第4章 第7話(終)
機神の
最初に得たのは、久しく得ることのなかった感覚。中枢から全身に信号を走らせ、次第に今の
「中枢と体の接続は上手くいっているみたいだね。問題はなさそうだ」
最初に聞こえてきたのは、何度か聞いたことのある女の声。どうやら、音を感知する機能はちゃんと作動しているようだ。
「あとは待つだけか。本当に大丈夫なんだろうな」
「私と城嶋がやったんだぞ。失敗するはずないだろう?」
それが久城局長と成平千尋の声だと認識したところで、目を開いた。
「……ぁ?」
目線が、久城局長と同じ位置にあった。ワタシの身長は150cm度で、局長どころか神樂と会話をする時も顔を見上げていたはずだ。
「おや、中枢と体の同期が終わったかな。どうだい、新しい
割れた鏡に映るワタシ自身の姿に驚愕する。
長い灼銀の髪に、透き通るような碧眼の鋭い目。片目は大きく破損した跡があるが、機能的な問題はない。
「人型機神……、確認されている数は少ないはず……。今ワタシが使ってるこの体、もしかして———」
その通りだとも。私の言葉に、彼女は続けた。
「第一機神が捨て置いた第二機神の
手を動かし、足を動かす。人間だった頃の体とはまるで違う体格だ。大体において距離感が違う。
「体格の違いに戸惑うかもしれないが、それに関しては慣れてもらうしかない。
私と城嶋が行っている
ワタシの最後の記憶は、何者かに体を乗っ取られたカグラと、第一機神、第四機神が地上へ向かう姿だ。あれからどれほどの時間が経過しているのかは不明だが、彼らと再び
「笹原、お前には無理をかけることになる。すまない……」
久城局長が苦い表情で口にした言葉に、ワタシは首を横に振った。
「大切に思うみんなを守る。これは、機神となったワタシの願いです。だから、久城局長は謝らなくていいんです」
笑顔を作る。人間であった頃から感情を表に出すのが苦手だったが、機神となってからは尚のことだ。
「無理に笑うな。お前がそういう嘘をつかない人間なのはわかっている」
「……ありがとうございます」
雑談を終え、今の状況を久城局長から聞き終えると同時、調整が終了したと成平千尋が告げた。
一歩、脚を前に進める。第二機神の
数歩のうちに、身体と感覚の差を埋めていく。手を振り、指を折り、イメージを現実に重ならせる。動き始めて十数秒で、この体に馴染んだことを理解した。
「適応が早いね。素晴らしいことだ。それじゃあ、急ぎ行こうか」
久城局長らが海底施設に来るときに使ったであろう自動車に乗り込み、地上へと向かった。
第一機神が地上に出る、30分前の出来事だ。
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