迷宮の守護者
Side・プリム
クラテル迷宮攻略の予定を立てたあたし達は、その日に備えて準備を進めることにした。
と言っても、装備も食事もポーション類も、だいたいはインベントリに放り込まれてあるし、第4階層じゃ必須の船も、先日完成した艇体があるから、そっちは特に問題は無かったりする。
むしろ問題なのは、あたしとフラムでしょうね。
出産から5ヶ月経ってるし、経過も順調で無事に産褥期も過ぎたって真子や母様からのお墨付きももらってるんだけど、育児が思ってたよりも大変だから、なかなか狩りに行けないのよ。
暇を見てはマイライトに出向いてるんだけど、あそこの魔物はもう知り尽くしてるようなものだから、あんまりリハビリになってないのよね。
それでも異常種や災害種も少なくないから、油断なんかしてないけど。
というワケで今日は、ミーナとフラム、リディアとルディア、それから仕事がお休みの大和とヒルデ姉様の7人で、ソルプレッサ迷宮に来たわ。
目的はあたしとフラムのリハビリだけど、他にもエンシェントクラスが全力で移動した場合、1日で最下層になる第7階層まで辿り着けるかどうかを調べるっていう目的もあったりする。
これは以前大和が、イスタント迷宮の第4階層まで3時間弱で来たことがあったからよ。
迷路とか屋内型の階層とかだと、もうちょっと狭くなることもあるけど。
だから第5階層が迷路のイスタント迷宮だと、そこでどうしても速度が落ちてしまうから、階層が1つ多いけど野外階層のみで構成されていて、さらに
ソルプレッサ迷宮第7階層はMランクモンスター ドラグーン種の巣になってるから、1日で最下層に辿り着くことが出来れば素材狩りもしやすくなるし、何よりゴールド・ドラグーンの素材も手に入れやすくなるから、あたし達としてもメリットが大きいしね。
「だいたい6時間ぐらいか。これなら1時間か2時間ぐらいなら、狩りをする余裕もあるな」
「誤差はあるだろうけど、途中で休憩を挟んでこれぐらいの時間ってことなら、泊りがけなら尚更美味しい狩場になるわね」
全7階層であり、かつ全てが屋外階層で構成されているソルプレッサ迷宮だけど、1つ1つの階層は広い部類になる。
更に魔物も高ランクモンスター多く生息しているため、あたし達も最短距離を飛んできたのに、けっこう手間取ったわ。
それでも高ランクモンスターの素材はおいしいし、エンシェントクラスやエレメントクラスのあたし達にとっては必須でもあるから、出てきてくれる分にはありがたいんだけど。
それに1日どころか数時間で最下層に来ることができるなら、素材集めもしやすくなるわ。
「そういえば
「あ、そういえばどうなのでしょう?プリム、知っていますか?」
「いえ、知らないわ。大和は?」
「チラッと聞いた覚えがあるけど、確かモンスターズランクによって違うはずだ」
ルディアの疑問は、あたしもヒルデ姉様も答えられなかったけど、大和は知っていた。
知っていたって言っても本当にさわり程度みたいだけど。
「私も気になって調べたことがあります。
調べていたらしいリディアが教えてくれたけど、Pランクの
ここソルプレッサ迷宮の
ただGランクモンスターが
場所はリベルター地方……いえ、アレグリアだったかしら?
「ということはリディアさん、Aランクモンスターだと半年以上復活しないかもしれないんですか?」
「そう言われていますけど、Aランク
ああ、Aランク
リディア曰く、復活まで半年っていう推測も、クラテル迷宮の
調べるとしても
「あれ?ちょっと待ってください。確かゴールド・ドラグーンって、何ヶ月か前に倒されてませんでしたっけ?」
「え?」
「マジで?」
ところがこのタイミングで、ミーナが思い出したように口を開いた。
ちょっと、その話マジなの?
「はい、冬になる前かその辺りだったと思いますけど、リリー・ウィッシュが倒していたはずです。確かサヤ義姉さんの妊娠祝いとして、素材が数点贈られていましたから」
サヤさんの妊娠が判明したのが秋頃だし、兄弟姉妹として育ったリリー・ウィッシュがお祝いを贈るのは分かる。
ただサヤさんの妊娠が発覚したのは、あたしやフラムの出産前後だから、最速で攻略していたとしても半年経っていない。
Aランク
「あちゃー……。その辺もうちょっと調べときゃよかったな」
「仕方ないですよ。それにリリー・ウィッシュがいつ倒したのかが分かれば、調査の一助にもなりますし」
「確かにね。とはいえ無駄骨になるのもシャクだから、まだ復活してなかったら狩れるだけドラグーンを狩るとしましょうか」
ゴールド・ドラグーンがいないかもっていう可能性は、あたしは全く考えていなかった。
だけどエンシェントクラスなら数人で討伐できる魔物でもあるから、十分にあり得る話なんだし、考えてしかるべきだったわね。
「そうするしかないですね。それに
うん、フラムの言う進化種探しもアリね。
事実ソルプレッサ迷宮には、A-Iランクモンスター ディザスト・ドラグーンが出てきたこともあるし、それを討伐したのは他ならぬあたし達なんだから。
ゴールド・ドラグーンはA-Rランクだから、1つ上と言ってもいいランクね。
まあ、見つけられなくてもドラグーンはMランクだし、他にも同ランクの魔物は多いから、素材の確保にはなるけど。
「進化種かぁ。ドラグーンのってことになると、ディザスト・ドラグーン以外だとボルカニック・ドラグーンやヴォルテクス・ドラグーン、あとミラージュ・ドラグーンだっけ?」
「確認されたことがあるのは、その3種だな。ディザスト・ドラグーン同様に3つの属性持ちだから、素材としてもおいしい魔物だ」
大和の言う通り、ルディアが挙げた3種のドラグーンはA-Iランクに分類されており、水、風、雷という3属性を持つディザスト・ドラグーン同様に、それぞれが3つの属性を持っている。
確かボルカニック・ドラグーンが火・土・闇、ヴォルテクス・ドラグーンが風・水・氷、そしてミラージュ・ドラグーンが光・雷・火だったはず。
いずれも
いえ、既にどこかのユニオンが狩ってる可能性も低くないか。
「あー、確かにエンシェントクラスがいれば、十分に狩れるもんねぇ」
「ああ。だからここで探すっていうのは、フラムの言うようにアリだ。もしかしたら、その上の災害種もいるかもしれないからな」
「ああ、確かにその可能性もありますね」
大和のセリフに納得するミーナだけど、確かにその可能性も無いとは言えない。
ただドラグーンの災害種ともなるとモンスターズランクはO-Cになるし、終焉種O-Aランクに近い脅威となるばかりか、個体によっては凌駕する可能性もあり得る。
それ以前にドラグーンの災害種は、
まあニーズヘッグの存在があるから、どこかの
「クラテル迷宮ならいそうですけどね」
「だな。その辺の話は、帰ってからみんなでしよう。さて、そろそろ行くか」
「そうね。ゴールド・ドラグーンがいればよし、いなければ適当な島を巡って進化種を探すとしましょう」
「はい」
おっと、ドラグーンの異常種や災害種に
だけどいつまでも話し込むワケにはいかないし、あたし達だけで進めていい話でもないから、大和の言う通り帰ってからマナ達も交えて、改めて話し合わないとだわ。
それにゴールド・ドラグーンがいるかどうかは、
いれば倒すだけだし、いなければ他の魔物を倒せばいいだけだからね。
ところがあたしの思いに反して、
移動速度が速いから、魔物があたし達を見つけたとしても、あたし達に攻撃できないことの方が多いのよね。
道中も似たようなもので、狩れた魔物の数は20匹程度なのよ。
移動を優先してたし、仕方ないことだけどさ。
「本当にいないな」
「ですね。残念ですけど、今回は諦めましょう」
「だね」
そして
いつ討伐されたかはハンターズギルドに問い合わせればわかるだろうし、ある程度の予測はできるだろうけど、それも絶対じゃないし、復活期間半年っていう予測が正しかったとしても前後1ヶ月程の誤差は出るでしょうね。
「それじゃあ適当な島を巡って、進化種探しでもしてみるか」
「そうですね。いるといいんですけど」
「本当にね」
いないものは仕方ないんだし、いつまでもここにいても仕方がない。
少し休憩したあたし達は、未だ探索したことのない西側の島々に向かうことにした。
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