


4本分のお代を出そうとすると止められる。


これは何を言っても聞いてもらえそうにはないな…。


ここはありがたくもらっておこう。


「ありがたくいただきます。


後、お友達にここの串焼きは美味しかったと広めておきますね。」


そう言って私は店を後にした。


裏から奥さんの怒号と鈍い音が聞こえてきていたのは聞かなかったことにしよう。


うん。今助けたら多分私もやられる。


見てみぬふりが一番だ。


お達者で…店主さん…


「さて気を取り直して次はどこへ向かいましょうか…」


はむはむと串焼きを食べながら気になっていた場所を見て周る。


そう言えば前に和服っぽいものを来た人を王都で見た気がする…


と言っても馬車の中から一瞬だったから本当に和服だったのかも怪しいところだけど。


「とりあえず服屋を片っ端から見て和服っぽいものがあったら買おう。」


この日のために父からたくさんお金も貰ってきたし。


ちなみにこの世界のお金は主に


金貨


銀貨


銅貨


鉄貨


の4つだ。


王家クラスになると王貨というものがあるらしいけど。


それは王族以外には関係のないお話なので割愛させてもらう。


「よし。いざ探検です。」


というわけで探検スタートである。


まずはこの王都で一番デカい服屋。


事前調査(屋敷内調べ)ではここが一番品ぞろえが良いらしい。


「店員さん?少しよろしいでしょうか。」


「はい!何か御用でしょうか?」


「珍しい服を探しているのですが…」


「珍しい服…ですか?あ!それなら!」


そう言って店員さんは奥へ引っ込んでいく。


もしかしかして一発目からビンゴ?


もう見つかっちゃうとか流石王都。


…なんて思ってた時もありました。


「こちらぱーかーというとても珍しい服でございます!」


確かにこの世界ではパーカーはこっちでは珍しい服なんだろうけど。


「すみません。ちょっと私の考えていたものとは少し違いますね。


もっとこう…こんなのです。」


そう言って私はメモ用に持ってきていた紙に和服の絵を描いて見せる。


「ああ!東の国の服ですね!少々お待ちください。」


そう言って店員はもう一度引っ込んでいった。


私は待っている間財布の中身を確認する。


金貨7枚くらいはあるんだけど…


これで足りるのかな?


もしかしたら結構高かったりするかもしれない。


まぁその時はその時でリリンさんを呼ぼう。


最終手段だけど。


それにしてもこっちでは日本っぽい国は東の国って呼ばれてるんだなー。


和の国とか極東とかじゃないのか。


「まぁとにかく和服が手に入るのはいいなぁ」


「お待たせしました!こちらをご覧ください!」


そう言って奥から戻ってきた店員が持っていたのは和服と言えば和服なのだが…


…袴だった。


ああいや女の子が着ることもあるんだろうけど…


店員がデザインが黒に寄っていて女の子の服というより男子が着る服だ。


「これ…」


「それはとても珍しいハカマという服なのですが…


少し前に東の国の騎士だという男性が売りに来たんです。


その方は店長のお知合いらしくて…


『欲しいというものが現れたらただで譲ってやってくれ』…ということでして。


お求めでしたらお代はいりません。」


「ではそれをいただきます。それと…髪飾りを」


「畏まりました。髪飾りはこれだけあるんですがいかがいたしましょうか?」


そう言って店員が取り出したケースには色々な髪飾りがあった。


これだけあると迷っちゃうけど…。


「決めました。これとこれにします。」


私は剣をモチーフにした髪飾りと桜をモチーフにした髪飾りを選ぶ。


意味は特にないけど。


「ありがとうございました。」


そう言って私は店を後にした。









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る