Bパート 9
――説明せねばならないだろう!
あの時……。
今代騎士団長が抱いた戦士としての覚悟と行動を見届けた
そして、決死の覚悟で戦場におもむかんとする勇者の後押しをするように、新たな
それこそが……紫のホッパー。
すなわち――ギガントホッパーなのだ!
「ギガント……ホッパーだと……?
次から次に……新しい力を……手に入れおって!」
魔人が、左手に新たな弾頭を生み出そうとする。
しかし、この近距離でそれを見逃すギガントホッパーではない!
「ギガントバスター!」
すかさず腰だめに構えた、生まれ変わりし
コンマ一秒もかからず、刃先に備えられたスリットから吸引された空気が圧縮され、鉛の銃弾を遥かにしのぐ威力の空気弾となり撃ち放たれた!
「――ぐはっ!?」
空気弾が撃ち抜いたのは、魔人ではない。
その手に生み出されていた、ロケット弾頭だ!
おそらく、内部に込められているのは火薬ではなく闇の魔力であろう……。
だがそれは、空気弾に貫かれることで火薬同様の爆発を引き起こし、手にしていた魔人をもんどり打たせた。
「やはり……ロケットランチャーだったか……」
倒れる魔人に対し、ホッパーが一歩距離を詰め寄る。
「こんな……こんなはずでは……!?
この……俺が……
――
……どうやら、それがこの魔人の名だったようだ。
バクラはどうにか立ち上がりながら、ホッパーに向けて指を差す。
「貴様さえ……貴様さえ……いなければ……!
俺が……俺の手で……魔人王様を……!」
「バクラといったな?
貴様は一つ、考え違いをしている」
「……何だと!?」
足を止めて
自らの敗因を理解できぬままに倒されるのでは、死んでも死にきれまい。
「貴様を真に追い詰めたのは、おれではない……。
――レクシア王国の誇る騎士たちだ」
「騎士……?
あんな……取るに足らぬ……者らが……だと?」
「いかにギガントの防御力が優れていようと、超遠距離から貴様のロケットランチャーに狙い撃たれ続けられれば限界はきていただろう……。
だが、騎士たちの働きにより貴様の花は根絶され、おれは必要十分な距離まで詰め寄ることができた」
「ぐ……うう……」
ホッパーの言葉に、バクラがうめく。
おそらくこ奴は、倒すべき敵はホッパーのみであると高をくくっていたのだろう。
騎士団長ヒルダの騎竜へ追撃をかけず、騎士スタンレーたちが突破口を探った時に命を奪わなかったことからそれは明らかだ。
だが……実際にはそうではなかった。
騎士たちこそ……人間たちこそ、バクラにとって真に倒さなければならない存在だったのである。
「騎士たちが頭金であるとするならば、おれはその後詰めをする歩に過ぎん……。
貴様が人間を侮っていたこと……それは行動から推測できる。
その人間により必至となったこと、思い知るがいい!」
「何を……わけの……分からぬことを!」
逆上したバクラが、ホッパーに向かって襲いかかった。
手にしたロケットランチャーを鈍器のように振り回そうとするバクラであったが、しかし、
「ギガントアックス!」
……そのような悪あがきが通用するホッパーではない。
変形させ空気砲として扱っていたギガントバスターを、斧本来の姿――ギガントアックスへと素早く戻す。
そして、バクラがランチャーを振り回すよりもひと呼吸早く間合いの内側に踏み込み、剛烈そのものと呼ぶべき一撃を見舞ったのである。
「――ぬんっ!」
「――ぐおはっ!?」
袈裟切りがバクラの胸甲を切り裂き、すさまじいまでの火花をほとばしらせた!
……バスターから放たれる空気弾もまた、バクラが放つロケット弾と同等かそれ以上の破壊力を示してみせた。
だが、口伝にてあらゆる敵を烈断すると伝えられ、ブラックをも上回るギガントホッパーの
「――ぐおっ!? はあ……っ!?」
大灯台屋上を転がり回るバクラであったが、それでもランチャーを手放さなかったのは執念かあるいは他の感情か……。
――ズン。
――ズン。
倒れ伏すバクラに向け、アックスを手にしたホッパーがゆらりと歩む。
鎧による超重量の影響か、その足音は常よりも重く……そして深く鳴り響いた。
「く……っ!
俺は……魔人王様から……この力を……砲を……授かった!」
「――何っ!?」
その言葉に、ホッパーがぴたりと歩みを止める。
しかし、魔人は勇者の疑問に答えることなく立ち上がり、感情を爆発させながら再びがむしゃらに突っ込んできたのだ!
「俺が……
ランチャーという鈍器こそ備えているものの、それはケンカのやり方も分からぬ子供がやみくもに腕を振り回すのといささかも変わらぬ。
――
ホッパーは最も得意とするカウンターからの攻撃を、魔人戦士へと叩き込んでいく!
「――ふんっ!」
「――うぐおっ!?」
斬撃というよりは、殴打の延長として突き出されたアックスの一撃が……。
「――でぃやっ!」
「――がはっ!?」
ランチャーの殴打をかわしざまに下から切り上げた一撃が……。
「――せいやっ!」
「――ぐおあっ!?」
たたらを踏む魔人に再び放たれた袈裟切りが、
「く……くそ……っ!」
「――むん!」
そして、大上段から放たれたランチャーによる殴打を、ホッパーはもうかわすことすらせず左手で受け止めたのである。
「――何っ!?」
「むうううううん……っ!」
――みしり。
――みしみしみし!
金属のきしみたわむ耳障りな音が、掴み上げられたランンチャーから響き渡る!
「ホッパアアァ――――――――――ビイィートッ!」
ただでさえ強大な力を持つギガントホッパーの筋肉が瞬間的に膨れ上がり、ついにランチャーの耐久能力を上回った!
――バッキイィィィィィン!
……そして、バクラを
「そんな……そんな……」
頼みの綱を破壊されたバクラが取った行動はといえば、これは意外なものであった。
「くそおおおおおっ!」
なんと、破壊されたランチャーを投げ捨てると、ホッパーに背を向け駆け出したのである。
……その姿は、これまで戦ってきたいかなる敵よりも情けないものであった。
「――とおっ!」
これにトドメを刺すべく、ギガントホッパーが大きく跳躍する。
そして振りかぶったギガントアックスのトリガーを引き、必殺の力を解放したのだ!
――ビュウオオオオオ!
……という、竜巻のような音と共に、刃の先端へ供えられたスリットが猛烈な勢いで空気を吸引していく。
それはかろうじて燃えていた大灯台のかがり火を消し去り、アックスの背から爆発的な勢いで噴き出したのである。
空気弾として発射可能なほどの圧縮空気を噴射し、斬撃の威力を何十倍にも増幅する……これこそが、ギガントホッパー最大の一撃!
「大ィィィィィ――――――――――烈断ッ!」
頭上から放たれた必殺の唐竹割りは、戦車など及びつかぬ防御力の魔人戦士を両断し……。
「俺が……俺は……もっと……っ!?」
体内に充満していた魔力を漏れ出させると、大爆発を引き起こしたのである。
ギガントホッパーの勝利だ。
「…………………………」
爆発の残り火が燃える大灯台の屋上で、ギガントホッパーは漆黒のマフラーをなびかせながらたたずんでいた。
「魔人王が、配下に能力を与えるほど力を取り戻してきている……。
だが、それで与えたのが地球の技術を元にしたものだと……?
どういう……ことだ……?」
その疑問に答える者は、誰もいない……。
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