クラテル迷宮第13階層
Side・リディア
セーフ・エリアで一夜を明かした私達は、朝食を食べてから第12階層の探索を再開しました。
丸1日費やしても階動陣まで辿り着けないとか、入る前は思ってもいませんでしたね。
しかも生息している魔物は強力過ぎると言えますし、しかもWランクとはいえOランク相当の魔物まで出てくるなんて、階層の環境と合わせて凶悪過ぎるという言葉でも足りない気がします。
それでも何とか進み、マッピングも9割ほど埋めることが出来たところで、ようやく第13階層への階動陣を発見しました。
昨夜から予想していましたが、第13階層への階動陣はマップの中央、つまり第11階層からの階動陣のすぐ南にあったんです。
すぐ南と言ってもキロ単位で距離はありますし、エンシェントクラスどころかエレメントクラスの視力を以てしても数百メートル先しか見通せない程薄暗い海中ですから、分かっていても見付けることは出来なかったでしょう。
しかも第13階層への階動陣のあるセーフ・エリアは、第11階層からの階動陣があるセーフ・エリアの下方に位置しますから、尚更無理です。
ウンディーネや水竜のドラゴニュート、ドラゴニアンなら海中を突っ切ることでショートカットは出来そうですが、それ以外の種族では不可能というのも意地が悪いですね。
「潜水艦も作れってか?」
「さすがに使いどころが狭すぎるでしょ。気持ちはわかるけどさ」
大和さんと真子さんが額に青筋を浮かべていますが、そのお気持ちは私達全員が共有しています。
それに潜水艦という、水の中を進める船を作られたとしても、どうやって攻撃するのかという問題が残りますから、大和さんには申し訳ないですけど使いどころが狭いどころか使い道が無いとしか言えませんよ。
「時間は……1時か。中途半端ね」
「遅い昼食を取ってから第13階層に進んで、今日は簡単な調査で終了というのが無難でしょうか?」
「だな。ああ、いや、少しなら先に進めるだろうから、セーフ・エリアを探すっていうのはアリか」
「ここで丸2日潰してるようなもんだし、そうした方がいいわね」
「まだ4日だけど、早いに越したことはないものね」
皆さん他にもお仕事がありますし、特に大和さんは領主補佐や領主代理としてのお役目がありますから、早く戻れるならそれに越したことはないですね。
「第13階層がどれぐらいの広さなのか、第14階層があるのかにもよるけど、早ければ明日には出られそうか」
「14階層以上あるのか、それとも第13階層で終わりなのか、判断が難しいわね」
それが最大の問題ですね。
便宜上、最初の
タイプ2は10程しかなく、タイプ3に至ってはクラテル迷宮しかないとされていますね。
もっともタイプ2もタイプ3も、今後増えるのではないかという予想がありますから、
確か近いうちに、正式に決まると聞いていますね。
それはハンターズギルド次第ですから、とりあえず置いておきましょう。
昼食を食べた私達は、休憩もそこそこに第13階層へ足を踏み入れました。
「またかよ……」
「もしかして、同じ階層が続くってこと?」
「明るくはなっていますし、通路は海上に延びてるようにも見えますから、ここは海上も加わっているのでは?」
第12階層からの階動陣が繋がっていたセーフ・エリアは、第12階層と同じく海中にありました。
ですが第12階層より明るいですし、よく見れば通路は海中ばかりか海上にも通じているようにも見えなくもありません。
ただこの階層、海流がものすごいことになっていて、所々渦を巻いていたりするんですよね。
海の中で竜巻を見ることになるとは、正直思ってもいませんでした。
幸い通路には干渉していないようですが、あれに巻き込まれたらエレメントクラスでもなす術はない気がします。
「渦のせいで見辛いけど、確かに先は海上っぽいな」
「まさか、海上じゃ船を使えってことないわよね?」
「そんなクソ仕様だったりしたら、さすがに
まあ大和さんのお気持ちは分かりますけど、それはさすがにマズいでしょう。
本当に通路が海上まで延びているなら、海上にも通路が張り巡らされている、そう考えてもいいと思いますよ。
いえ、
「何があるにしても、進まないとね。攻略目的で来てるとはいえ、調査しないワケにもいかないんだし」
「ですねぇ。幸い、と言っていいか分からないけど、渦のおかげで魔物らしき影も見えないし、ここは第12階層より魔物は少ないかもしれないわ」
「その分強烈なのがいそうだけど、確かにあの渦に巻き込まれたら、高ランクモンスターでも逃げられないか」
勢いもですけど大きさも大きさですから、確かに巨体を誇る魔物でも巻き込まれたら脱出は出来なさそうですね。
ですがその渦も、本当に所々にしかありませんから、大型の魔物でも十分動けるスペースはあります。
むしろあの渦は魔物の行動を妨げるためではなく、ウンディーネや水竜のドラゴニュート、ドラゴニアンの動きを阻害するためにあるような気さえします。
実際フラムさんは、あの渦を警戒しながらの海中戦闘は厳しいと仰っていますから。
「今回って大和もマナも、2週間ぐらいは余裕あるのよね?」
「ええ、それぐらいは大丈夫よ」
「俺もだ。早く戻れるならそれに越したことはないが、
クラテル迷宮攻略に2週間というのは、普通なら短いとしか言えないんですが、私達はここ第13階層まで4日で来ていますから、階層や生息している魔物次第ではありますが1週間での攻略も不可能ではなかったりします。
「それじゃあ行こう。もし陸地が見えたとしても、しばらくは獣車で移動するってことで」
「迂闊に飛んでも何が起こるか分からないし、階層の全容が分からない以上は下手な行動はしたくないわね。第12階層と同じぐらい時間が掛かるかもしれないけど、それもやむを得ないか」
「だね」
そうですね。
早い方が良いのは間違いありませんが、だからと言って焦ってしまえばケガに繋がってしまいます。
死んでさえいなければ真子さんに治してもらえますが、その後で真子さんからのお説教が待っていますし、私達も好んでケガなんかしたくありませんから、油断せずにしっかりと周囲の警戒をしておかなければなりません。
そろそろ出発ですし、改めて気を入れなおしてきましょう。
Side・大和
第13階層は海中だけじゃなく、予想通り海上にまで繋がっていた。
通路は海水で作られているから海上でも問題無く獣車で進めたし、遠目だが島影も見えたな。
とはいえ、今いる地点から島まで通路は延びてないし、距離もキロ単位であるのは間違いないから、後回しにしたんだが。
海上にまで延びていた通路だが、驚いたことに海面より50センチぐらい低かった。
今は獣車に乗ってるが、それでも船に乗っているのとは違った光景が視界に入っている。
そして魔物だが、島があるこの階層では、海の魔物だけではなく空の魔物も襲ってくるようになった。
さっきもフラッド・クレインにルドラ・ファウル、そしてアランカというプテラノドンのA-Cランクモンスターが、数匹ずつの群れで襲ってきたからな。
アランカは全長20メートルほどだが、翼長は30メートルを超えている。
そんな巨体の群れが襲ってくるのは、さすがに迫力満点だったな。
しかも災害種だから飛行速度も相当なもので、数キロの距離も数秒で到達してしまうから、発見から会敵までもやたら早い。
さらに海の魔物と同時にっていう事もあり得るから、本当に気が抜けない階層だ。
「ここ、本当に最下層かもしれないわね」
突然真子さんが口を開いたけど、なんでまたそんなことを思いましたか?
「海中だけじゃなくて海上に島まであって、更にほら、あれ」
そう言って上を指す真子さんだが、上ってことは空ってことか?
「あっ!」
「うわぁ……なんて面倒臭い……」
先に空を見たアテナとルディアが、本当に面倒臭そうな顔になった。
いや、マジで何があったよ。
そう思いながら俺も空を見上げると、その理由が心から理解できた。
「浮遊島まであるのかよ……」
思わず声が漏れてしまったが、俺が見上げた先にあったのはアルカより一回り大きな浮遊島だった。
おそらく高度1,000メートルぐらいあると思うんだが、まさか浮遊島まであるとは思いもしなかったな。
「面倒にも程があるでしょ。しかもここからじゃ分かり辛いけど、あの大きな浮遊島の近くにもいくつか小さな浮遊島があるわ。高度が違うっぽいけど、あれを経由して大きな島がゴールってとこかしら?」
「そんな感じですね。ということは、空にもこんな感じの通路があるってことでしょうか?」
「無いと行けないから、あるんでしょうね」
マジで面倒臭い話だな。
本当ならフライングなりスカファルディングなり飛空艇なりを使って、一気に大浮遊島まで行きたいところだが、生息している魔物が分かってないし、空も海と同様に乱気流なんかがあるかもしれないから、それが判明するまでは迂闊に空なんて飛べない。
海上移動中の現在でさえいくつか渦潮を見かけるから、空にも何もないとは言い切れないからな。
「本当に面倒な階層ですね。ではこのまま獣車で、調査を続けるということで?」
「そうしよう。迂闊にショートカットして乱気流とかに巻き込まれたらシャレにならないし、天気が変わる可能性もある」
その場合、いつ荒れるかは前触れもなく完全にランダムだから、予測は不可能だとも言われている。
だから通路から外れた瞬間に荒れるようになったとしても、特におかしくはない。
というかセーフ・エリアを見つけたら、一度試してみようと思っている。
「大和、分かれ道が見えるよ。しかも面倒そうな」
「面倒そうな分かれ道?」
箱庭回廊階層と呼ぶようにした第13階層で、初めての分岐路が見えたと展望席のルディアが教えてくれたが、面倒そうなっていうのは……うん、あれは面倒だ。
「海中に進む岐路が2つ、このまま海上を進む岐路が1つか。確かに面倒だわ」
「海上岐路はまだ先が見えますけど、それでも島や陸地は見えませんね」
「海中の方はもっと厄介よ。どこまで潜るのかも分からないし、何より階動陣にしろ
それが面倒に感じる最大の理由だな。
普通の階層ならある程度の予想は出来るし、海中回廊になってた第12階層も通路そのものはそれなりに目立ってたから、こちらも予想は可能だった。
なのにここ第13階層は海上に海中はもちろん、陸上や浮遊島なんていう地形までありやがる。
海中路がどこからどこに通じてるのかも分からんし、大浮遊島じゃなくて海底に階動陣か
「片っ端から行くしかないけど、どこから行くかが問題ね。個人的には海上を進みたいところだけど」
「昨日今日と海中にいたから、そうしたいですよね」
「あたしも同感かな」
「ボクも」
だけど幸いと言うか、一昨日の夜から今日の昼過ぎまでは海中にいたから、満場一致で海上を進むことに決まった。
海中は海中で面白かったと思うが、行動に制限がかかるし、久しぶりに太陽の下で過ごしたいと俺も思う。
さて、海上路は右へ進むルートのようだし、いつまでもここにいても仕方ないから、とっとと先に進むとしますかね。
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