日緋色銀の扱い
Side・フラム
無事大和さんと合流した私達は、先に進むことにしました。
とはいえ、あと1時間もしたら帰らなければなりませんから、第3階層からの階動陣から離れることが目的です。
階動陣の近くには魔物も少なく、しかも強力な個体はほとんど生息していませんからね。
「あれは……グリフォン?いや、違うか?」
「イーグル・レオじゃない。グリフォンが生息してるんだから、いてもおかしくはないし」
「ああ、あれがイーグル・レオなのか」
第4階層を進みだしてから15分ぐらいでしょうか、大和さんが魔物を見つけたのですが、その魔物は翼の生えたレオ種だったようです。
ですから大和さんは一瞬グリフォンと見間違えたようですけど、グリフォンはイーグル・レオの希少種になりますから、それも無理もありません。
イーグル・レオはレオ種の顔、グリフォンはイーグル種の顔と全然違いますけど、雰囲気は似ていますから。
イーグル・レオはP-Uランクモンスターになり、G-Nランクにフェザー・レオンという魔物もいます。
そしてグリフォンがM-Rランクになり、その上のA-Iランクがグリフォン・ロードになります。
O-Cランクとなる災害種や最上位の終焉種は、名称どころかその姿を見た者がいないので不明です。
「P-Uランクか。丁度1匹だし、都合も良いわね。あれ、貰っても良いわよね?」
「構わないけど、様子がおかしく見えたら手を出すからな?」
「ええ。じゃあ、行ってくるわ!」
そう言ってプリムさんは熾炎の翼を纏い、スカーレット・ウイングを構え、獣車から飛び立ちました。
私もやりたかったですけど、今回はプリムさんにお任せですね。
そのプリムさんはフレア・ペネトレイターを纏い、イーグル・レオに突っ込んでいきました。
あ、フレア・ペネトレイターとセラフィム・ペネトレイターの違いは、
速度も段違いですしね。
「上位種とはいえ、Pランクじゃこうなるよな」
「そりゃねぇ。それにフレア・ペネトレイターにも改良は加わってるし、手頃な相手だったってことでしょう」
大和さんとマナ様の仰る通り、イーグル・レオはプリムさんのフレア・ペネトレイターの直撃を受けて、右肩から右後ろ脚までが抉れるような形で墜落していきました。
体中を焼き焦がしていた熾炎も、地面に激突すると同時に消えていますね。
「熾炎の使い方が上手くなってますね。妊娠中で狩りができなかったから、どうするか色々と考えていたということでしょうか?」
「でしょうね。大和や真子から色々と話を聞いてたし、それを活かしたってことだと思うわ」
話を聞くと、プリムさんは倒した魔物を極炎や熾炎の炎で焼き尽くしてしまわないよう、重ねている爆風の翼の効果を活かし、風で包み込んで消火しているんだそうです。
乱戦では使いにくいと思いますが、ある程度はアクセリングを使うことでカバーできますし、素材も必要以上にダメにしてしまうこともないでしょう。
特に任意で炎を消せるという点は、すごく有用性も高いんじゃないでしょうか。
「周囲には……特に何もいませんね」
「みたいだな。プリムも戻ってきたし、もうちょい先に進むか」
「そうね」
プリムさんが狩ったイーグル・レオ以外の魔物は、周囲にはいないようです。
ですので私達は、プリムさんが獣車に戻られてから先に進むことにしました。
今更の話ですが、イスタント迷宮第4階層は山岳地帯です。
だいたいですが、標高300メートルから500メートルほどの山々が連なり、起伏も激しい地形が多いですね。
木々も多く、山頂付近には雪が積もっていることもありますから、環境的にはアミスターの平均的な山といったところでしょうか。
それでも山道は完備されており、獣車での移動には何の問題もありません。
山々を繋ぐ橋もいくつかあるのですが、さほど広いワケではないので、そこで魔物に襲われると少し面倒ではありますか。
「第5階層までは行かないんですよね?」
「ああ。時間も無いし、何よりあそこはなぁ……」
「第5階層で狩りをするぐらいならこの階層に留まるか、いっそのこと第6階層まで足を延ばすわよ」
「ですよね」
あと1時間弱では第5階層まで行けるとは思えませんが、このまま魔物が出てこなければ、エンシェントクラスの移動速度ならば不可能とも言い切れません。
ですから聞いてみたのですが、大和さんもマナ様も、さすがに第5階層で狩りをするつもりはありませんでした。
それもそのはずで、イスタント迷宮第5階層は迷路となっており、獣車で進むことこそ可能ですが、周囲は石の壁で囲われ、何より生息している魔物はアンデッドのみです。
アンデッドは単体で1つの種族となっているため、異常種や災害種は存在しません。
ですが高ランクになると、他種の異常種、場合によっては災害種を凌駕する個体が出てくる事も珍しくありません。
イスタント迷宮の第5階層ともなると、生息している魔物はPランクやMランクがばかりですし、モンスターズ・トラップからはAランクが出てきたこともあります。
しかもアンデッドから採れる素材は魔石のみで、属性も闇属性のみですから、ハンターとしても旨味がありません。
ですからマナ様の仰る通り、ここ第4階層で狩りを続けるか、砂漠地帯となっている第6階層まで抜けてしまった方が良いんです。
まあ迷路でもある第5階層は入り組んでいますから、エンシェントクラスやエレメントクラスでも抜けるのは時間が掛かりますし、そんな時間を掛けるぐらいなら第4階層に留まった方が良いんですけど。
Side・大和
イスタント迷宮前にあるオーダーズギルドの屯所にチンピラどもを突き出し、簡単な事情聴取を受けてから急いで合流地点に向かった俺だが、なかなかに面倒だったな。
簡単な事情聴取とは言っても、
俺にやましいところは一切ないから、何の問題もないんだが。
ちなみにチンピラどもだが、予想通り余罪があったから、罰金の上イスタントを含むトルティスマリン侯爵領から追放されている。
もし領内で見かけたら、最悪の場合は犯罪奴隷落ちで、しかも解放されることはないってことだから、かなりの重罰って感じだ。
真面目に仕事してれば、時間は掛かるが立入禁止も解除されることがあるそうだが、余罪も含めた罪が罪だから、多分無理だろうな。
「そろそろ時間だが、プリムとフラムはもちろん、マナやリカさんのリハビリにもなったみたいだし、成果も上々だな」
「ええ。イーグル・レオもだけど、グリフォンも2匹狩れたしね」
「イスタント迷宮には、モンスターズ・トラップ以外にサウルスはいませんけど、そっちもいくつか作動させましたから、けっこう狩れましたよね」
俺が合流してから、そろそろ1時間が経つ。
その間に狩れた魔物は、この階層に生息しているイーグル・レオやグリフォンをはじめとして、ロックの希少種も多い。
第3階層ではいくつかのモンスターズ・トラップをわざと作動させたみたいで、本来イスタント迷宮には生息していないはずのサウルス種やドレイク種も、けっこうな数を狩ってるようだ。
「本音を言えば、ソルプレッサ迷宮かロウクーラ迷宮の
愛槍のスカーレット・ウイングを肩に担ぎながら、プリムがそんなことを口にした。
それは分からんでもないが、リハビリ開始してすぐにAランクモンスターの相手なんて、さすがに無茶が過ぎるだろ。
来月辺りならだいぶ勘も取り戻せてるだろうから、行くとしてもそれからだぞ。
っと、そういえばスカーレット・ウイングを見て思い出したことがあるな。
「そう言えばプリム、マナやフラムもだけど、
「既にエドに頼んでるわよ。ただ
既に頼んでたか。
現時点では俺と真子さんしか、
理由はプリムが言った通り、
その際にメルティングやデフォルミングっていう
ノーマルクラフターだと、数本作ったらその日は何もできなくなることもあるぐらいだ。
それもあってか、その
だから
そのハイクラフターでも数本が限界だって話だし、エンシェントクラフターでも20本ぐらいが限界っぽいから、作るだけでもとんでもない手間と時間と魔力が必要になる。
俺や真子さんはエレメントクラフターだが、それでも50本ぐらいが限界だな。
そして何より、
エニグマ島を解放したのが父さんだったからこそ、俺達はけっこうな量の
さらにプリムとフラムは妊娠中、マナも出産直後だったこともあって、
だけど出産も終わったし、特にプリムは本気でエレメントフォクシーへの進化を目指しているから、武器の更新は早い方が良い。
「その
「してないし、するつもりもないかな。報告は陛下を通じて行ってるだろうけど、ハイクラフター案件っていう時点でクラフターズギルドも頭痛いだろうし」
「それは確かにね」
リカさんの疑問に答えるが、
天帝の王権やグランド・オーダーズマスターの装備とかなら
それよりもまずは、嫁さん達の装備を一新する方が先だな。
既にエドに頼んでるようだけど、帰ったら俺からも改めて、エドに依頼を出しておこう。
「さて、それじゃあそろそろ時間だし、帰るとするか」
「そうね」
「久しぶりに思う存分狩りができたし、感覚も戻ってきた感じだしね」
「そうですね。
「そのつもりだよ」
さすがに今日明日で攻略なんて、無茶なんて話じゃないからな。
久しぶりの本格的な狩りなんだし、今日はもうゆっくりしてもらいたい。
ああ、でもその前に、イスタントで魔物を売らないとだな。
エンシェントクラスが増えてるとはいえ、イスタント迷宮は不人気に属する
だからハンターズギルドも、喜んで買い取ってくれるだろう。
不人気とはいえ戦いやすい魔物も多いから、ハイクラス間近のハンターは多いんだけどな。
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