第8話 決断。


 ボクの質問にポメは沈黙した。

「……」

 ボクとユウキはポメの言葉を黙って待つ。

 ポメはおそらく、真剣な顔をしている。だがその顔は愛らしいポメラニアンで、深刻さが足りなかった。きゅるんとかあざとい擬音が付きそうな感じがする。

「わからない。それを決めるのは私ではない」

 たっぷり間を取った挙句、ポメは呟いた。

「わからないなら、さっさと答えろよ。勿体つけるな」

 ユウキが吼える。緊張感に耐えかねたようだ。

「わかった」

 ボクは返事をする。

「何が?」

 ユウキはボクを見た。

「この世界がボクと繋がっているのなら、この世界のルールはボクが決める。姉ちゃんが死ななくても、明日は来る」

 ボクは宣言した。

 そんなボクをユウキとポメが見つめる。

「姉ちゃんのところに行こう。話をするために」

 ボクは一人と一匹を促した。

「そんな簡単なことでいいのか? 大丈夫なのか?」

 ユウキが心配する。

「わからない。でも、何もしなければ先に進めないだろ?」

 ボクの質問に、ユウキは黙った。どうするのが正解なのか、誰にもわからない。ポメが知らない時点で、お手上げだ。

 それなら、ボクはボクのしたいようにする。

「わかった」

 ユウキは納得した。頷いて立ち上がる。

 ボクは部屋を出て、姉を探した。姉は会社に行く準備をしている。

「姉ちゃん。話があるんだ」

 ボクは声をかけた。

「今? 朝は忙しいから、帰ってからじゃ駄目なの?」

 姉はボクを振り返る。ボクの顔を見て、表情が変わった。笑顔がすっと消える。

「大事な話なのね」

 呟いたその顔は泣きそうにも見えた。

「とても大事な話だよ」

 ボクは頷く。

「……わかったわ」

 姉は首を縦に振った。

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