第9話 確認。

 部屋の中はしんとしていた。

 ボクはダイニングのテーブルを挟んで姉と向かい合う。椅子に座った。隣の椅子にはユウキが座っている。膝にポメを抱いていた。

「姉ちゃんは今日が繰り返されていることに、気づいているの?」

 ボクは問いかける。

「……ええ」

 暫しの沈黙の後、姉は頷いた。

「じゃあ、自分が何度も死んでいることにも気づいているんだね?」

 その質問には、姉は答えない。黙っている理由がボクにはわかった。

 たぶん、姉は自分が死んだ時の記憶を持っているのだろう。何回も、姉は死の体験を繰り返している。それがどんなに残酷で辛いことなのか、ボクにはわかった。自分も死んだ時の記憶を持っているから。

 姉にその苦しみを背負わしたのはボクだ。

 そのことに、ボクは今、とても後悔している。

「何度も何度も、苦しい思いをさせてごめんなさい」

 ボクの謝罪に、姉は静かに首を横に振った。

「ケイタは何も悪くない」

 優しく微笑む。

 ボクはゆっくり一つ、息を大きく吸った。

「姉ちゃんは自分が死なないとボクが死ぬと思っているの?」

 問いかける。

「それが等価交換よ」

 頷く代わりに、そう言った。

「それは姉ちゃんの世界の話だ。今の、このボクの世界にはそんなルールは存在しない」

 ボク言い切る。

「何の話?」

 姉は困惑した。

「説明はポメがするよ」

 ボクはユウキの膝の上にいるポメを見る。

「えっ?」

 振られるとは思わなかったポメはびくっと身体を震わせた。相当驚いている。

「今の声、ポメ? 何でポメが?」

 姉は混乱した。渋い顔をする。

「それもポメが説明するから」

 ボクはまるっとポメに丸投げした。

「ケイタ、面倒なことを全部押し付けるな」

 ポメは怒る。

「しゃべっている……」

 姉は呆然とした顔でポメを見た。

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