第3章 「榎園藍」
第3章 第1話
まず率直に、私は
私と神樂が初めて会ったのは、中学校の入学式だったと思う。まぁ正確には、私が一方的に彼女を見つけたのだけど。新入生代表としてみんなの前に立ったとき、盛大に居眠りをかましている人がいるな、と思った。
中学校2年生の時に、私たち二人は体育祭の実行委員選ばれた。事務的な内容ではあったが、初めて言葉を交わした。
そして、友達と呼べる仲になったのは、中学校三年生。私と神樂が同じクラスになって、神樂の方から、いつも定期試験で上の方に名前がいる人だという理由で話しかけてきたのだ。私は最初、あまりにも勢いが強い彼女に気圧されていた。
自分はクラスに馴染めていた方じゃなかったし、神樂とよく話す間柄だったのも、「あさの」と「えぞの」で、出席番号順で席が並んでいたからという理由。でも、そんな下らない理由だけど、私は神樂とよく話していた。
私が日常的に話す相手が神樂しかいなかったのに対して、神樂は友人関係が広かった。クラスの誰とでも仲良さげで、夏休みにはみんなで海に行ったとも言っていた。私は酷く不安だった。神樂が、いつか私がいなくても、気にしなくなってしまうんじゃないかって。
だから、神樂に私を忘れさせないために、慣れないチャットで会話を始めた。電話番号を聞いて、週に1回は通話もするようにした。どこの高校に行くかを聞いて、私もそこを受験した。自慢ではないが、私の学力なら彼女がどこの高校に行くとしても問題ないと思ったのだ。そして同じ高校に行くことになったと話したとき、神樂は凄く喜んでくれた。それが嬉しくて、私も一緒になって喜んだのを覚えている。
そして春休み、私は神樂と高頻度で通話をするようになった。神樂は私の声が好きだと言っていたから、それを聞くための通話だったのかもしれない。けれど、私はそれでも構わなかった。私は、そんなしょうもない理由でも、神樂の友達であり続けたかった。そのおかげもあってか、神樂が作った友人に、私も合わせるようにしていたから、高校では友人関係に困ることはなかった。それを影で、神樂にくっついてる金魚の糞という人もいたけれど、その頃には既に、神樂しか見えていなかった。
自覚したのは、高校1年の夏休み。神樂がいないと酷く寂しい。神樂と話したい。神樂の顔を見たい。神樂に触れたい。神樂を抱きしめたい。神樂と1つになりたいと、そんなことをずっと思って過ごしていたある日、私が神樂を愛しているということに気が付いた。だから、私に対する神樂の悪口なんかどうでもよかった。だけど、神樂を悪く言う事だけは、何がなんでも許せなかった。本気で怒って、相手を泣かせたこともあった。結果として、私は学年中で「浅野神樂を大好きな人」と認識されたのだ。
神樂は優しいから、しょうがないなぁー、と言ってそれを受け入れてくれた。でも、神樂も他のみんなも、私が本気で愛しているなんて思っていなかった。いや、神樂だけは何となく気付いていたみたいだったけれど、当時の私はそんなことを思いもしなかった。女が好きになるのは男だというのが常識なのだから、そう思われるのも仕方がないと、神樂のそばにずっといられるなら、親友でも構わないと思っていた。それが、高校2年の夏休みが終わるまでの私。
これが、機神になるまでの、浅野神樂に対する榎園藍の全て。
言いたかったことは結局、私は神樂を愛しているということ。
神樂を守るためなら、私はなんだってやるということ。
漫画とかではよくある表現だけれど、比喩でも誇張表現でもなくて、この世界の全てが浅野神樂の敵になっても、私だけは、絶対に神樂の味方でいる。
私が言いたいのは、そういうことだ。
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