第10話 繋がる力

 ポメの話を姉は黙って聞いていた。終わるまで聞いてから、疑問を口にする。

「世界と繋がる力って何? そんな力、持った覚えはないわ」

 ポメの言葉を否定する。

「繋がるといっても、大抵はちょっと運がいいとか、思い通りにことが運んだとかその程度だ。世界を作り変えるほどの力を行使できる人間はほとんどいない。ちょっと運がいいなと思ったことくらいはあるだろう? その力が弟の死によって暴走し、世界を変えた。ケイタの死をなかったことにした」

 ポメの言葉に姉は口を噤む。

 ボクは今朝、姉が起こしに来た時のことを思い出した。心配そうに顔を覗き込まれた。

「顔を覗き込んでいたのは、ボクが生きていることを確かめたかったから?」

 尋ねると、姉は苦笑する。

「気が付いたら、部屋のベッドにいたの。慌てて、ケイタの部屋に行ったわ。ケイタはすやすやと眠っていた。だからあれは夢だと思ったの。でも、心のどこかでただの夢ではないことを感じていたのね。夢の通りに全てが進み、事故が起こることを確信した時、ケイタの代わりに自分が死ぬことを私は選んだの」

 説明した。

「ネエちゃんが死ぬ代わりにケイタが助かって、ケイタが喜ぶと思ったの?」

 ユウキが悔しそうな顔をする。怒っていた。

「……思わない」

 姉は静かに首を横に振る。

「でも、他に方法がないと思った。ケイタを助けるためなら、なんだってする」

 優しい眼差しがボクを見つめた。

「ボクのために何でも出来るなら、死なないでよ」

 ボクは頼む。

「姉ちゃんが死ななくてもボクは死なない。今、この世界はボクと繋がっている。ボクが決めたことがこの世界のルールだ」

 言い切った。

「そうなの?」

 姉はポメに聞く。

「……そうとも言える」

 ポメは小さく首を振った。

「重みが全くないんだけど、信じていいの?」

 姉は困惑する。愛らしいポメラニアンを見て苦笑した。

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