合金と言語
「いよっしゃあああああっ!!」
「うおっ!ビビったぁ!!」
ある日工芸殿で作業をしていると、突然エドがバカみたいにデカい声を上げやがった。
作業と言っても
繊細な作業中だったら、確実に手元が狂ってたけどな。
「あ~ビックリした。いきなり大きい声出さないでよ」
「本当ですね。というか、何を作っていたんですか?」
俺と同じく
というか、何を作ってたんだ?
「おうよ、これを見やがれ!」
喜色満面の笑顔を浮かべて俺達に見せたのは、
澄んだ空みたいな鮮やかな青色をしてるが、確か
「インゴット?青ってことは
「もしかして、
「いや、
マジか!
もちろん軽くて悪い事は無いんだが、武器としてみると欠点になってしまう。
実際重さを活かした重量武器を使う人は、
もちろん
今のところエレメントクラスに進化できそうな人の中に、重量武器を好む人はいないが、それでもいずれ進化しそうな人は何人かいるから、
まあ、そんなのは建前で、エドが半ば趣味に近い感じで試行錯誤を繰り返してただけなんだが。
「こいつは
ほう、
だがその比率に到達するまでは、かなり試行錯誤が必要だったはずだ。
数字が苦手なエドがわずか数年で完成させることができるとは、正直驚いたぞ。
「数字が苦手なくせに、よくこんな早く完成させれたね」
「うるせえよ!確かに苦手だが、出来ねえって訳じゃねえんだよ!って、んなことはどうでもいい。とっととこいつを見やがれ!」
自覚はありやがったか。
いや、嫁達にも口を酸っぱくして言われてるんだから、これで自覚が無かったら問題でしかないんだが。
それより俺も、この新しい空色のインゴットがどんな性能なのかは興味がある。
どれ、早速
「げっ!」
「え?マジ、これ?」
「す、すごいですね……」
「だろ!」
得意満面なエドだが、そんな顔するのも仕方がない。
なにせエドが作ったこのインゴットは、魔力強度10、硬度11、魔力伝達率9、魔力耐久値11、魔力蓄積率10、重量2,400と、本当に
正確に言うなら、
「計算すると……総合性能値102か。確か100以下だとアーククラスの魔力に耐えられなかったはずだから、こいつならギリギリ耐えられるかもってとこか」
「そこはお前辺りがアーククラスに進化しねえとわからねえけど、少なくともエレメントクラスなら問題ねえ」
「だね」
アーククラスに進化できるとは思えないが、それでもこれなら耐えられるんじゃないかと思う。
「で、だ。大和、こいつの名前を頼む」
「は?いや、作ったのはお前なんだから、お前が考えろよ」
「こいつも
ああ、なるほど。
だけど言わんとすることは分かるが、そこまで気にせんでもいいと思うぞ?
今更の話ではあるんだが、ヘリオスオーブで生活していて、言語に不自由したことはない。
だが同じ意味でも、複数の単語があったりする。
例えば騎士を意味する言葉は、オーダー以外にもナイトやシュヴァリエ、リッターが該当してるし、セイバー、ドラグナー、ホーリナー、ランサーなんかもそうだ。
合金も、
日本語でも役職の違いとかそんな感じで使い分けることがあるから、俺は慣れてたから気にしたこともなかったんだが、実は父さんが来た際に言語が通じることも含めて違和感を感じてたから、いくつかの仮説を立てていた。
聖書の創世記には神が傲慢になった人々の言葉を乱し、各地に分散させたっていう記述があるから、それが原因で地球には多種多様な言語が生まれ、逆にヘリオスオーブは神々の元に言語は統一されているから、
もしかしたらヘリオスオーブにも方言とか地域言語みたいなのがあるが、神々の加護を受けているヘリオスオーブでは自動翻訳されていて、誰も気付いてないんじゃないかとも言ってた気がする。
だからエドは、地球、というか日本語とヘリオスオーブ語の両方で通用する名称を付けたいんだろうが、そもそも
「それはそうなんだが、あれ以来時折頭にチラつくんでな」
「まあ、気持ちは分からなくもないよ」
エドだけじゃなくルディアもか。
俺からしたら言語が共通なんて便利でしかないし、日本語で付けた名称も自動翻訳してくれてるっていう印象しかないんだが、これは俺が異世界から来た
「そうだな、なら
「そりゃな。ってことは
ヘリオスオーブ語だとスカイライトで、これも
「陛下やクラフターズギルドへの報告は、お前がやれよ?」
「面倒だが仕方ねえ」
開発者はお前なんだから、それは当たり前だろうが。
フロートなら三天家の天都屋敷に設置してあるゲート・ストーンを使えば簡単に行けるんだから、さっさと行っておけよ。
まあ
今のところ
ただグランド・ランサーズマスターとグランド・ホーリナーズマスターは重量武器を使ってるから、
だけど
「これで色名合金も5つ目かぁ。他にも作ったりするの?」
「いや、さすがにもういいだろ。そもそも合金は、ハイクラス以上の魔力に
「鉄も、ソレムネの技術や大和さんの知識を合わせることで、精度の高い
ああ、そういえばステンレスも完成してたな。
鉄鉱山はヘリオスオーブにはかなりの数があり、特にアミスターやソレムネ地方の鉄鉱山からは用途不明の鉱石も多く産出する。
いくつかは刻印具にインストールされてる高校時代の教科書と照らし合わせることで判別できてるが、それでも全部じゃない。
だけど判別できた鉱石の中には、クロムやマンガン、モリブデン、コバルトがあって、それらを使った合金の開発も行われている。
これはクラフターズギルドやスカラーズギルドに丸投げしてるが、ステンレスは比較的早く完成した合金だな。
何故か
他にも鉄にクロムとモリブデンを混ぜて剛性や耐熱性を上げた
名称には色々と物申したいが、既に登録されてるから変更もできやしねえ。
「
「はい。特に
「だね。あと
その話は俺も聞いたな。
確か性能としては、魔力強度、硬度、魔力伝達率、魔力耐久値、魔力蓄積率、重量は、こんな感じになってたはずだ。
総合値は
特に
まあ、さすがに鉄ベースだとハイクラスまでが限界だから、エンシェントクラス以上だと使えないのは変わらないが、それでも鉄の需要が増えてきてるのも間違いない。
鉄合金はCランクから作れるから、クラフターにとっても作りやすいのも良いな。
まあソレムネ地方は、
まあそういった人達も転職することが多いし、ヒルデもしっかりとフォローしてるから、今のところは大丈夫かな。
合金も増えてきたし、まだまだ研究も続けられている。
個人的には地球のオリハルコンと言われている、銅合金の研究もしてみたいな。
だけど確か、ベリリウムやコバルトが必要だったはずで、特にベリリウムの方は見つかってないから、現状だと別の鉱石を使うしかない。
まあ今後見つかるかもしれないし、エレメントクラスに進化してる俺の寿命は少なく見積もっても300年ぐらいはあるはずだから、焦らずじっくりと研究しよう。
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