第6話 疑問。

 2人でも、姉を救うのは簡単ではなかった。

 歩く道を変えたり、思いつくことは全て試す。

 だが無事に事故を乗り切っても、その後に何かあった。無事に会社で行くまで見送ったのに、亡くなったと学校に電話がかかってきたこともある。

 姉の死を知る度、ボクは意識を失った。

 また朝起きるところからやり直す。だが、それは同じではなかった。

 今日がループしていることを自覚しているユウキは前の記憶を持っている。2人で今日を繰り返した。

 登校前、ユウキはボクの部屋に上がり込む。2人で今回の作戦を立てた。

「なあ、ポメ。可笑しくないか?」

 一緒にループする何度目かの朝に、ユウキはそう言う。すでにポメがしゃべることに違和感はなくなっていた。普通に話し掛ける。

「何故、ネエちゃんは必ず死ぬんだ?」

 根本的なことを尋ねた。

 ボクは自分がそのことに疑問を持っていなかった事に驚く。

 人の命は簡単に救えないと、勝手にボクは決めつけていた。姉が死ぬのは既定路線で、なかなか変えられないのは当然だと思う。

 だが、確かに可笑しい。何かはわからない漠然とした違和感を覚えた。

「それは……」

 ポメは押し黙る。

 ちらりとボクを見た。

 ピシッ。パリンッ。

 そんな音が聞こえた。その音を聞くのは、たぶん二度目だ。

 そして、脳裏に見た覚えのない景色が浮かぶ。

 それは俗に言うフラッシュバックというものだろう。

 アスファルト、血の海。その血は姉のものではない。

「あああーっ」

 ボクの口から悲鳴が上がった。





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