最終章 第3話(終)
金属同士が激しく衝突し、削れ、砕け散る音が無限に響き渡っていた人外の戦場だったその場。そこは今、風の音しか存在しない静寂の場となっていた。
笹原からの連絡を受けやってきた
「浅野神樂、で良いんだな」
問いかけずにはいられない。彼女の纏う雰囲気は前日とは全く異なり、人ではなくなったような顔をしたのだから。
「えぇ、そうですよぉー。ご迷惑をおかけしました、久城さん」
浅野神樂らしい口調で、しかし彼女らしからぬ表情だ。まるで、他の誰かとゴチャ混ぜになってしまったかのように。
「機神との戦いは終わりました。機神化してしまった人たちが戻ることはできないですけど、彼らが人を襲うことはそうそう無いはずです」
何故と問えば、彼女は哀愁を感じさせる笑みを浮かべ、答えた。
「第一機神の
戦慄する。第一機神を撃破したとは聞いていたが、よもやその中枢を取り込んだなどと。
これは、まずい。非常にまずい。
「久城さんたちは、私が人間を相手に危害を加えるような
あぁ、知っているとも。君がかつて人間であったことも、人間を守るために全力を賭してくれたことも。そう、だが、しかしだ。
「ほかの人たちは、私がそういうのだって知らないじゃないですか」
寂しさを含んだ笑顔に、胸が締め付けられるようだ。彼女は、自分が人の中で生活することはできないのだと理解している。ここで私と約束しようが、書面で契約を交わそうが関係ない。彼女が
多くの人間は、その状況に恐怖し、彼女らを排除しようとするだろう。
それを、彼女は理解しているのだ。
「局長」
深紅の長髪、灼焔の瞳の女性から放たれた声。聞き慣れぬ声で、しかし聞き慣れた音程。笹原朱希が、こちらをまっすぐ見ていた。
「ワタシたち、ここに無数にいるのを含めた
見慣れない顔の、見慣れた表情。その表情に誰もが、耳を傾けた。
彼らの話を少し離れた場所から成平千尋が、優しさを含んだ微笑みを浮かべて眺めていた。
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